ロングインタビュー

2016年

2月

02日

【小泉進次郎 独占インタビュー全文公開】「農林中金はいらない」 「農業の“護送船団”を改革する」

 

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)大筋合意後、自民党農林部会長に就いたのが小泉進次郎衆院議員だ。父親譲りのストレートな発言で注目を集めてきた。小泉氏が見据える農業改革の焦点とは――。

 

2月2日号『週刊エコノミスト』特集「農業がヤバい」に掲載したインタビューの詳細を1万2000字でお伝えする。インタビューは2016年1月12日、1時間にわたって行われた。

 

―― 「農政新時代」という言葉を自民党のTPP対策で打ち出した。新と旧の違いはどこにあるのか。

 

小泉 TPPは終わりではない。それを新時代という意味に込めたつもりだ。TPP自身も進化する経済協定であり、現実に12カ国の妥結で終わりではない。韓国、フィリピン、タイが関心を示しており、さらに拡大する可能性が高い。

 

なおかつ、いま日・EU(欧州連合)のEPA(経済連携協定)の交渉が進んでいて、2016年中に1つの形が見えてくるかもしれない。さらにRCEP(東アジア地域包括的経済連携)、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)などさまざまな地域を包含する経済連携協定が出ているなかで、TPP対策が日本の農政に必要なのか、といえば、そうではない。どんな環境変化にも耐えうる強い農業にしていくために国は何ができるのか。それが考えないといけないのが、農政の新時代。まさに環境変化のステージが変わったという意味を込めて新時代という言葉を使った。

TPP対策は「金額なし、検証可能、一発で終わらない」

 

―― TPP大筋合意は歴史的なターニングポイントだったのか。

 

小泉 ポジティブなターニングポイントとして位置づけられるか、それともネガティブなものになってしまったと歴史的評価を受けるか、その瀬戸際だと思う。

 

やはりウルグアイラウンド対策というのは残念ながら、日本の農政から見ればネガティブなターニングポイントとして位置づけられた。ばらまきの象徴であり、農政の歪みが額ありきのものを作りあげてしまった。

 

今回のTPP対策でも「ウルグアイラウンド対策の二の舞いになるのではないか」という報道や懸念がずいぶん大きかったなかで、自民党の農林部会長になって、さぁどういう策を作っていくか、となった時、ウルグアイの逆をやらなければいけないと考えた。それは金額なし、検証可能にすること、一発だけで終わらないこと。TPPが進化するように、TPP対策という発想も、一発でなく進化していかなくてはならない。

 

そこで、今秋までに党内でプロジェクトチームを立ち上げて、農業版の骨太の方針を策定する。1月下旬から正式に動き出して、政治がやらなければならない課題に切り込んでいく。

 

―― 政策のPDCA(PLANDOCHECKACT、計画、実行、検証、改善)をやるということか。

 

小泉 自民党のTPP対策「農政新時代」の最後のページを見ると、一番上に、まさに「対策の効果検証」と書いてある。最初、章立てではなかったが、章にするよう僕が言った。

政策にPDCAが回らないのは、農政だけではない。日本の他の省庁の政策でもいっぱいある。だが、農政は一番それがないと言われていた。それは今回変えないといけない。

 

いい政策はいい、ダメな政策はダメ。その効果を検証して、引き続き続けるか、効果が出ているからさらに厚くするのか、それともダメだから止めるのか。これが判断できるように効果検証の仕組みを入れることが大切だと考え、章立てにした。ここは1つ僕の中では思いを込めたところだ。

 

―― 自立や自発がキーワードになるのか。

 

小泉 TPPの対策とこれからの新農政について最近僕が言っているのは、厳しいことかも知れないが、農家=弱者ではない、ということだ。

 

今までは農家=弱者、弱者だから守らないといけない、守るためには補助金を使わなくてはならない、補助金は多く取らないといけない。となると、目的がいかに予算を取るかになる。このサイクルを変えなければならない。

 

農家には儲かっている人もいる。自分で立っていける人がいる。中山間地という、日本の農政の中でも条件不利地域という位置づけで、地域政策的に守らなければいけないという見方をされている地域でも、中身を見れば、そこで儲かっている人がいる。農家=守らなければいけない存在というだけでは、むしろ自分たちでさらに開拓していきたいと思い、日本の農地に固執しているわけではなく海外の農地さえ見ているような人の意欲を削いでしまう。

 

もちろん70歳、80歳とお年を重ねて日本の農地を守ってくれている人に、今から攻めろといっても攻められないわけだから、しっかりと人生において農業をやっていける対策は考えていかなければならないが、全部が弱者という時代ではない。そこの発想は転換が必要だ。

 

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2015年

6月

23日

全文掲載 商社特集インタビュー 安永竜夫 三井物産社長 2015年6月23日号

やすなが たつお

1960年生まれ。83年東京大学工学部卒業、三井物産入社。東洋エンジニアリング出向、執行役員機械・輸送システム本部長などを経て、15年4月から現職。54歳。


◇2020年に1兆円商社を目指す

 

 2015年3月期に減益となった大手商社2位の三井物産。今期予想では伊藤忠商事の後塵を拝し、3位に転落する。この逆境で社長に就任したのが32人ごぼう抜き、54歳で社長になった安永竜夫氏。資源偏重と言われる三井物産の事業をどう立て直していくのか。

 

ーー 前期の決算について。

安永 なかなかしんどい。(減益という結果を)素直に認める。やはり我々の強みである資源エネルギーの分野に偏っていたので、商品市況が下落した局面ではこういう結果になってしまう。

 しかし中長期的には、地球人口が増えていく中で、生産調整も進んでくるし、原油価格もかなり戻ってきている。鉄鉱石の価格も中国政府の刺激策、それから実際問題、中国の製鉄所の在庫も減ってきて、少し戻してきている感じはする。ただ、鉄鉱石はかなり供給力に余裕があるので、しばらくはもみ合いが続いていくのでは、と感じている。


 いずれにしても現在の足元の価格は、下がり過ぎだと思っている。中長期的に、2020年頃には需給のバランスが逆転してくる。

 長い目で見れば戻って来る。資源の分野で我々は、市況の上下に一喜一憂せず、中長期的な視点でしっかりやるべきことはやっていく。

 一方で、やはり弱いところをどうやって強くするかというのが大事。それが正に私の(社長就任)1年目のやるべき仕事だと思っている。


ーー 資源の権益は売却しないのか。

安永 市況の下落局面というタイミングで色々と出物もあるだろうし、我々が今やっているパイプライン(開発中)の案件もあるので、資産の入れ替えをやるタイミングではあると思う。

 パイプライン案件として、いま正にモザンビークのモアティーズ炭鉱を開発している。これはしっかりとインフラ整備と合わせて、成長させていかなければならない。

 ガスについても、昨年、最終投資決断(FID)をして、すでに着工済みの米ルイジアナ州のキャメロンLNG(液化天然ガス)をしっかり立ち上げる。それから、いよいよモザンビークのエリア1鉱区のLNG開発を年度内にはFIDに持っていこうと今進めている。

 こういった新しい案件にはどんどんチャレンジしていく。モザンビークのLNGの生産能力は第1フェーズで今の予定で年産1200万トン。総事業費はEPC(プラントの設計・調達・建設)などの契約は締結していないが(編集部注:5月18日に契約を発表)、トータルで2兆円の規模になってくると思う。


ーー LNGの売り先は。 

安永 1200万トンのうち、800万トン強は日本とアジア各国から販売条件で基本合意(LOI)をいただいている。最終的に投資金額を決めて投資し、EPCも含めてコストを精査した上で、ガスの販売契約は、まだLOIの段階なので正式な売買契約の締結に向けていま交渉している段階だ。長期の採算をしっかり見定めて最終決断していくことになる。


ーー モザンビークはやはり安いガスが採れるのか。

安永 世界最大級のガス田で、非常に掘りやすい。モザンビークという国自身が資源をベースに国の発展、インフラ整備、人材の育成をやっていこうという段階にある。我々がサハリンや豪州、ブラジルでやってきたことと同じ開発を正にやっていこうとしている。インフラ整備とともに、農業や鉄道を利用した一般貨物の輸送などにも貢献していきたい。

◇国づくりこそ勝ちパターン


ーー モアティーズ炭鉱では鉄道や港湾開発も一緒にやる。 

安永 モアティーズ炭鉱の資源鉄道を利用して、これに一般貨物を乗せる計画がある。沿線は農業地帯でもある。農産物の輸出や肥料の輸入、あるいは隣国マラウィへの物資の供給もある。

 色々な意味でモザンビークは資源を起爆剤にして、国をつくっていくフェーズにある。こうした開発は三井物産が最も得意とする分野だ。こういう言わば勝ちパターンというか、強いというところは継続的にやっていくし、中長期的に20年、30年でやらなくてはならないプロジェクトだから、それが一時的な油価の下落でやめることはない。

 コストは当然ながら状況に合わせて最適化する作業はやっていく。過去、サハリンの立ち上げの時であれ、(稼ぎ頭となった)西豪州のノース・ ウエスト・シェルフLNGの意思決定をする時であれ、油価は激しく下がっていた。市況循環的な動きの中で、多少のスケジュールの調整はあるが、中長期的に見れば、やはり環境にやさしい天然ガスの需要は日本のみならずアジアでも今後大きく増えてくる。これはしっかりやる。こればかりだと資源偏重といわれるが、我々のブレッド&バター(主食)としてしっかりやっていく。


--非資源への取り組みは。

安永 むしろ強調したいのは、非資源の柱をいくつ作っていくかということ。昨年で言えば、インフラ分野で電力もいよいよ持ち分出力で10ギガワット(1ギガワット=100万キロワット)の手前まで来たし、電力については我々自身が自ら開発、運営できる案件を作っていく力が付いてきた。特に北中米を中心に自分たちで案件を作って、仕上げて、その中で必要に応じてリサイクル(資産の入れ替え)をやっていく安定期に達してきた。

 今までは発電容量を伸ばしていくフェーズにあったが、これからはむしろリサイクルしながら進める。プロジェクトというのは立ち上げると、そこで資産の価値が出る。操業を開始したところで出資分を一部放出するなり、売却するなりして、また新しいものを作り上げて、売っていくという定常的なサイクルに入ってきたと思う。

 持ち分出力で9・6ギガワットというのは、1990年代にインドネシアで当社が自ら開発に乗り出したパイトン発電所を始めたころから考えると隔世の感がある。日本のIPP(独立系発電事業者)プレーヤーとしては最大級の1社になる。


ーー 発電インフラ以外はどうか。

安永 もう一つ力を入れているのがモビリティー(交通・輸送分野)。昨年、米国のトラック・リース事業、ペンスキー・トラック・リーシングに参画した。当社はペンスキーとは15年間、北米で乗用車ディーラー事業を展開していた関係にある。ペンスキー・トラック・リーシングは全米で約3000の営業拠点と約700カ所のメンテナンス拠点を持ち、約22万台のトラックやトレーラーを保有している。これだけの規模で展開しているのは全米で2社しかいない。

 我々はそこに参画するとともに、自分たちが北米で展開していた自動車部品の物流サービス事業の「トランスフレイト社」を統合した。

 伸びしろはトラック輸送事業そのものの拡大。アメリカの3億人の人口、そしてエネルギーコストがシェール革命によって非常に競争力があることもあり、産業が相当アメリカに回帰している。

 今や世界経済のけん引役はアメリカ。そういう中で伸びていくインランド(内国)の輸送事業にしっかり刺さり込むということ。我々はトヨタ自動車をはじめ北米に進出している日系企業に対し、サード・パーティ・ロジスティクス(第三者による物流サービスの提供)をやってきた。

 いわゆるコンボイといった大きなトレーラーは排ガス規制の問題、燃費の問題もあり、更新が求められるし、どうやって壊れないように長持ちさせ、最も効率的なメンテナンスをするかが事業の収益性のカギを握る。その点で全米にネットワークを持っているところが勝ち組になる。そこに入ったことで、このプラットフォームを生かして、我々が全米で展開している物流サービス事業と統合することで、ペンスキーの顧客基盤と、アメリカに進出している日系顧客基盤を足し合わせればコストも下がるし、双方のサービスを複合的に提供することができる。トヨタ自動車のメキシコ進出でも、ぜひこのプラットフォームを生かして、競争力のあるサービスを提供したい。

 投資総額は約900億円。ペンスキー・トラック・リーシングは米GEが保有する資産を一部売却するタイミングで我々が入った。GEキャピタルは金融ビジネスの中で自分たちの製品に直結しないものは売っていく方向にある。その流れの中で私自身がペンスキーの会長であるロジャー・ペンスキー、GEのジェフリー・イメルト会長、GEキャピタルのキース・シェリンCEOと話をして、結果的にペンスキー50%、GEキャピタル30%、三井物産20%という形で、いまPMI(合併後の統合作業)を行っている。コスト削減の効果も出てきているし、新しい顧客基盤を獲得できるというので、現場は相当盛り上がってきている。


◇米シェールは川下展開


--北米のシェールガス開発はどうか

安永 シェールガス関連でいうと、他社さんは苦労しているが、我々は比較的競争力のある井戸元資産をペンシルベニア州とテキサス州に持っている。ルイジアナ州のキャメロンLNGを立ち上げた以外にも、ガスの下流の事業に相当今、投資している。

 ガスを原料とした化学品、ガスを運ぶパイプライン、ガス火力発電、すでに運営しているものもあるし、建設中のものもある。これらが立ち上がると、ガスを燃料、原料とする事業を持つことによって、ガスの価格の変動にさらされないナチュラル・ヘッジ(市況変動を相殺する仕組み)ができる事業が下流に出てくるので、トータルで見ると強靭なバリューチェーンが北米で完成する。

 キャメロンLNGは2018年の商業生産開始を予定している。そのフェーズに合わせて化学事業も順次立ち上げる。今年はメタノール事業が立ち上げる予定だ。そういった意味でシェール開発は点ではなく、面でアメリカにおけるシェール革命を、我々が縦につながる事業としてつかまえていくことができると思っている。エネルギーを一つの核としつつ、我々がやろうとしている下流、非資源の分野に生かしていける。


ーー 総額1000億円を投じ、米テキサスで展開している塩化ビニール原料を生産する電解事業の現状はどうか。

安永 電解事業はすでに立ち上がっている。ただ少し苦労している。原料のガスは競争力があるのだが、ガスから作るエチレンの需要が米メキシコ湾岸で急増したためにエチレン価格が急騰したことと、製品のEDC(塩化ビニール原料)のマーケットが振るわなかったことが事業不振の原因だ。市況が悪い時に立ち上がった。だが今、原料エチレンの値段が落ち着いてきているし、販売するEDCの値段も反発しつつあるので、数字的にはかなり改善している。


ーー シェールガスでは住商が巨額の減損をしているが、三井物産も昨年、一昨年、米イーグルフォードで合計約645億円の減損がある。

安永 今のIFRS(国際会計基準)というのは、将来獲得する資金を現在価値にして、それによって資産のバリューを常に時価で洗い直していく。その時に自分たちの簿価と比較して、将来の価値が下がっているとそれが減損テストに基づいて減損として出る。

 油価が70ドルから50ドルになれば収入は下がる。フューチャー・バリュー(将来価値)は下がって、減損する。しかし油価が上がるとまた将来価値が上がってまた減損の戻し益が出る。

 我々のガス、原油の生産コストは、今の市況でも十分に利益が出る。将来の価値が油価によって上下することによる減損はIFRS上、取り込まざるを得ないが、キャッシュフロー(現金収支)として見た時どうか、というと我々に必要なものは増産している。

 当期純利益は3065億円まで落ちて減益となったが、現実として昨年(前期)の基礎営業キャッシュフローは6600億円で史上最高の数字だ。


◇キャッシュをつくる力が基準


--基礎営業キャッシュフローを重視しているのか。

安永 我々は当期利益という、IFRSのルールによって、上下しやすいものよりも、自分たちの実力値はキャッシュを創出する力をもっと強くしようと動いてきている。この中期経営計画からEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を我々のアーニングパワー(稼ぐ力)のベースとして見る。

 現実問題、我々が他社を買収しようとする時に企業の価値を見るとき、何を見るかというと、当期利益でなくEBITDAを見る。キャッシュをどれだけ作っていけるか、将来キャッシュをこれだけ生むから、そこに対していくら投資するかを決める。企業価値を決めているのは当期純利益よりキャッシュをつくる力。我々自身も価値を見立てるとき、そこを見る。だから我々の力もEBITDAで示そうとしている。


ーー 一般には純利益の減益が話題になっている。

安永 純利益が下がっているというのは、将来のキャッシュを創出する力が落ちている証左ではある。それは真摯に受け止めて、それを増やすにはどうしたらいいかを考えなければならないが、EBITDAと基礎営業キャッシュフローを見た時にはそんなに数字は落ちていない。

 3年間のキャッシュインを予想した時に、1・7兆円の基礎営業キャッシュフローが見込めているし、リサイクル(資産の入れ替え)によって9000億円は取れる。前期は3400億円のアセットリサイクルがあった。中計3年間で見れば、2兆6000億円のキャッシュインがある。新規投資では1・5兆円をすでに開発している案件の拡張などすでにコミットした案件がある。そのバランス(差額)の1・1兆円が新規の成長投資と株主還元に向かうというプランだ。

 そういう前提であれば、我々が中長期的に自分たちの事業を説明し、自分たちの成長投資を考えることと同様に、株主還元についても継続性と安定性を重視してやっていく。前期も60円配当についても、当期純利益は2400億円に下がるが、同様の考えで64円で株主総会に諮らせてもらった。


ーー 配当政策は評価されたようだが。

安永 (今期の純利益予想の)2400億円という数字には社内的に危機感を持っている。他社が同じようなことをやって稼いでいるのに、我々はこれだけか、というところでは、インフラ、モビリティー、あるいは化学品を含む下流、消費者に近いBtoCの部分でしっかりした収益基盤を持たなければならないと思う。


ーー 当期純利益は予想の2400億円から3000億円くらいに上振れしないか。

安永 原油や鉄鉱石の価格は下がり過ぎの状況で、いま緩やかに戻ってきている。これも金融緩和がいつまで続くかなど、いろいろな要因に影響される。まず我々は今、見えている世界の中で上振れ要因はあると思うが、この中でしっかりやっていく。

 資金計画としては1・1兆円が(キャッシュインとキャッシュアウトの)バランス。そういう意味では新規の成長投資に、自分たちの作るお金で回せる余力は、他社よりも多いと思っている。

 それを、どの案件に、どのように入れていくかということで、まさに非資源強化の中で、CD(コーポレート・ディベロップメント)本部を立ち上げて、「業態変革をするための伝道師だ」というつもりで、案件の開拓や良質化をやる。CD本部に課しているのは、総体的に弱い分野で、どういう新しい収益基盤を作っていくか、獲得していくかというところに集中してやってもらおうと思っている。


-- 資源、非資源の比率は。

安永 今年は5対5。将来的には、6対4ぐらいが一番。いま資源は下がりすぎだと思うし、非資源の方はもっと頑張って成長をさせていかなければならないと思っている。純利益2400億円という数字は当然ながら満足しているわけではない。数字をもっと強靭にするためにどうしたらいいか、その一つがシェールガスというチェーンの中で市況に左右されない収益力をつくるということを考えている。


ーー 08年のリーマン・ショック後の投資で失敗したものはあるか。そこから得られた共通の教訓は?

安永 リーマン・ショック後で総括するには早いと思う。90年代に手がけたインドネシアの輸出専用製油所(EXOR)やパイトン発電所、あるいはロシアのサハリンLNGも立ち上げは相当に大変だった。しかし、プロジェクトを完遂させて、キャッシュを生み出す事業に仕立てて、初めて価値が生まれる。パイトン発電所なども途中で投げ出していたらゼロバリュー(無価値)だった。しっかり仕上げたからこそ、いまIPPの持ち分出力で10ギガワットに至る道筋もできている。そこはあまり短期的に総括するのはよくないのではないかと気がする。

 一方で、プロジェクトを立ち上げることをゼロから自分たちでやる、というのがないと商社の実力はついてこないと思う。パイトン発電所が実力になったのは、自分たちがドライバーズシートに座って、自分たちで契約のすべてを構築し、EPC(プラントの建設契約)をハンズオンでマネージしたという経験が生きている。プラントに限らず、エネルギーも金属も化学品も、自分たちが当事者として案件を仕切る能力、切り盛りする能力をつくっていかなければならないという思いは強い。

 したがって、マイノリティーの出資で満足しているのではなくて、より重要なシェアを取る。場合によっては過半を取り、オペレーターシップ(事業全体の運営)にこだわるということを考えていきたい。


ーー 世界最大の豪州の金属リサイクル企業、シムズメタルに900億円を投資したが、今、事業は厳しい状態にある。撤退などは考えているか。

安永 マネジメントも変わって新体制で実力をもう一度見定めようというのが今のステージ。流れとしては都市資源、地上資源はリサイクルするという方向に世の中が流れている。リサイクルにおいて強みを発揮するビジネスは必要だと思っている。その中で、新経営体制の中でシムズが実力をしっかり示してもらえれば、我々にとって強みが加わる。


◇ブラジルは集中リスクではない


ーー 商社の集中リスクがいま問題になっている。ブラジルのエクスポージャー(投資・融資・保証の総額)が他商社に比べて突出して多く、約8000億円あるが。

安永 国ごとのカントリー・エクスポージャーはある程度コントロールする必要があると考えている。当社のトータルのアセットサイズと、相対的なブラジルにおける強みを考えると、過度な集中ではないと判断している。ではこれ以上積み上げるかというと、少し慎重に考えざるを得ない。特に政治的にブラジルは少し不安定さが出ているので、そういう意味では要注意と考えているが、我々のブラジルにおける資産というのは、(鉄鉱石世界最大手の)ヴァーレをはじめとして基本的には輸出型のドル獲得の事業。あるいはそれにつながっている事業なので、相対的にはブラジルのボラティリティー(価格変動率)にあまりさらされていない。むしろ、ヴァーレの株価は中国経済にさらされていると言った方がいい。単純にブラジルをエクスポージャーとしてカウントすべきかというと違うかもしれない。


ーー ブラジルのエクスポージャーはこれ以上増やさないが、今の中でできるマネージしていくということか。

安永 例えば、三井ガスを通じてブラジルでガス事業をやっている。こういう下振れの少ないインフラ事業の場合には、ガスの販売量、供給エリアを増やしていけば、コスト競争力がさらに上がっていく。そういうところでは昨年も供給地域を増やしていくための投資はしている。


ーー ブラジルの鉄鉱石事業はどうか。ヴァーレは経営不振と言われているが。

安永 ヴァーレ自身は製造コストを見直して、設備投資も今の市況に合わせて最適化をしている最中なので、大きな心配はしていない。もともと競争力はある。


ーー 三井物産の鉄鉱石のシェアは世界5位か。

安永 持ち分トン数でいうと世界4位ではないか。海上輸送量でいうと世界5位。鉄鉱石3メジャーと等距離で対応している。この連休に豪州に出張で行ってきたが、社長として最初の出張だった。豪州はブラジルよりも最大の投資先。LNGもあるし、鉄鉱石、石炭、電力資産もあれば木材チップに食料、化学品では塩を作っている。


-- 豪州もやはり重要な投資先か

安永 新米社長だが、アボット首相にお会いすることができた。この60年、とくに西豪州ピルバラ地域の鉄鉱石の開発に三井物産が投資したことが、西豪州の発展の基礎になっていると、「三井物産は豪州にとってアブソリュートリー・パーフェクト・コーポレート・シチズンだ」というありがたい言葉をいただいた。これはあちこちで言っている。

 日本人だけでなく、豪州人で我々の事業に参画しているスタッフに対してそれだけプライドを持って仕事をしてくれと言った。

 投資だけでなく、豪州と日本の間のいろいろな交流にも寄与してきている。今まで奨学金プログラムで330人ほど豪州の学生を日本で受け入れている。そういう交流や、資源だけに限らず、いろいろな広がりを持った事業に我々は投資し続けている。それに見合うリターンもしっかりいただいている。政府から見ても優等外資と認めていただいていることだと思う。


ーー 案件の投資を決断する時はかなり精査するのか。

安永 今、1兆1000億円の投資枠があるとは言っても候補は相当ロングリスト化されている。もともと個別案件審議会、ポートフォリオ管理委員会、経営会議、取締役会と4段階で安全性を精査して、その中でいいものをやっていく。しかし、スピード感がどうしてもなくなってしまう。特にBtoCの世界、伸びているアジアでは、華僑系の企業グループと付き合うには、経営判断のスピードが合わないということもあって、もう少し精査にかけるプロセスは変えずに、どうやったら前倒しで案件を進められるか、プロセスの見直し、簡素化ということを今考えている。

 ただ、基本的には相当時間をかけて案件の精査はやっている。それでも失敗はあるでしょう。当初思っていた環境から想定が変わる場合があるので、想定から変わった時にどうやってそれを自分たちがコントロールするか、よりよい方向に事業を持っていくことができるように事業を変えていくかと考えた時、自分たちがコントロールできる部分が大きい案件でないと、人任せにすると環境変化に対して弱いと思う。


-- この中期計画(14~16年度)では2020年にEBITDAで1兆円超えを掲げている。

安永 我々としては2020年を一つのターゲットにしている。1兆円はそれくらい稼げるようになりたい。投機純利益にこだわると難しい。キャッシュを創出する力として、EBITDAを見た時に、昨年が7800億円だから、今年は資源価格が下がってそれを量で補ってやるが、7800億円よりは下振れすると思う。


-- 大手商社は純利益に走って、純利益で100億円積みませる案件に投資して結果的に減損する繰り返し。EBITDAで1兆円を目指す意図もその回避を意識しているのか。

安永 15~20%のシェアでエクイティピック(持ち分益の取り込み)だけを狙うのでは意味がない。他社もそれだけでなく、そういうのもあるけど、それを使って種芋として事業をどうやるかを考えていると思うが、我々はもっとその先を行って、本当にキャッシュ創出力を大きくするための事業であり、事業に対する刺さりこみ方は何かを考えていかなければならない。 自分たちで事業をきちんと切り盛りできる分野は何かを探してくる。 原油の世界でオペレーターシップを張るのは容易ではないと思っているが、子会社のMOECO(三井石油開発)という事業体があって、そこのジオロジスト(地質学者)とエンジニアがいる中で、自分たちがどこまで事業の運転手として切り盛りできるのか。これを常に考えてほしいということは言っている。


ーー サハリンLNG、豪州の鉄鉱石で稼ぎ頭のローブリバーなどに匹敵する事業がインフラなど非資源の分野で10年、20年後にできるのがいいことではないか。

安永 そうだ。発電所一個一個は難しいが、IPPをバランスよく地域と燃料の種類によって資産として持って、それを固定化するのではなくて、逆に売り買いをしていく、というモデルが作れると一つの柱になると思う。モビリティの分野については鉄道事業とトラックリースに相応の投資をしている。それらをしっかり収益化するし、収益化できているところは、もっと強靭な収益基盤にするというの当座の目標になる。

 石油化学の川下や、BtoCでやれるものを徹底的に、検討、開発中の案件でいいものをよりよくしてやろうとしている。


ーー 食や農についてはどうか。

安永 ブラジルで投資した農業生産・穀物物流事業のマルチグレイン社をしっかりと立て直すというのが今期の一つの目標。過去、天候不順や大豆市況の低迷などがあったが、ようやく、組織体制も整ってきた。今年はかなり改善すると思っている。

 マルチグレイン以外の食料の分野でも、我々がもっと大きく張れる部分がないのかは探している。だからと言って高値づかみをしてはいけない。案件精査のプロセスにしっかり時間をかけて、コーポレート・ディベロップ本部の役割の一つとして、当社に規模感のある、収益基盤のないところでどういう案件をゲーム・チェンジャーとしての投資先を見つけ出すか、これはCD本部と食料・食品事業本部のミッションだ。


-- マルチグレイン社は何が難しかったのか。

安永 農業というのは、なかなかしんどく、灌漑とロジスティックス、倉庫、輸送手段というものをしっかりと我々が自分で確保していないとタイムリーな格好でマーケットに物を出せない。そこでVLIという(ヴァーレ子会社の)一般貨物輸送事業に入った。その一つの理由はブラジルの中の輸送手段の獲得。これがボトルネックなのでマルチグレインのカーゴだけを運ぶわけではないが、それをやることによって、内陸輸送の利便性を高めていくという面では相乗効果があると思っている。


ーー 貨物輸送では日銭も入る。

安永 そうですね。あと港湾。ブラジルは港湾のキャパシティが足りないので、鉄道の内陸輸送と港湾のキャパシティを押さえるのが今まさにやっていること。港湾拡張のプロジェクトも同時並行してやっていく。コンセッション(事業運営権)ももらっている。

 この様にやることはたくさんある。中計を見ればわかるが、いまパイプラインに入っているバルーンの案件の数と規模は結構しっかりしたものを持っている。これが立ち上がってくる17~18年くらいから相当強靭な収益力が付いて、そのフェーズが一つ上がるくらいだと思っている。(聞き手・構成=金山隆一・本誌編集長)

2015年

6月

23日

全文掲載 商社特集インタビュー 中村 邦晴 住友商事社長 2015年6月23日号

なかむら くにはる

1950年生まれ。大阪大学経済学部卒業後、1974年住友商事入社。自動車部門を中心に歩み、経営企画部長、資源・化学品事業部門長を経て、2012年6月から現職。64歳。

◇非資源の稼ぐ力は着実についている


 2015年3月期、シェールオイルや鉄鉱石などの資源関連投資で、3103億円という巨額の減損を計上、16年ぶりとなる732億円の連結損失となった住友商事。投資に手堅いと定評があった住商に何があったのか。中村邦晴社長を直撃した。


--2015年3月期は、16年ぶりの赤字に転落した。

中村 大きな赤字を出し、最終赤字になったことについては、ステークホルダー(利害関係者)の期待に沿えなかったという点で、責任を感じている。しかし、これをバネにしたい。

 投資については、社内の手続きを踏みしっかり検討し、社外のコンサルタントの意見をもらったりして、決断をしたが、結果的としてこれだけの損失を出した。それには理由がある。次の投資に生かさないといけない。4月からの中期経営計画で、それをやりたい。


◇低価格では資源は買えなかった

 

-- 米シェールオイルの損失の原因は?


中村 隣の鉱区までは、オイルがかなり出ていることを確認していた。ところが、我々の(取得した)鉱区に入り、オイル層の地形は複雑に変化していて、採掘が難しいことまでは、事前調査ではわからなかった。

 パートナーの米デボン・エナジーは当初、我々の投資案件が大きなポーション(割合)を占めていたが、その後、別の案件を始めて、そちらのポーションが大きくなった。リグ(採掘機)の設置にしても、そちらを優先するようになった。そういうリスクを織り込めていなかった。デポンにとってもビジネスだから、掘り出すコストが安いところのほうが利益が大きいわけで、そちらに移る。そうしたところまでは想定していなかった。

 その前に米テキサスでシェールオイル開発をやったときには、ほぼ想定通りにできていた。もう一歩、二歩、深く考えることが足りなかったと反省はしている。


-- デボンとの契約は、住友商事にとって不利な不平等契約だった?中村 それはない。我々にも契約に対する拒否権もあった。決して不平等ではない。リスクがあるということを自分たちで事前に気づいて、それを押えることができなかった。そいう意味では、経験不足もあった。

-- 資源価格が戻れば、開発を再開するのか。

中村 今回は、生産しているものもあり、続ける。北の地域は売却。やるとなると、リース契約を更改しないといけなく、それには多額の資金がいる。そこまでやってやるのか、売却・撤退かを検討中。もう一度とは、いかないだろう。


-- ブラジル・ミネラソンウジミナス(ムーザ)の鉄鉱石の減損623億円の原因は何か。

中村 鉄鉱石の価格下落がこたえた。ここまで落ちるというストーリー、筋書きは我々にはなかった。将来価格についても、専門の調査会社に長期的な価格予想をとって、それをもとに、我々はこういう価格で推移するだろうという前提で、現在価値をはかって決める。港の開発などもあったので、やりはじめた当初、ウジミナスそのものに経営の混乱があり、そういったことも決定を遅らせる要因になった。ムーザの経営状態を読めなかった。


-- 高値づかみだった?

中村 結果として、もっと低い価格では、(権益を)買えない。マーケットを見る目がないと言われれば、それまでだが。では、(鉄鉱石価格は)何をベースにするのか。世の中に出ている長期的な予想も信用できない。鉄鉱石価格は、1㌧当たり20㌦と低いところから、上がって、下がってという状況だった。当時の中国の鉄鋼の(需要の)伸びを見て、どこまで落ちるかを予想するかだったが…。

 我々は、資源開発では後発商社。古い権益を持つ商社のように20㌦代の鉄鉱石の権益はない。もっと高くなってからの権益取得だ。そこから下がると、減損となる。一時200㌦を超えた。100㌦で買って、半分で買えるかというと、買えない。では資源はやらないのかとなる。この判断は難しい。長期的価格を、20~30年の長期のプロジェクト。そこまでの価格を、予想する。それを、どこにおくのかが一番難しい問題。

-- 資源に関して、資産の入れ替えをやるのか。

中村 資産の入れ替えはやるが、減損をやったので、簿価はずいぶん下がっている。今となれば、安い権益をもっているということになる。

 当社は資源に関して、「仕掛かり案件」がたくさんある。たとえば、鉄鉱石のムーザ。生産して利益を出している。ほかにもプロジェクトはまだある。マダカスカルのニッケルプロジェクトなどだ。


-- しかし、ニッケル価格も下落している。

中村 下落しているが、底を打って戻している。いろんな見方があるが、来年ぐらいから需給関係が逆転するだろうと。今、辛抱のしどころ。


◇資源メジャーの中小つぶし


-- ここ5年ほどの投資は、失敗の連続だった。

中村 米国タイヤ事業は、ずいぶん前に買った案件。3000万~4000万㌦の利益が出ていた。2008年9月のリーマン・ショックあたりからおかしくなり、今回減損(219億円)した。過去3~4年のものがきたというわけではない。(事業の)拡張をした時期もある。タイヤについては、自動車販売が年間1600万台から1100万台まで落ちたのは大きい。ターゲットは車齢の5~7年の中古車オーナーがメインの顧客。新車販売がどんと落ちたが、新車販売が元に戻れば、また需要は見込める。

 ただ、米国でタイヤ販売を手がけるTBCは、卸とフランチャイズ(FC)店はいいが、直営店が悪い。なぜか。1年半前から改革をはじめている。システムを変えるとか。不採算の店舗の入れ替えや売却などもしていく。集客をどうするかなどを検討している。改革は、計画より遅れているのは事実だ。


-- そもそもなぜ、資源分野で一気に減損が発生したのか。

中村 価格が上がって、落ちてきたところで、また戻るであろうというところで買った。上がりのところで、買ったりした。将来価格の見方が、もう少しこれぐらいのレベルで推移するだろうと。それが、その通りになっていない。


-- 住商は投資には慎重だったはず。なぜ高値買いをしたのか。

中村 順張りというか、タイミング。いつの投資が適格かが、わからない。それが経験といえば、そうだが。マーケットの状況と我々の価格推移の見通しの違いや、資源を取り出すコストの問題などいろいろな事情があった。

 鉱山ごとの生産コストがある。資源価格が下がってくると、コストが高い鉱山から閉まっていく。これが競争力。供給が減ることで、価格は戻ってくるだろうという予想で権益を買っていた。

 資源メジャーは、コストの高いところにいても、さらに開発・生産をする。生産を増やすことで、コスト下げるのだ。そういうことをしてくる。

 我々は、大きな開発・生産をしていない。資源メジャーのようなコストを下げるということはできない。資源メジャーは、増産して小さいところを潰しにきている。そうして小さいところが閉山していくと、資源価格が戻り、メジャーは大きな利益を出せる。


-- 新規投資は控えるか。

中村 新規投資は、資源関係はしばらく見合わせえる。当社には、前述したように投資して回収に至ってない「仕掛かり案件」がたくさん残っているからだ。マダカスカルで進めている、ニッケル開発事業「アンバトビー・プロジェクト」やムーザの鉄鉱石などだ。アンバトビーは、計画が2年以上も遅れている。

 ただし、資源分野を現在の15%から中長期的に20%にするという目標は捨てたわけではない。


-- 今後のリスク管理は? 何重にも審査をして、その結果、投資案件がなくなってもいいというぐらい慎重にいくといった説明をしている。

中村 それぐらい慎重になっていい。「これを逃すともう(いい案件は)ないというプレッシャー、恐怖感がなかったか、反省している。中国の「爆買い」がすごかった。プレッシャーというか。当時の中国に資源をすべて押さえられる。いい案件が買えない。相対でやれるいい案件なら、これを逃すとないと、もう我々が買える案件がなくなってしまう。そういう恐怖感に、動かされたのではなかったかと反省している。

 (検討に)時間がかかりすぎるということで、十分に検討せずに、結論を出すということはできない。当時でも十分に検討したが、それでも今回のような大きな損失を出してしまった。今回のようなことがないように、投資委員会や経営会議、取締役会などで多層的に検討を重ねる。重複が多いとの指摘もあるが、それぐらい慎重にやっていく。それでできないということは、自分たちの力不足ということだ。


◇非資源の稼ぎ力


-- 非資源はどうか。

中村 稼ぐ力である基礎収益、つまり一過性ではない通常の収益力を私が社長になってから強く、大きくしようと言ってきた。一過性の損失が出ても、それが終われば、力強く復活できる。それには通常の収益が出ていることが大事だ。

 基礎収益は非資源で12年3月期に1800億円、資源で715億円、合計2515億円だった。15年3月期は資源の大幅な減損があり、資源の基礎収益は525億円の損失となったが、非資源は2365億円まで積み上げた。非資源の収益力を伸ばすのは、ずっとやっていく。


-- これからどの分野で稼ぐか。

中村 今期からの中期計画3年を展望したとき、資源は厳しいだろう。原油はじめ資源価格の低迷はまだ続く。しかし、ガソリン価格の値下がりは、世界的な自動車販売には追い風だ。中国は落ちたとはいえ、年間2300万~2500万台。米国は1650万台まで回復してきている。アジアも中間層の増加で、自動車販売はまだ伸びるだろう。すると、裾野の広い自動車分野は伸びていく。

 ただし欧米、中国、アジアと地域ごとに需要は異なる。欧米、特に米国は環境問題への対応が必要だ。燃費性能の向上や二酸化炭素抑制の観点からハイブリッド車、軽量化が求められる。軽量化であれば、アルミ需要が盛り上がるからアルミビジネスを拡大する。

 中国は、生産がベースで、部品産業が中心になるだろう。アジアは販売が主体で、自動車ファイナンス(金融)がビジネスチャンスだ。地域ごとに、発展段階が違う。


-- ほかに有望な分野はどこか。

中村 もう一つ世界的に電力や交通、物流、通信などインフラ事業も有望だ。欧米は、太陽光や風力発電など再生可能エネルギーの普及につながるインフラ整備が期待できる。アジア・中東は、火力やガス発電だ。インフラも地域ごとで、ビジネスが違う。

 また、単にハードを売る込むだけでなく、ミャンマーの鉄道事業のように保守などを含めたパッケージでやっていく。電力の保守はIPP(独立発電事業)。こうした地域ごとに異なるニーズへの対応やパッケージで売り込むインフラ事業を展開するために、「部門間連携をとってくれ」と言っている。

 たとえば、欧米自動車事業で有望視されるアルミは金属部門の担当だが、部品は自動車部門が扱っている。こうした部門を超えて、連携をとって対応しなければ、需要に応えていけない。非在来型エネルギー事業のワーキンググループも米国で立ち上げた。


-- 部門間連携をとろうという改革は、以前からあったが、なかなか実現しないのはなぜか。

中村 東京だけでは、部門間連携はとれない。動かない。十何階にもフロアーが分かれて、仕事をやっていると動かない。しかし、海外なら一つの机に駐在員全員が集まり、金属、自動車など部門を超えて、情報の共有ができる。だから、海外や地域から(東京を)変えてほしいといっている。


-- 2018年3月期の純利益目標3000億円以上は達成できるか。

中村 少ないかな。もっといけると思うけど……。環境インフラ部隊は、先が読める。国内でも太陽光や風力、バイオマス(生物資源)で、確実に収益は上がってくる。電力の小売りの自由化は、(子会社の)サミットエナジー。これをケーブルテレビのジュピターテレコム(JCOM)のネットワークなどを使って売ろうと。次はガスの自由化。JCOMの505万戸のネットワークなどを使って、まさに部門間連携でやる。

 海外でも風力、IPPなどの利益が望めるだろう。自動車はメキシコでマツダと合弁工場を立ち上げ、フル生産をはじめる。ミャンマーの通信事業も伸びていて、収益が期待できる。いろいろ入れると、純利益3000億円くらいはいけるだろう。

 いま、アンバトビーは約100億円の赤字だが、100%生産で赤字幅は縮小する。タイヤビジネスも赤字だが、それを少なくしていく。黒字に変えていく。ニッケル価格のこれ以上の下げがない限り、アンバトビーの減損はもうないだろう。


-- 資本政策についてはどうか。ROE(株主資本利益率)10%を目標にしている。

中村 まずやるべきは、リスクアセット(資産)とリスクバッファーをバランスさせること。つまり、最大損失に対する備えとして余りある資本を用意するということだ。それともう一つは、3年間の配当後キャッシュフロー(CF)を黒字にすること。この二つを財務政策を3年間でやる。これが一番の課題だ。これをベースに投資。投資ありきではない。CFが予想通りにならないと、投資を抑える。

 今回の損失を出した反省として、案件に対するリスクウエートが低すぎたということがある。リスクウエートを厳しくして、従来より1200億円リスクアセットを追加。その結果、リスクアセットに対するリスクバッファーが1800億円の不足状態となり、アンバランスになっている。これを3年でバランスさせる。それには投資を抑えて、利益を増やす。


-- 大きな損失を出したことで、変えるチャンスではないか。

中村 中期経営計画を説明しても、アナリストからはわかりにくいとよく言われる。しかし、ビジネスは生き物。ここで(事業を)やめて、もう一回やればいいというが、一度やめたら、続かない。続けているから、次がある。ポーフォトリオ(投資の中身)はどうかと検討を重ねて、ここから3年は、こういう産業分野でやっていくと説明している。3年間で1兆2000億円を投資するが、枠にはめてしまうのがいいかどうか。

 ただし、1兆2000億円の投資ありきではない。既存ビジネスでミニマムでやるところもある。全社でコントロールしている。その結果、収益を上げていく。それが総合商社だ。

(聞き手・構成=濱條元保・編集部)

2015年

6月

23日

全文掲載 商社特集インタビュー 国分文也 丸紅社長 2015年6月23日号

こくぶ ふみや 1952年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、75年丸紅入社。石油、エネルギー部門を中心に歩み、代表取取締役副社長執行役員を経て、13年4月から現職。62歳。

◇2018年は爆発力のある年に


 原油、石炭、銅など資源価格の急落や、買収した米穀物メジャー、ガビロンののれんなどの減損を計上し、純利益が従来予想の2300億円から1056億円に半減した丸紅。どう立て直すかを聞いた。

 

―― 2015年3月期の業績について

国分 振り返ると、丸紅にとってもっとも苦しかった2001年のAプラン(特別損失の一括計上と、業績のV字回復を骨子とした中期経営計画)で、2300億円の減損を一括計上した苦い経験があった。Aプランは、一つの教訓として「絶対に繰り返さない」を合言葉にやって来たにもかかわらず、結果として15年3月期にそれを上回る減損を出してしまったことを重く受け止めている。

少なくとも中国はじめ新興国が資源を買い漁り、価格が上昇を続けるという状況とは大きく変わりつつある中で、やはりここで減損を決断するしかないだろうという感覚があった。資源に限らず、ボラティリティ(変動率)の高い時代であることを痛感している。



―― 13年に2800億円を投じて買収した米穀物大手のガビロンは高値掴みだったと感じるか。

国分 ガビロンは今後高い収益力が見込まれ、我々にとって必要な投資だった。もちろん投資した分の十分な価値を生み出せたかという点で反省すべきところはあるが、上手く軌道に乗れば今後素晴らしいアセット(資産)になるという自信を持っている。


―― 15億豪ドル(約1400億円)を投じた豪州の鉄鉱石開発事業のロイヒルは減損していないが大丈夫か。

国分 まず、現在開発工事自体は順調に進んでいる。プロジェクトがしっかり管理されており、順調に行けば今年9月には稼働できる状態だ。ロイヒルの採算ラインは1トン=40ドル程度で、鉄鉱石の価格によっては3~4年は厳しい状態が続くとしても、それを乗り切れば十分に競争力はある。


―― 資源と非資源の比率はどうか。

国分 現在利益に占める資源比率はほぼゼロとなり、16年3月期見通しも2%としているが、原油や銅、鉄鉱石など多くの案件が18年に生産量のピークを迎える見通しで、その生産ピークを見越して設備投資を進めている。当社の原油の持ち分生産量は現在の日量約2万3000バレルから8万バレル前後に、銅の生産量は現在の年間約12万トンから15万トンに、鉄鉱石も17~18年にピークに達するだろう。先行投資を行なう上で経営上リスクはあるが、設備投資が完了し、ピークに来た時こそ、それまでの投資が実になり、成果として表れてくるだろう。そういった意味で18年は丸紅にとって爆発力のある年になる。


―― 資源価格の見通しは。

国分 鉄鉱石はトン当たり40~50ドルの辺りだと僕自身は思う。原油も1バレル=60~70ドルくらいの見通しだが、少なくともあと1~2年は、再度50ドルを切ることも、可能性としてはゼロではないのではないか。


―― 1~2年の間、生産コストが割れたら持ちこたえられるか。

国分 開発の案件をいくつか抱えており、原油の生産量を日量約2万3000バレルから8万バレルという、目標達成のための先行コストが重たい点はあるが、生産は60ドルくらいで採算が取れる案件も多く持っている。


◇フリーキャッシュフロー黒字化が絶対条件


―― 16年3月期の配当見通しは1株当たり21円で減配となる。

国分 当社の配当性向が低いということは理解しており、株主の期待に沿わなければならないと十分認識しているが、やはり01年以来の大減損をしながら配当性向を引き上げることはできなかった。16年4月から始まる次期中期経営計画を実施する中で、増配を検討したいと思っている。


―― 今年度の新規投融資は。

国分 16年3月期を最終年とする3カ年計画の中で、1兆1000億円の投資枠を設けたが、昨年度までの投資分9000億円と従来のキャペックス(設備投資分)1500億円、今期に機関決定している2000億円を加えると、投資枠を超えてしまう。そのため現在1000億~1500億円くらいの新規枠を設けたが、これらを使い切ると、16年3月期は4700億円キャッシュアウトする。今期はフリーキャッシュフローの黒字化を絶対条件としており、キャッシュアウト分の約4700億円をどうマネージしていくかがポイントだ。

平均的な営業キャッシュフロー2500億円に加え、資産の売却などで15年3月期の2200億円の回収実績と同様のキャッシュインを見込むと4700億円となり、キャッシュアウト分をカバーする見通しは付いている。


―― 営業キャッシュフローの目標は。

国分 なるべく早い時期に、3000億円出したいと思っている。


―― 資産の入れ替えはどうか。

国分 去年の入れ替えも含めた資産の回収は2200億円くらいになるが、これを今年は2500億円くらいを目標とする。現在資産回収のリストを作り、適宜回収していくプランで進めている。具体的な回収プランとしては、不動産関係などの低稼働の資産の回収や、さまざまなコンビネーションでの資産の入れ替えを想定している。古典的な伸びしろのある資産を、ある程度の高収益資産に塗り替えていきたい。


―― リスク管理の面ではどうか。

国分 パートナーがしっかりしている案件は成功確率が高い。最後までしっかりやり遂げるパートナーと組むことが大切だ。


◇機械は丸紅の強み


―― 健闘している子会社はどこか。

国分 米国の農業化学品事業のヘレナケミカル社だ。28年前に丸紅が買収したヘレナケミカル社は、これまで米国丸紅の傘下にあり、順調に売上を伸ばし続けてきたが、今後の長期的な収益獲得には、本社との物理的な距離による弊害や、米国丸紅を介した組織体制を見直す必要があった。今回、改めてヘレナケミカル社を「グローバルの中のローカル」と位置づけ、米国丸紅を介さず、東京本社直轄の「ヘレナ事業本部」の管掌とし、経営上の権限を委譲することで、組織体制を強化した。

 それと共に、これまで通りの地域に根ざした事業展開の両方を実現する、新たな事業構造と成長戦略の構築を実現した。我々はこの新たな成長戦略を「プラットフォーム型」と呼び、ヘレナ事業本部だけでなく、米穀物大手のガビロンや米穀物子会社のコロンビアグレインなどの子会社も強化し、伸ばして行くつもりだ。今後、ヘレナケミカル社のような核となる子会社を、アジア・ヨーロッパ・アフリカなどに、どれだけ作れるかが勝負だと感じている。


―― 輸送機もかなり良い業績だ。

国分 輸送機の業績はこの数年で相当伸びている。現在の収益のドライバーは機械部隊。その中でもインフラ関係、電力、重電プラント、輸送機が相当伸びている。機械部隊は丸紅の強みとして今後も伸ばしていく。


―― 大手商社の業績上位3社と比べて、純利益で3倍の差が付いた。

国分 他社に比べ当社は、トップラインと資産効率が決定的に異なる。ほぼ総資産が同じで、これだけ差があるということは、まだ当社の中で低収益の資産が、相当眠っているということだと思う。


―― 現在が正念場、ということか。

国分 財務体質が他社に比べ遅れている。ネットDER(純有利子負債倍率)にしても、キャッシュフローにしても他社に比べ及んでいない部分が大きい。一度に総資産を増やすのではなく、まずは足元をしっかり固め、手持ちの資産をいかに有用化し、有用化できていないものをどれだけ入れ替えていけるか、この勝負だ。

 この5年で約2兆円弱投資した。それぞれの収益率を1%上げるだけでも収益は大きく変わるだろう。純利益、ネットDER(純有利子負債倍率)、キャッシュフローのバランスをしっかりと取り、その中で17年3月期から始まる次期中期経営計画の道筋を立てたい。

(聞き手:中川美帆、構成:荒木宏香・編集部)

2015年

6月

23日

全文掲載 商社特集インタビュー 小林健 三菱商事社長 2015年6月23日号

こばやし けん

1949年生まれ。71年東京大学法学部卒業、三菱商事入社。船舶部に配属。船舶・交通・宇宙航空事業本部長、新産業金融事業グループCEOなどを経て、10年6月から現職。66歳

純利益トップで、堅実さが際立つ三菱商事。小林健社長に強さの秘密と資源、非資源投資の方針を聞いた。


◇資源は短期で判断しない


-- 2015年3月期の業績をどう見る。

小林 当初の予算、目標は達成したので、全体的にはよくできたと思う。ただ、15年3月期の後半から資源安になった。当社は資源と非資源の双方で事業を展開しているので、資源安で相当打たれて、減損を出した。この点は学習と反省をしないといけない。


 だが全体で言うと、「経営戦略2015」(13年5月発表)で目指したように、資源が不振の時は非資源でカバーするという方向は明確になっている。15年3月期は、資源のマイナス部分を非資源で補い、目標を達成した。会社全体の方向性は目論んだ通りにいっている。


-- 資源分野の減損は約900億円だ。

小林 資源価格が大幅に下がり、会計上、減損が必要となった。不採算部分は償却することが基本のため、後に残さないつもりで行った。

 他社もそうだが、減損したのは、資源バブルの頃に仕入れた案件が多い。投資すれば、誰でももうかる時代があった。そういう時に大量に投資して、そうじゃない時に何もしないのは……。資源ビジネスには継続的に取り組む。成果は10年、20年と長い目で見てやっていくことが大事だ。

 当社は、資源を全部売り払って、それ以外でやっていくタイプの会社ではない。資源と非資源でバランスのよいポートフォリオにする。計画としては、非資源を強くし、安定的に利益を生み出す体質にして、資源の回復を待つ。その意味では、計画通りにいっている。


-- 資源は短期で判断せずに10年、20年で見ると。

小林 そう。もっと大きく100年のレンジで見たら、資源は食料も含め、足りなくなることが目に見えている。資源の生産で、ものすごい技術革新があれば別だが、地球上で簡単に掘れる所はたいてい、手が着いている。新規の資源投資をこれ以上やろうとしたら、深い海底や、ツンドラの奥地などになって、よりコストがかかる。そのため今後の新規投資は、さらに見極めが大事だ。

 資源価格が低い時の資源投資は、新規投資よりも、既に投資した案件のコスト競争力を高めるための投資が主体になる。例えば、我々が世界で大きなシェアを持つ原料炭のシェア拡大のための投資だ。生産を拡大することで、コストを下げる。資源ビジネスは踊り場なので、こうした形で乗り切る。


-- 権益の売却など、資産の入れ替えはどうする。

小林 今は価格が低いので、権益の売却は難しい。幸い、価格が低い時に得た権益がずいぶんあるので、それらは着実にランニングで収益をあげていく。ただ、高く買ったものもあったので減損した。それが今の姿だ。純利益に占める資源と非資源の比率は、現在のおよそ3:7が良いところでは。


-- 16年3月期は、大きな減損を予定していないのか。

小林 していない。原油など資源の16年3月期の価格見通し、これは他社も大体一緒の数字を出していて、これらの価格が16年3月期も継続するという前提ならば。これらの価格がもう一段下がっても、大きな減損はないと思う。


◇非資源で3500億円稼ぎたい


-- 非資源分野はどうか。15年3月期は連結純利益が約3100億円で過去最高になった。

小林 減損処理したローソン株の戻し益を除いた約2500億円でも過去最高だ。「経営戦略2015」は、基礎利益(安定配当の基準となる連結純利益)を3500億円とし、配当もそれをベースにしているが、20年までに3500億円を非資源だけで稼げるようにしたい。資源相場に左右されず、基礎配当ができる体制にする。

 20年までの5年間で、あと1000億円積むとなると年200億円。非資源は5グループあるので、「1グループ当たり年40億円を稼いでくれ」と言っている。達成できる可能性は十分あると思う。


-- 新規投資はどうする。15年3月期は鮭マス養殖に約1500億円を投じて、ノルウェーの上場水産会社セルマックを買収したが。

小林 油・ガス・金属だけでなく、食料も資源と言える。食料資源にも手を打たないといけない。

 食料資源のうち、炭水化物資源については、グレイン(穀物)、小麦、大豆、トウモロコシで、それぞれに手を打った。全体的に、世界中から、成長するアジアに流れを持っていく。そういうバリューチェーンをつくる。これは炭水化物資源で、ある程度できた。

 タンパク資源については、(ターゲットとする)分野を決めた。人数に限りがあるので。動物性タンパク質では、豚肉の事業は手がけているが、牛肉など全般的に行うのは、なかなか難しい。動物性タンパク質で言うと、当社は昔から水産物に強い。

 そうした経緯もあり、タンパク資源として水産物に力を入れることにした。そのバリューチェーンをつくろうと、主にノルウェー政府が所有するセルマックを買収した。セルマックは、ノルウェー、カナダ、チリで養殖をしている。私は先週(5月25日の週)、ノルウェーへ行き、首相に会った。当社がセルマックを買って、きちんとやっていくと言い、非常に共感を得た。

 なぜ鮭マス養殖に力を入れるかというと、ナチュラルキャッチ(天然魚の捕獲)だけでは頭打ちで、需要を賄えず、養殖で補う必要があるから。鮭マス養殖をするには、水温や地形、潮流などの条件があって、地域が限定されるので、条件に適した養殖場を持つ会社をM&A(企業の合併・買収)でテイクオーバーする(引き継ぐ)のが早い。ノルウェーは国情が安定していて、セルマックは鮭養殖で世界的に高いシェアを持っているので、買った。ここで養殖した鮭マスをアジアに供給する形になると思う。


-- 今後の新規投資はどうか。

小林 16年3月期でいうと、基本的に新規投資は継続する。投資なくして成長はない。資源・非資源問わず。時期によって、バランスは異なるが。16年3月期は、資源価格が上がれば、もちろんチャンスがあると思うが、なかなか良いチャンスはないだろう。そのため、資源に目を向けるものの、基本的には非資源により大きな投資をしていく。


◇ローソンから鉱山まで


-- フリーキャッシュフローは、15年3月期に過去最高水準となった。なぜ高いのか。

小林 「中期経営計画2012」(10~12年度)の初期から、投資はするが、なるべく入れ替えでやっていく方針を出している。人間の供給力には限界がある。もちろんセルマックのようにM&Aするというのもあるが、基本的には当社の社員が方々(ほうぼう)に散って、事業投資先で経営する。

 すると何もかも手がけるわけにはいかないので、20年を見据え、競争力のある強い「コア」の部分に投資して伸ばすことにした。そうでない「ノンコア」の部分は売却するなど、入れ替えを進める。人間もしかりだ。原則として、投資を考える時は、それに見合う入れ替えを用意しろと言っている。これを全社でまとめ、投資のプライオリティ(優先順位)を決めることになっている。

 こういうことは、トップダウンで言わないとダメ。皆が入れ替えに精を出してくれた。当社は方向性が決まると、ちゃんとやってくれる。目論んだよりも、入れ替えが増えちゃって。株も売った。やればできる。入れ替えが進んだことなどで、フリーキャッシュフローは過去最高水準になった。

 総合商社は変わった。昔は「ラーメンからミサイルまで」を扱うトレーディングが主体だったが、今は「ローソンから石炭鉱山までの事業投資が主体。そのため社員が事業投資先に出て行って、経営することが増えている。となると、あれもこれもできない。

 しかも、従来はB to B(企業を顧客にするビジネス)だけだったが、今はB to C(消費者を顧客にするビジネス)に参入している。コンビニでは、単に店舗で物を売るのではなく、宅配や銀行振り込みも扱うようになった。そのうち介護もやるのではないか。このように生活に組み込まれていっている。当社からすると、従来は担当者が2~3人で組んで、例えばローソンなどに原料を供給して、薄い利幅でやっていた。それを経営するとなると、リスクも大きいし、そこで働いている人たち、グループ社員とも言える人たちの生活もかかっている。失敗したから、すぐに閉じるとか売るとかできない。社会的な責任もある。

 フリーキャッシュフローが増えたことはもちろん良いことだが、その増えたフリーキャッシュフローをどういうプライオリティで配分していくか。それが経営の課題だ。


-- これほどキャッシュ創出力が高いと、新規投資と株主還元の両方ができるのでは?

小林 経営では、「成長性」、D/Eレシオや格付けに表れる「財務の健全性」、ROE(株主資本利益率)に表れる「資本の効率性」の三つを追い求める。言わば、3次元連立方程式を解くようなものだ。

 いつも、全部の解がスパッと出るわけではない。経済は生き物だから。我々も成功したり失敗したりしている。経営では、この三つを、どういうプライオリティで、時代の環境に当てはめてやっていくかが大事。これは社員だけでなく、株主など社外のステークホルダー(利害関係者)にも納得してもらいながら、経営していく。

 資源・非資源は同居させる。非資源で基礎利益を稼ぎ、資源は優良案件を選んで投資していく。資源価格が回復すれば、その分だけオンザトップ(上乗せ)で利益が出るようにする。そうすれば、三つの方程式がうまく回る。


◇しばらくは我慢の時期


-- 純利益1兆円を目指す?

小林 今は資源価格が非常に低い。資源・非資源の両方を抱えて運営していくならば、しばらくは我慢の時期だ。そういう説明をステークホルダーにもしていかないといけない。もちろんROEが10%を超え、D/E(デット・エクイティ)レシオ(株主資本に対する負債の割合)が1倍を割り、収益が6000億円上がれば言うことはない。しかし環境はどうか。リーマン・ショック前の資源バブルの頃とは違う。リーマン・ショックで一度、世界経済が気絶し、やっと立ち直って、立ち直るときに資源安が来て、そこで悩んで、資本政策を考えている。

 ただ、日本の国にとって、資源安は良いことではないかと思う。当社にとっては辛いが。日本には食料も資源もない。幸い成長期に土台ができているので、この環境は悪くない。僕が「トリプルメリット」と呼んでいる「円安」「資源安」「ゼロ金利」。この三つが同時に来たのは、僕が入社して以来、初めてだ。入社した頃は1㌦=360円固定だった。当時の当社には為替予約課があって、バカじゃないかと思った。1㌦=369円になると日銀が介入して360円にしてくれたのだから、必要ない。それが円高になり、今は円安になった。

 ゼロ金利でいうと、僕は30歳過ぎに家を買った。金利8・9%、20年で住宅ローンを組んだので、(販売価格の)3倍くらい払うのだが、経済全体が成長していたので、それでも借りた方がいいと。今は(販売価格の)1・2倍くらい払えば、20年でペイアウトできるので、社員に「家を買え」と言っている。


-- 資源安とは言え、三菱商事は純利益トップでキャッシュ創出力も高い。強さの秘訣を何だと考える。

小林 商社は人であり、クオリティーが大切。一番大きいのはモチベーションだ。自分の仕事が会社や社会に役立っている、貢献しているという自負を持つ人のモチベーションは高い。こういう気持ちを多く持つクオリティーの高い社員を多く育てたいし、そう思える会社であることが大事だ。ROEが低くて、苦労してはいるのだが。

 商事会社には、人間とお金しかない。それをいかにうまく回すかだ。海外にも事業投資先にも人を回し、経験を積ませている。育て方は、そこそこちゃんとできていると思う。

 資源価格が去年の初めくらいのレベルに上がれば、純利益は大幅に増え、ROEも上昇するのだが、世の中、そううまくいかない。そういう時期だと、自分のモチベーションが大事だ。(聞き手・構成=中川美帆)

2015年

6月

23日

全文掲載 商社特集インタビュー 岡藤正広 伊藤忠商事社長 2015年6月23日号

おかふじ まさひろ

1949年生まれ。74年東京大学経済学部卒業、伊藤忠商事入社。繊維カンパニープレジデントなどを経て、2010年4月から現職。65歳

計画通りなら2016年3月期に三井物産を抜いて、純利益で2位に浮上する伊藤忠商事。「非資源商社ナンバーワン」を掲げ、巨額投資で大胆に市場を切り開こうとする岡藤正広社長に勝算を聞いた。


◇財閥系2社に挑む

-- 非資源分野の連結純利益は、2015年3月期に3172億円となった。

岡藤 三菱商事を、ほんの鼻の差で抜いて1位になった。社長就任1年目の11年3月期の752億円から4倍超に増えたので、我々のやってきたことは正しかったと思う。

 この間、資源が高騰して、皆、資源権益の争奪戦を繰り広げた。当社も全く手を出さないわけにはいかず、体力の範囲内で投資した。もちろん他社と同じく痛手を負ったが軽微だった。

-- 15年3月期の資源の減損は約950億円。

岡藤 このうちシェール開発関連の減損対象は、米石油開発会社サムソンの事業だ。同社にはシェールブームの11年に約780億円を投じ、減損兆候を認識するたびに損失を計上してゼロになった。追加投資には応じなかったので、損失が限定された。


 資源ブームの時は、弱い商社が強い商社に勝つチャンスがあると思いがちだが、それは逆。強い商社が勝つ。だから当社はこの5年間、強みのある生活消費関連から幅を広げ、非資源分野に着実に投資してきた。それが実ってきている。

 特に機械カンパニーの純利益は、11年3月期の103億円が、15年3月期は546億円に伸びた。以前の伊藤忠の機械というと、5大商社の中で周回遅れのビリで、機械をやっていることすら認知されていないほどだった。それが今や三菱商事、住友商事に次ぐ業界3位。もちろんまだ足腰は盤石ではないが。

 住宅生活・情報カンパニーの純利益も、11年3月期の60億円から15年3月期は790億へと、ものすごく拡大した。以前は分かれていた保険、金融、物流、建設を一緒にしたのも良い影響をもたらした。

 一つ一つの細かい判断が良かった。間違った判断が積み重なると、会社の成長が失われる。例えばシェールブーム。当時は「これからシェールが中心になり、在来型の石油はダメになる」と言われていた。だからシェール開発を強化する。この判断は、長い目で見れば正しいかもしれないが、途中、今回のようにサウジアラビアが石油を増産すると打撃を受ける。会社の経営は、長期的に見て良くても、ちょっとダメになったら、すぐ撤退するなど、細かく判断していくべき。誤ると致命的なことになる。正しい戦術の積み重ねが大事だ。


◇もうかっていても売る


-- 資源は今後、どうするのか。

岡藤 資源ビジネスは商社の仕事の一つなので、継続しないといけない。ただ、従来と違い、リスクの大きな開発案件が増えている。地域によっては法律も未整備で大変だ。でも商社は、こういうリスクに果敢にチャレンジして、乗り越えて、ここまで成長した。だから否定はできないが、ますます高度なマネジメントが要求されるようになっている。特に資源はそうだ。三菱商事や三井物産のように経験を積んだ会社でなければ、難しいのでは。当社のような3位以下の商社、非財閥系の商社ではリスクが大きい。違うやり方をしないといけない。


-- 資産の入れ替えは?

岡藤 経営努力で、継続してやらないといけない。やるべきことは、まだまだある。日常生活でも定期的に掃除をしないと、すぐにホコリがたまる。

 クギ・ネジで米国最大のプライムソース社を5月11日に売却した。米国の景気が過熱気味で、これ以上伸びないという印象があったからだ。この会社は数十億円で買って、1000億円で売れた。利益貢献は非常に大きく、米国の当社の利益の半分ほどを稼いでいた。このような会社でも、そろそろピークアウトするという時には、思い切って売ることが大切だ。

 華僑は(価格が)高い時に売って、キャッシュを持っておき、(価格が)下がった時に買う。でも商社など日本の上場企業は、それができない。売ったら、すぐに他を買う。なぜかというと、売ってキャッシュを持っていても、収益が減ると、上場企業は株主に対して、耐えられないから。だからすぐに買う。何をしているのだか分からない。

 そうではなく、余裕のある時に売って、キャッシュに換えておくべき。そして、例えば米国の景気が下降気味になって、良い案件が出たら買う。それが本来の経営だ。


◇中国の成長性にかける


-- 伊藤忠とタイ最大財閥CP(チャロン・ポカパン)グループは、中国最大の国有複合企業CITIC(中国中信集団)の中核子会社に出資した。伊藤忠の出資額は約6000億円に上る。

岡藤 連結利益がある程度読めるので、思い切った。非財閥系の伊藤忠が、財閥系の三菱商事、三井物産に挑戦するための一つのきっかけだ。

 大きなチャレンジだが、チャンスでもある。なぜかというと、当社は「非資源商社ナンバーワン」を標榜している。しかも生活消費関連が強み。生活消費関連のビジネスをするなら、中国を無視してはやっていけない。

 先日、銀座の三越に行ったら、中国人客が多かった。日本に来ている外国人で1番お金を使うのは中国人。中国人は自国の商品を信頼していない。日本の商品に憧れているので、日本に来て爆買いしている。だから、中国で中国の人を相手にビジネスをすると考えるのは自然なことだ。

 では、パートナーをどうするか。それがCITICだ。CITICと組むことにより、中国市場で、どれだけプラスになるか。3年後、5年後に判断される。


-- CP、CITICとは、中国でインターネット通販事業などを展開する予定。

岡藤 CITICは国有企業だから、国有財産を伊藤忠やCPに売ったことになる。ならば、中国国民の生活が良くなるビジネスから始めようというのが、我々の共通の目的だ。そこで、まずは日本の良い商品を中国の国民に届けるビジネスをしようというので、ネット通販事業を立ち上げる。

 もう一つ具体化している共同事業は、中国アパレル大手、波司登(ボシデン)との連携。伊藤忠がアジアの商標権や販売権を持つブランドを、波司登が中国全土に保有する約1万店で展開することを検討している。これらは第1、第2弾。第3弾、4弾もある。


-- 中国リスクをどう見る。

岡藤 リスクのない場所はない。中国はすぐ隣でアラが見えやすいので、リスク、リスクと言われている面がある。企業は、地球上のどこかで商売しないといけない。ではどこか。インドかアフリカか。中国は近いから、リスクがあっても、何かあった時に対応しやすい。僕はリスクよりも成長性を中国に感じて、やるという経営判断をした。可能性にかけた。


-- 出資額約6000億円という集中リスクもあるのでは。

岡藤 6000億円がゼロになるのなら集中リスクだが、そうではない。むしろ6000億円をいろいろな中国企業にバラバラに投資するよりも、まとまっているからマネジメントしやすい。しかも国営企業だ。

 CITICへの投資は、博打(ばくち)ではない。お金をキャッシュで持つか、優良資産という株で持つかの違いだけ。個人でも一緒。キャッシュで持っていても増えないが、株で持っていたら、今年だけで2割近く増えた。それに資源の投資などは、毀損する可能性があるが、これは株。しかもゼロになる株ではない。CITICのPBR(株価純資産倍率)は1倍を割っている。5年後の株価は2倍にはなる。取り込み利益は3年後に700億円だ。

 加えて、CITICの資産価値が上がる。最悪の場合、売ったらいい。国有企業で上場しているので、買いたい所はいくらでもある。今すぐに売りはしないが。このほか、CITICと組んで商売できるメリットもある。

 出資を発表した当初は、中国リスクのほか、CITICがどんな会社か分からないというわけで、マーケットが非常にネガティブに反応した。だが、徐々に理解されるようになってきている。


◇資源ブーム後の戦略がある


-- 18年3月期に純利益4000億円達成を目指している。

岡藤 目標を持つことは大事。各商社は資源ブームの後始末で、次の具体的な戦略が見えてこない。我々はその点、CITIC、CPと組むという新しい戦略の軸ができている。これは大きい。

 資産規模は、三井物産が当社の約1・5倍、三菱商事が約2倍と大きく違うが、まずは三井物産、次は三菱商事に挑戦する。順位が固定化していては、業界が活性化しない。


-- 16年3月期は、計画通りなら純利益で2位に浮上する。

岡藤 まだ2位と確定していないので、社員には油断するなと言っている。まずは予算を達成する。油価が上がるなどすれば、三井物産が上に行くかもしれない。それはそれで良い。逆に当社が予算を達成できず、負けるかもしれない。それはくやしい。純利益3300億円の計画を、どれだけ上ブレさせるかに集中する1年だ。「気持ちを引き締めよ」「その代わり、2位になったら余分に褒美を出す」と社員に言っている。

-- どれくらい上ブレしそう?

岡藤 分からないが、純利益3300億円の計画は、かなりコンサバ(保守的)に見ている。前提となる為替見通しも1㌦=115円で、他商社より円高じゃないかな。石炭、石油、鉄鉱石の値段も、他商社よりコンサバに見ている。既に今の実勢価格は、これを上回っている。だから、よほどのことがない限り達成できると思うが。伊藤忠は過去5年間、全部予算を達成している。これは見てほしい。


-- 株主還元については、どう考えているのか。

岡藤 これから1番大きなテーマになる。あまり大盤振る舞いすると後悔し、株主を裏切ることになる。経営者は自分が経営する時だけでなく、将来のことも考える。配当を減らすわけにはいかないから、よく考えてやらないと。でも中長期的に株主還元を増やすことは大事だ。

 ROE(株主資本利益率)は13%だから、他商社より高いのではないか。他商社は利益に比べ自己資本が大きいから、低くなるのだろう。だからと言って自社株買いをするのは、一時的には良いのだろうが、本来の目的から外れているのでは。分子を稼げないから、分母を少なくして、ROEを高めるというのはおかしい。本来の日本の株主はそうじゃなく、成長を長期的に見守って応援する。(資金を)成長に回し、成長することで株主還元するのが、本来の企業の姿だと思う。


-- 世界に良い投資先がないということでは。

岡藤 そう。だからこそ、CITIC、CPと組むことで、新しい可能性が開けた。組まなかったら、次はなかった。

 とは言え、一筋縄でいく相手ではない。CPは交渉相手をしょっちゅう変えるなどしてくるが、それらをうまく乗り切るのが交渉術。なんでも引き受けたら、えらいことになる。


◇果敢にチャレンジするのが商社


-- リーマン・ショック後で、成功した投資と失敗した投資はどれ?

岡藤 「失敗」と言うと、担当した人がかわいそう。「失敗」ではなく、「あまりうまくいってない」と言って。これからがある。1~2年目にダメでも、4年目に良くなった投資は、いくらでもある。ただ、どうやってもダメな投資もある。それを見極め、失敗をマネジメントし、乗り越えていくことが大切だ。

 サムソンに投資したのは、シェールブームの頃。皆が「シェール」と言っていた。当社のOBもシェールの記事が載った新聞の切り抜きを持って来て、「伊藤忠はやらないのか」と言ってきた。このシェールブームの中で、伊藤忠だけが頑なに「シェールは一切やらない」という選択肢はなかった。

「シェールに投資していなければよかった」とも言われるが、本当にそうなのか。たまたまサウジアラビアが減産しなかった。こんなの、誰が読めるか。経済学者でも分からない。だったら、やっぱり、やっておかないと。

 新しいビジネスを一切しなくなったら、縮小均衡する。従来の商売は、どんどんなくなっていくのだから、商社は新しい投資にチャレンジしないといけない。その投資は、2勝1敗ということもあるだろう。その中で、ちょっとでもプラスがあれば、成長につながる。マイナスだけを見て「失敗した」と言うべきではない。最終的に、どれだけ予算を達成して、右肩上がりになるかで判断したらいい。

 ただ、やはり当たれば、資源の方が(リターンは)大きい。怖いのは、会社全体がそういうマインドになってしまうこと。すごく大きい投資をしていると、小さい数字がバカらしくなる。大きくないと、相手にされないと思ってしまう。生活消費関連のビジネスは、そういった難しさもある。(聞き手・構成=中川美帆)

2015年

6月

16日

インタビュー:ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』筆者 

 ◇「人類が抱える21世紀の課題は病原菌ではなく地球資源の枯渇」


 1万3000年にわたる人類史や文明史を書いた世界的ベストセラー『銃・病原菌・鉄』(原題:“Guns, Germs, and Steel”)の筆者、ジャレド・ダイアモンド氏(77)。彼の目に、混沌とする現代社会はどう映っているのか。ロサンゼルスで話を聞いた。

(聞き手=土方細秩子・ロサンゼルス在住ジャーナリスト)


 ◇人類史から見る世界経済


── 1万3000年の人類史から見て、現代の経済状況をどのように見ることができるか。

■人類が文明を持ち生活し始めたのはおよそ5000年前。この5000年間、経済は多少のアップダウンはあっても常に右肩上がりで成長してきた。科学技術は日進月歩で進み、世界の人口も増加の一途をたどっている。現在の停滞は歴史から見れば一時的なもので、やがて世界経済はさらに上昇する可能性もある。

 しかしながら、現代に生きる私たちは非常に特殊な時代にいる。それは地球資源の枯渇に直面しているという点だ。石油は2050年にも枯渇すると考えられているし、森林や水など今後、不足が予想される資源はたくさんある。経済活動を支えてきたこうした資源がなくなった時、人類はどうなるだろうか。

 資源の枯渇を防ぐには、資源の確保が必要になる。その意味で日本は矛盾している。島国で資源の大半を輸入に頼る日本は、世界の資源を守るべき立場にいる。にもかかわらず、例えば、日本は世界中からマグロを買いあさっている。地中海のマグロを保護しようという動きが欧州であるが、日本はこれに反対している。マグロだけではないが、日本のような国こそが世界資源の保護に指導的な役割を果たすべきではないかと考えている。

── フランスの経済学者トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』が世界で話題になるなど、経済格差の議論が世界で巻き起こっている。教授は『銃・病原菌・鉄』で、「現代世界の不均衡を生みだした直接の要因は、西暦1500年時点における技術や政治構造の各大陸間の格差である。鋼鉄製の武器を持った帝国は、石器や木器で戦う部族を侵略し、征服して、滅ぼすことができた」と分析している。

■人間社会の格差というのは、資本主義が生まれるはるか以前から存在する。人間社会では、集団の数によって、そのなかの社会的な役割などが変化する。例えば、数十人の集団で狩猟生活を行うような場合、リーダーは存在するがそれは極めて弱いリーダーで、人々は協力しあって狩猟を行うので、それほどの格差は生まれない。しかし、これが数百人の集団となると、より強力なリーダーが生まれ、数千人になると、王様やそれに近い存在が出てくる。

 日本を例にとると、縄文時代には数十人の集団が狩猟生活を行っていた。しかし、弥生時代になり農業が始まり人口が劇的に増えると、社会的な格差が日本にも見られるようになった。弥生時代の墳墓に装飾品が埋葬されていることなどから見ると、権力者が確実に存在したことがわかる。いかなる社会でも富を持つものが社会の上層に位置する。…

2015年

6月

09日

全文掲載 編集長インタビュー 稲葉善治 ファナック社長 2016年6月16日特大号

 

 配当性向を引き上げるとともに、投資家との対話や関係を強化する姿勢を示したことで市場から好感されたファナック。方針転換の理由は。また、強さの秘密は。『週刊エコノミスト』6月16日号「2015年の経営者 編集長インタビュー」で紹介した稲葉善治社長のインタビュー全文を掲載します。


 ◇勝てるマーケットでしか勝負しない


―― 2015年3月期の業績は好調でした。

稲葉 15年3月期(が好調だったの)はスマートフォン(スマホ)の特需がありましたから。私どもはいつも最悪の状態を考えています。


―― スマホの特需の次にはどんな波が来ると考えていますか。

稲葉 私どもは一貫して60年間、同じことをずっとやっています。「製造業の自動化・ロボット化」に特化し企業活動を進めていくということです。その理由は、企業にとって健全な形で永続していくということが一番大事だと思っているからです。

 この永続性を確保するためには、勝ち続けなくてはいけないわけです。ですから、私どもは会社を大きくすることには興味はありません。要するに、永続性を確保するためには勝ち続けることが必要で、勝ち続けるためには企業体質を常に強化し、負けないような企業体質を実現していくということです。また、勝てるマーケットでしか勝負しない。

 製造業の自動化・ロボット化でしたら、絶対に勝てる。よく「これだけの技術があるのですから、どうしてサービスロボットやヒューマンロボットの分野に進出しないのですか」と聞かれますが、それは我々の分野ではない。勝てるチャンスもありますけれども、負けるリスクもあるわけです。我々の限られた経営資源を、研究開発にしても、分散させるということは、(企業として)弱くなってしまうということです。

 そういうわけで、我々は常に(経営資源を)絞り込んで企業活動をしているわけです。

 ですから、(次に)何かを狙うとかそういうことではなくて、地道に、とにかく製造業の自動化・ロボット化ということで企業活動を進めてきました。たまたまそこに、(15年3月期は)スマホの特需が飛び込んできたということです。我々も特需として見ていますから、社内では常にこの(スマホ特需によってかさ上げされた)数字を全部外した形で経営を進めています。

 

―― 今、ものづくりの新しい形として「インダストリー4.0」という流れがドイツを中心に出てきています。

稲葉 日本の提案で1987年にスタートした「IMSプログラム」は、国際プロジェクトでしたので当然ドイツも入っていましたが、(インダストリー4.0は)このIMSにITを加えた焼き直しですね。その中心人物の一人だったアーヘン工科大学のフリッツ・クロッケ先生がこの間(日本に)来られたので、「まさにIMSのITバージョンですね」という話をしたら、「definitely(確かに、その通り)」と即座に(答えていました)。

 

―― IMSは、簡単に言いますとどういったものですか。

稲葉 え、知らないのですか。こういうことを取材するのだったら…。経済を担当されていて知らないというのはちょっと不思議ですね。

 IMSは、吉川弘之先生(東京大学工学部長=当時)が提唱して1987年にスタートし、20年間続いた非常に大きな国際プロジェクトです(※編集部註=先進国のものづくりにおける共通課題の解決を目指して日米欧各国から1000以上の企業や研究機関が参加して勧められた国際共同研究プログラム。IMSは「インテリジェント・マニュファクチャリング・システム」の略)。今はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の製造科学技術センターが継続しています。

 

―― インダストリー4.0がこのIMSの焼き直しということでしたら、日本が先行しているということですね。

稲葉 そうです。私はそう認識しています。

 

―― 製造業の自動化・ロボット化をとにかく手掛けていくということでしたら、世界中のものづくりが御社にとっては対象になると捉えてよろしいですね。

稲葉 そうです。

 

―― ですから、スマホ特需に浮かれない、と。

稲葉 そうです。(スマホ需要も)とにかくビジネスチャンスですから、目の前に来た以上は全力で対応します。でも、長く続くものではないという認識です。残念ながら。もちろん、続いてほしいのですけれども、続かないものとして考えておかないといけない。

 

―― 一方で、自動車分野はこれからどんどん伸びていくわけですよね。

稲葉 もちろんです。特に(数値制御〈NC〉装置などの)「FA」、(産業用ロボットなどの)「ロボット」、(小型切削加工機や電動射出成形機などの)「ロボマシン」の3部門のうちのかなりの部分が自動車産業に育てていただいた気持ちでおりますし、これからも我々にとって一番重要なマーケットであり、お客様であると捉えています。

 ◇当たり前のことを当たり前にやる

 

―― ファナックの強さの源泉はどこにあると考えていますか。

稲葉 「当たり前のことを当たり前にやる」ことを徹底しています。これは簡単なようで意外と難しい。企業を健全な形で継続していく、永続性を確保していくということは、企業にとっては当たり前のことです。そのためには手を広げずに、製造業の自動化・ロボット化にターゲットを絞って、そこに経営資源を集中していくということです。

 企業を大きくすることに重点を置き過ぎると勢力が分散してしまうので、結局は弱くなってしまう。我々もエンジニアなので、好奇心は旺盛ですから、「あれもやってみたい」「これもやってみたい」という気持ちはもちろんありますけれども、それをいかに抑え込んで必要な分野に絞り込むか。気持ちとしては、「あれもやりたい」「これもやりたい」ことでいっぱいなのですけれども、あえてそこは全部殺しています。

 

―― 研究開発については常にやっていくということですよね。

稲葉 研究開発は基盤です。私どもの社員の3分の1は研究開発(を担当している)。これでも少なすぎると考えています。まず当面は、できれば半分まで研究開発の人員の割合を(引き上げたい)。

 

―― 強さのバックボーンには、日本が持っている部品産業や裾野産業もベースにありますか。

稲葉 もちろん、あります。私どもだけでできることではないですから。日本の半導体、それからいろいろな部品、電子部品。そして素形材。特にモーターは、電磁鋼板とか、磁石とか、素形材の力は非常に重要です。例えばグリス、潤滑油ですね。それからベアリング(軸受け)。そういった基礎的な技術が日本はどれをとっても世界最高レベルです。私どもはそうした技術に当然支えられているわけです。ナブテスコやハーモニック・ドライブ・システムズの減速機もそうですね。こういったものがもし、無かったら、我々も手も足も出ない。

 

―― こうしたものをオーガナイズして、きちっとしたロボットにできる力も、またありますよね。

稲葉 そこはそれに特化していますから。

 

―― 技術者魂というか、余計なことをせずに研究開発を地道にやってきていることがそこにつながるという。

稲葉 (同席した左隣りの山口賢治副社長を見ながら)あとは製造も。研究所と一体になって、設計段階から一緒になって、自動化しやすい商品を徹底し、工場も自動化を進めていく。

 もともと山口(副社長)も開発の出身です。とにかくそういった形で(社員の)ほとんどが研究開発の出身者で運営しているわけです。ですから、事務屋なんて本当に珍しい。(権田与志広副社長「希少です」。)ファナックにおいては少数派です。

 

―― 16年4月には栃木県壬生町に約1000億円を投じた新工場が竣工する計画です。

稲葉 やはりマーケットに対する供給責任があります。この(山梨県忍野村の)本社地区はほとんど拡張余地がありません。今はNC装置の月産能力が2万5000台ですが、ぎちぎちまで来ている。

 今後は、中国がさらに伸びると思います。インドもそれに遅れていますが、必ず中国と同じか、それ以上の巨大マーケットになると思います。それからさらに遅れますけれども、アフリカ、特に南アフリカですね。その周辺6カ国でアライアンスを組んでいるように、あのあたりの製造業は相当成長してくると考えています。

 私どもとしては、そういったところに対する供給責任があります。でも今日、明日ですぐに工場を稼働できるわけではありませんので、壬生町に新しいマーケットに対する供給能力を確保するための工場の建設を開始することにしました。

 今、国内に32工場がありますが、これが(当社の工場の)全てです。

 

―― 国内にこだわっているというのは、先ほど言った日本の裾野産業の素晴らしさもありますか。

稲葉 もちろん、我々にとってのインフラが素晴らしいですね。それから、私どもは民生品ではありませんので、生産ボリュームは自動車や家電に比べたら3桁くらい小さい。そのため「地産地消」にはそれほどこだわる必要がない。(一般消費者向けの)コンシューマー商品でしたらボリュームも大きいので、マーケットの近くで生産するのはごく自然なことだと思います。でも、私どもにはそれほどのボリュームがない。

 (生産拠点を)かえって分散してしまうと、オーバーヘッド(間接費)ばかり増えてしまいます。コスト的には不利になると考えています。

 

―― 国内に工場を作れば雇用も増えるし、経済も活性化します。一方で、為替の問題についてはどう考えていますか。

稲葉 安定してもらうのが一番ですが、常にリスクとして考えざるを得ないと思います。ユーロ・円は1ユーロ=130~140円、ドル・円は1㌦=120円前後が理想です。これ以上(円が)高いと苦しくなりますし、これ以上安いと反動が必ずありますので、これくらいで安定してくれればうれしいです。

 

―― 円高になっても、対応できる体力はある。

稲葉 常にそうしようとしています。

 

 ◇ROEにはこだわらない

 

―― 最近では、株主資本利益率(ROE)重視ということが盛んに言われていますが、「一つの基準で見るな、高ROEは過小資本の裏返しだ」と言う人もいます。

稲葉 ROEには必ずしもこだわってはいません。先ほど申し上げたように、長期的な永続性が株主にとって一番のメリットだと思っています。ROEを急に拡大したり、見掛け上の数字だけでわっと注目されたりするようなことは望んでいません。(ROEは)あくまで結果だというように考えています。

 今は(スマホの)特需でわっと利益が膨らみましたから、ROEが瞬間的に16%になりましたが、これはあくまでも結果です。注目してほしいのは、どんな最悪の環境になっても、しっかり利益を上げることができる体質、そしてどういった経済環境に対してもしっかり対応できる強力な財務基盤が確保されているかどうかということです。こういったものをぜひ見ていただきたいし、(外部に)説明もしているつもりです。

 内部留保、手元資金が1兆円ということが先に歩き出してしまうのですが、これは理論とかそういうもので(弾き出したもので)はなく、私どもとしては健全な形での永続性と、最悪の場合を常に想定して「何が来ても大丈夫」ということを考えての準備資金というか。ですから、(内部留保を)これ以上現時点で積み増す必要はないと考えています。

 そういうことで、株主還元も内部留保が増えないような形で検討を開始していますし、その上で将来の成長、もしくは、強い経済体質をさらに確実にするための投資活動に十分な資金を残せるというような方針で経営を進めてきました。

 その結果としてROEが皆さんに納得していただけるようなレベルにあれば、それはそれでいいことだというように考えています。

 

―― 例えば、「貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書の三つを見ているが、ROEは見ない」と言う経営者もいます。業態や経営によっても違いますよね。

稲葉 違います。それから会社の規模とか、対象とするマーケットによっても違います。ですから、それ(ROE)だけを注目していいのか、と。

 

―― 景気変動の影響を大きく受ける会社にとっては、キャッシュの準備は大事ですよね。

稲葉 常に。いつもそこ(景気変動の谷)に来ても、きちっと収益力を確保していく。そのためには、いろいろな手を打たなければいけない。その時になってどたばたしてもまずいわけです。

 

―― 4月27日には、利益に対する配当の割合を示す配当性向を30%から60%に引き上げ、16年3月期からの5年間で配当と自社株買いを合わせた総還元性向を平均80%に引き上げると表明しました。これは衝撃的で、ニューヨークの機関投資家の間でも「ファナックサプライズ」という言葉が出るくらい日本株を押し上げるムーブメントになっています。その直接のきっかけは。

稲葉 手元資金が1兆円近くになり、これ以上積み増す必要がないということと、それからやはり将来の投資に向けての資金を確保する必要がある。そのバランスを考えると、総還元性向を80%のレベルに持ってくると20%が手元に残るわけです。すると、年400億円くらい投資できる。我々の(会社の)規模では十分な(投資の)規模だろう、と。

 

―― しかも1兆円は確保できているわけですね。

稲葉 何かあった時に、例えばこの(スマホの)特需が来たときに、非常に速いスピードで生産設備を拡充しましたが、手元資金がなかったらできなかったわけです。

 

―― 配当性向を引き上げる決断は、米投資ファンドのサード・ポイントからの要望とは関係があるのですか。

稲葉 もともと内部留保がここまで来てしまっているので、対応しなければいけないということです。ただ、確認のために(保有株式の)上位20社を全部、山口(副社長)が中心になってインタビューしました。大筋の意見は、配当は大歓迎だということと、自社株買いはタイミングを見て、要するに、(株価が)高いときに買うのは愚かなことだという意見が大多数を占めていました。ですから、我々の方針も、ほとんどの株主の意向に沿っているなと確信を持っていたわけです。

 

―― 4月1日に「SR(シェアホルダー・リレーション)部」を作ったことも市場から評価されました。投資家の反応はいかがですか。

稲葉 これは山口(副社長)にお願いしたい。

(山口副社長「世間ではそれほどまだ一般的ではないようですが、機関投資家の方たちとも話し合いを始めたばかりです。このように対応することについては好意的に受け取ってもらっています。軒並み歓迎いただいて、という感触です」)

(権田副社長「ちょうど『コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)』もやっていますし」)

 

―― 社外取締役として、三菱重工の佃和夫相談役とエア・ウォーターの今井康夫社長を招聘した狙いは。

稲葉 もともとお付き合いもありましたし、役員会でも活発にいろいろなご意見を出してもらえると考えました。私どものように狭い分野のことしか知らない集団にとって、グローバルな広い知見を新しく得られるのではないか、と。二人とも人柄も素晴らしいですし。

 

―― 永続性を考えた場合に、例えば売上高営業利益率は絶対に4割を下回りたくないといったようなことなど、何か指標はありますか。こだわりというか。

稲葉 営業利益率は、実現は難しいけれども、不可能ではないというレベルを目標にしています。というのは、目的は企業体質を強化することですから。

 現在は(スマホの)特需があるから40%と言っていますが、実は以前は25%と言っていました。歴史的には25%が30%になったりしたこともあります。その時点の状況に合わせて目標を決めていますから、40%や35%というのは絶対的な数字ではありません。

 我々としては、「厳しいな」という数字を目標にしています。(数字を掲げる)目的は、体を鍛えるのと同じように、企業体質を強化することです。この目的を忘れてしまうと、単に利益ばかり追求したり、財テクに走ってしまったりしてろくなことにならない。

 

―― ファナックのような企業があって、それを支える裾野産業もある日本は、まだまだ大丈夫と安心する部分もありますが、日本のものづくりの将来についてどう見ていますか。

稲葉 日本にとって製造業で食べていくことが一番望ましい選択肢だと思います。資源もないわけですし。もちろん、農業の合理化も今後日本の将来にとって重要な課題だと思いますが。

 

―― ファナックの製品を一度使ったユーザーは、あまり他社製品には変えないと聞きます。10年後、20年後の償却時点で「次もやはりファナックの製品がいい」という形になるのが理想ではないですか。

稲葉 そう思っていただけるように。それが私どものゴールですから。

 

 ◇社員は強引にでも休ませたい

 

―― 社長も役員も、土日も辞さずに働くと聞いたことがあります。

稲葉 それは自慢することではありません。今後はむしろ強引にでも休ませようと思っています。

 

―― 従業員の皆さんに日ごろ伝えているメッセージはありますか。

稲葉 会社の仕事としては「指示待ち人間にならないように」と。我々は(社会の)歯車の一つですけれども、受動側ではなく、能動側に。要するに、「自分から動け」ということです。とにかく、「自分で考えて自分で動け」と。みんな優秀ですから、言ったことに対しては全然問題ないのですが、やはり優等生のお利口さんばかりでは企業としては全然使い物になりません。自分で考えて自分で動いて、そういった能動的な、ポジティブな考え方が必要だと思います。

 生活面では「濡れ落ち葉」にならないように、とにかく自分の人生を楽しめるような生活を送ってほしいと思います。家族も、もちろん自分自身もエンジョイできるものを持ってほしいと思っています。

(Interview 金山隆一・本誌編集長、構成=池田正史・編集部)