2013年

4月

16日

経営者:編集長インタビュー 松本晃 カルビー会長兼CEO  2013年4月16日特大号

◇利益率10%未満のビジネスはしない


 世界有数の企業ジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人を率いた経営手腕にカルビー創業家が期待。経営を託され、2011年3月、東証1部上場を果たした。

 

── CEO就任後、4期連続増収増益です。
松本 カルビーは日本のスナック市場4000億円の半分のシェアを占めながら、実はあまり儲かっていませんでした。
 ビジネスの基本は、品質、コスト管理、安定供給の三つをしっかりやることです。カルビーの品質は過剰なぐらい良くて、供給もしっかりやっている。そこでコスト管理をしっかりやって、もともと持っている力を発揮できるようにしただけです。

 ◇コストカットで業績アップ

── 具体的には。
松本 製造コストを、材料などの変動費、減価償却費、人件費などの固定費の三つに分けてそれぞれ削減しました。それまでは、工場や機械設備を余計に買い入れたため減価償却費が負担になっていたうえに、工場ごとに包装用フィルムを購入して、不要になると捨てるといったムダがあった。その結果、製造原価は業界2番手より13ポイント高い65%、減価償却費は7倍に達していました。
 非上場だったので「利益は少なくても良い商品を作ったらいい」「高くても売れる」という価値観の会社でした。ですが、この20年間で消費者の可処分所得は減り、ポテトチップスのシェアは75%から57%になった。そこでまずはコストを下げるため、材料は集中購買にして、工場の設備投資を削減。売値を下げる形ですべてお客様に還元しました。結果、工場の稼働率は上がり、営業利益率は1・4%から9%に改善しました。
── 急回復ですね。
松本 これで満足しているわけではありません。グローバル企業の利益率は15%なので、14年度には10%を達成したいと考えています。
── 工場を減らす考えは?
松本 ゼロから始めるなら国内に2工場あればいいのですが、企業は雇用に対して責任がある。しかし工場が多く、人も多いのも事実。問題を解決するには会社を大きくするしか手はないと社員に伝えています。

 09年に米ペプシコと資本・業務提携。ペプシコがカルビー株の20%を取得し、カルビーがペプシコ傘下のジャパンフリトレーを子会社化した。

── 提携の目的は?
松本 カルビーの目的は「憧れ」。ペプシコ側はより現実的です。世界戦略で日本だけがうまくいってない。カルビーと戦って損するより、取り込もうと考えたのでは、と思います。
── 米国でフリトレーブランドによる供給(OEM)を始めましたね。
松本 4月からです。海外進出をする際、まずは「ペプシコと一緒にやれないか」と検討することになります。米国での話はまとまりましたが、ペプシコは採算面で譲ることはないので、一緒に仕事をすることはあまり多くないかもしれません。欧米の企業は決めた利益率を1%でも下回る仕事はしないからです。ここが日本と欧米の企業の考え方の一番の違いです。日本企業は安易に儲からない仕事をやって利益率を下げてしまう。儲からないから税金を払わない。払わないから国が駄目になります。
── 儲からなくてもやらないと雇用が守れないと考えるのでは。
松本 やらなければ次のものが生み出せる。赤字でも安易にやるから、日本企業はだめになりました。
── ジャパンフリトレーの業績は。
松本 買収して3年間は経営に口を出さない主義ですが、この間に利益が減ったので、昨年4月から経営に首を突っ込みました。米国で開発した濃い味の商品を、そのまま日本市場に持ち込むという間違ったマーチャンダイジングを改めるように指示しました。

 ◇ビジネスで大事なこと

── 海外戦略は。
松本 どんどん攻めます。進出には三つの選択肢があります。自力、ペプシコと組む、現地パートナーと組む。自力は時間がかかるし、ペプシコとは経済的に難しいこともある。そのため、現地パートナーと組むことが今のところ多いです。必要なのは、お客さんが買ってくれる価格を実現するコスト管理と、失敗を恐れないスピードと現地化。原材料や機械設備は現地で調達し管理職、従業員も現地採用して分権する。そして現地の消費者の嗜好に合わせた商品を作ります。
── 利益が出ない仕事はしない?
松本 営業利益率で10%とれない仕事はやりません。ビジネスで大事なことは二つしかありません。「世のため人のため」と「儲ける」ことです。
── 国内市場は少子高齢化です。
松本 国内市場のパイはあと2~3年すればしぼんでいくでしょう。シェアアップを目指すしかありません。革新的な新商品を年2品出すよう指示しています。
── 円安の影響は?
松本 長期的には影響がないわけではありませんが、1ドル=100円ぐらいは日本経済全体にとってはちょうどいいのでは。そもそも、会社の経営は、円安など為替の影響を言い訳にはできません。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=望月麻紀・編集部)

 ◇横顔

 
Q 30代のころはどんなビジネスマンでしたか?
A 伊藤忠で仕事ばかり。米国、アジア、中東でフォークリフトと農業機械を担当し、39歳のときにヘルスケアの会社に出向しました。
Q 最近買ったもの
A 買い物に時間を使うのが嫌い。出張先のサンフランシスコ空港で、コーチの鞄を買いました。
Q 休日の過ごし方は
A 散歩がてらに2時間以上かけてコンビニ5軒、スーパー4軒を定点観測。平日に返信できなかったメールを整理後、ジムに行きます。
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 ■人物略歴
 ◇まつもと・あきら
 京都府出身。1972年京都大学農学部修士課程修了、伊藤忠商事入社。93年ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル(現ジョンソン・エンド・ジョンソン)入社、社長、最高顧問を歴任。08年カルビー社外取締役、09年6月より現職。65歳。