2013年

4月

09日

経営者:編集長インタビュー 井上高志 ネクスト社長 2013年4月9日号

◇不動産サイトの情報量、使いやすさで首位


 不動産情報のポータルサイト「HOME,S(ホームズ)」を運営する。掲載物件数は430万件と業界最多。使いやすさにもこだわり、訪問者数でもトップを走る。


── 家探しもネットの時代です。
井上 日本には、約5700万軒の家があるのに対して世帯数は5000万で、差し引き700万軒の家が何らかの形で余っています。そのうち空き部屋や売り家として情報が出てくるものが500万軒、残りの200万軒が別荘などです。500万軒分の情報を24時間、無料閲覧できるデータベースを作ろうと考え、1995年に創業しました。今では全国の不動産会社、約1万200社の物件情報を掲載しています。
── 不動産会社への課金を、掲載物件数ではなく問い合わせ数に応じたものに変えましたね。その理由は。
井上 不動産サイトは、物件情報を載せただけで料金を課す掲載型が一般的ですが、この方法では、不動産会社が100件の情報を持っていても、掲載は20~30件程度にとどまります。というのも、仮に掲載料が1件1000円なら100件で10万円ですが、すべてに問い合わせが来るとは限らないからです。すると店頭で決まりそうな物件や、逆に掲載しても決まりそうにない物件は外すようになる。売り手の都合で情報を出し入れすると、お客様は何を信じていいか分からないという、情報の非対称性が生じます。そこを変えたい、と創業以来考えていました。
 そこで、2011年1月から掲載は無制限にし、問い合わせが来て課金が発生する成果報酬型に変えたところ、150万~160万件程度だった物件数は、足元で430万件まで伸び、業界2位のサイト(約280万件)との差を大きく広げました。
── 料金体系は?
井上 問い合わせ1件ごとに、賃貸なら賃料の2~5・5%、売買なら物件価格の0・01~0・05%で、問い合わせ数が増えると課金料率は下がります。賃貸で5%の場合、都心の20万円の物件は1万円の課金ですが、地方の2万円の物件は1000円です。仲介手数料と同じ要領で、この方が全国の物件を網羅できます。このほかの費用は、システム利用料(月額1万円)だけです。
── サイト運営で重視する点は。
井上 ユーザーがサイトを選ぶ際の基準は、まず情報量、次に「ユーザビリティ(使いやすさ)」です。
 使いやすさを追求して、昨秋、10年ぶりにサイトをフルリニューアルし、賃貸や売買、新築や中古など種別で分けていたサイトを一つにしました。このリニューアルは、「SEO(サーチ・エンジン・オプティマイゼーション=検索エンジン最適化)」といい、グーグルなどで検索した際に上位に表示されるよう、検索エンジンが認識しやすいサイト構造にするためでもありました。
 ボタンの位置やサイズ、日本語の表現など数百項目について調整し、使いやすさでは、調査会社のランキングで、不動産サイト、全業種のスマートフォン向けサイトで1位、訪問者数でも1位を継続中です。
── 経営戦略は。
井上 いわゆる「マーケティングの4P」です。まず「Product(製品)」はサイトのフルリニューアルです。次に課金の変更で物件数が増えました。これは「Price(価格設定)」です。三つ目の「Promotion(販売促進)」は、売り上げの3分の1を投入してテレビCMや交通広告、イベントを展開し、当社サイトが物件数と使いやすさでナンバーワンであることを徹底的に訴えています。最後は「Placement(販売経路)」。新規開拓、既存客へのコンサルティング、地方の顧客への電話営業など、営業チームを取引先別の編成にしました。
 コンサルティングチームは、当社の膨大なデータを駆使して販促施策を提案します。例えば、小田急線の登戸駅から先はファミリータイプの反響がいいとか、東急田園都市線の池尻大橋駅から渋谷寄りはワンルームの引き合いしかないといったデータから、そのエリアで売り出すべき物件は何かを提案するわけです。

 ◇アジア全域を狙う

── 海外展開について。
井上 人口や経済成長率、ネット利用者数などを考慮して昨年、タイ、中国、インドネシア、台湾の4カ国に進出しました。現地向けの不動産サイトを展開しています。
 中期的に海外で20億~30億円を売り上げ、最終的にアジア全域、インドも含め30億人の市場を狙います。
── 新規事業も開拓しています。
井上 シニア市場や医療や環境、農業など成長分野への投資も考えています。アトピー疾患の人を対象にした携帯向け医療情報サイト「eQOL(イコール)スキンケア」などは、その一つです。
 中期的な戦略の柱は「データベース+コミュニケーション・アンド・コンシェルジュ・サービス」です。不動産をはじめ、さまざまな情報を集めた巨大データベースに基づき、一人一人に最適な情報を提案します。その強力なツールとして社内で研究を進めているのが「レコメンデーション(お勧め)・エンジン」です。例えば、どこでどんな家に住みたいか、数回検索を繰り返せば、500万件の中から理想の住まいを選び出します。人生で最も高い買い物になる家選びにこそ、コンシェルジュ(案内人)が必要になるはずですから。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=大堀達也・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A すでに社長でしたが、猛烈に働き、プライベートはありませんでした。20代の経験を、成果として出すのが30代だと思っていました。
Q 最近買ったもの
A ミラーレスカメラです。一眼レフはかさ張りますが、ミラーレスは、子供と出かけたときなど気軽に持ち運べるのがいいですね。
Q 休日の過ごし方
A 週に1回の休みは家族と過ごし、子供と遊ぶことが私の重要な役目です。
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 ■人物略歴
 ◇いのうえ・たかし
 1991年青山学院大学経済学部卒業後、リクルートコスモス(現・コスモイニシア)入社。95年に独立。97年ネクストを設立して社長に就任。2006年10月、東証マザーズ上場。10年3月、東証1部上場。44歳。