2013年

4月

16日

特集:食えない税理士・会計士 2013年4月16日特大号

◇供給増で大競争時代到来

◇税理士、公認会計士の憂鬱

 

秋本裕子

(編集部)

 

 公認会計士や税理士など、難関試験で知られ、人気も高かった職業に「異変」が起きている。


 例えば公認会計士業界。試験に合格しても監査法人に就職できない未就職者問題が社会問題化している。監査法人の採用者数は、ピークだった2007年(2442人)に比べ、11年は780人と3割程度の水準に落ち込んだ(図1)。未就職者率は10年に53・2%、11年に46・1%となり、半分前後が監査法人には就職できなかった計算になる。

 ◇大規模なリストラも

 監査法人の採用者数がピークだった07年は、大企業の内部統制強化や四半期報告制度への対応が見込まれたため、金融庁が合格者を大量に増やし、監査法人も採用を大幅に増やした時期だ。その反動に加え、08年のリーマン・ショックの影響で株式市場が低迷し、新規上場企業が減ったことも、その後の会計士の就職難に追い打ちをかけた。
 人がだぶついた監査法人は、新規採用を絞ると同時に、数百人単位での大量のリストラにも踏み切った。業界の厳しさを反映して、監査法人の新卒給与は現在、年収500万円程度。今でも一般企業に比べれば十分高いが、「初任給600万円、入社数年で1000万円も夢ではない」と言われた数年前に比べれば、大きく下がっている。
 こうして、どこにも就職できない「試験合格者」は現在、約600人に上る(日本公認会計士協会まとめ)。彼らはどこに職を求めるのか。一般企業の財務部門なども選択肢になるが、税理士法人・事務所に入り、税理士として働く道を選ぶケースも多いという。
 税理士法の規定では、公認会計士試験に合格すれば、無試験で税理士登録ができる。税理士法人や税理士事務所で実務経験を積めば、将来独立するノウハウも身につけられ、チャンスも広がる、というわけだ。
 だが、この動きには税理士業界が反発している。日本税理士会連合会は「税理士になることを目的に公認会計士試験を受ける人もいる」と指摘。この資格付与制度自体を廃止しようという動きを強めている。税理士が強く反発する背景には、「自分たちの仕事を奪われるのではないかという危機感も影響している」(関係者)ことは、想像に難くない。

 ◇企業減に直面する税理士

 その税理士業界も、取り巻く環境は厳しさを増している。
 日本税理士会連合会に登録している税理士は約7万2600人。毎年数百人単位で増加している(20ページ図2)。登録者数全体の内訳(12年3月末)でみると、試験合格者が45・9%、試験免除者(国税庁に23年以上勤務し一定の要件を満たした人など)が30・5%、公認会計士10・6%、弁護士0・6%などと、試験免除者が3割超を占める。さらに税理士の年代別構成比をみると、60~80歳代が51・6%と過半数を占める(同図3)。増加の要因は、国税庁OBで税理士になる人が多いこと。国税庁退職後に税理士事務所を開いて独立するケースも目立つという。
 税理士の収入源は、顧問先の中堅・中小企業からの毎月の顧問料、決算時に受け取る決算料、税務調査の際の立ち合い料が三本柱。だが、主要顧客であるその中小企業は縮小傾向にある。中小企業白書(11年)によると、平均開業率は06~09年に2・0%だった一方、廃業率は6・2%。廃業率が開業率を上回る状況が続き、先行きは厳しい。
 さらに、企業顧問料のディスカウントも追い打ちをかける。かつては「毎月入る顧問料は5万円程度が相場」(税理士)だったが、最近は1万円をうたう税理士事務所もあるほどだ。
 つまり、税理士の数は増えているのに顧問先企業は減り、そのうえ顧問料も下落している。競争が激化するのも当然だ。「自動的に入る顧問料に頼るだけでは生き残れなくなるかもしれない」(都内の税理士)と危機感を持つ税理士は多い。

 ◇資格学校にも異変

 業界のこうした厳しい状況は、資格取得学校の風景にも現れている。全国最大級の「TAC」(東京・千代田区)によると、公認会計士講座や税理士講座の受講生はここ数年、大きく減っている。
 中でも公認会計士は顕著だ。「今年の受講生は直近のピークだった3年前(09年)に比べて半減した」(同社)という。監査法人の採用減、未就職問題が顕在化するなか、大学生が資格取得を避けるようになったのは明らかだ。
 さらに、独立開業しやすいという魅力から、かつては社会人にも人気だった税理士講座の受講生も減少。同社は「不況で給料が減り、社会人が資金を資格取得のために回す余裕がないことや、開業しても競争が激しいため若者の人気が低下していることが影響している」とみている。
 逆に受講生が増えているのが公務員講座。公認会計士や税理士と反比例して増えているという。学生の一部は、将来不安から会計士や税理士の資格取得を早々と断念し、「不況に強い」とされる公務員への就職に流れている可能性がある。

 ◇変化の兆しも

 医師、弁護士と並び「三大国家資格」と言われる公認会計士。税理士も「難関国家資格」の上位に位置する資格であることに変わりはない。だが、いずれも昔ほどは「食えない」職業になっているのは、紛れもない事実だ。
 厳しい現状への危機感は大きく、業界も対策を取り始めている。公認会計士の未就職問題については、金融庁が合格者数を抑制して需給の改善を図っている。さらに、業界も一般企業への就職を斡旋するなど対策を取ったことで、未就職者は次第に減少傾向にある。それを受けて、TACでも「公認会計士講座への学生の問い合わせは昨年の3~4倍程度に増えている」という。税理士も、「e-Tax(国税電子申告・納税システム)の導入などネット化が進み、若者にはよりチャンスになる」とみる向きは多い。公認会計士も税理士も、成功すれば数千万円から1億円超の年収を得る人も少なくないだけに、学生や若者の人気が狙い通り回復するかが注目される。
 一般企業でもリストラが進み、グローバル競争が激化している昨今。「会計士、税理士業界も競争を免れず、これまで以上に実力、スキル、営業力などで勝ち負けがはっきりしてくる」(関係者)のは、当然の流れかもしれない。今後は会計士同士、税理士同士にとどまらず、会計士と税理士が入り乱れての競争が激化するのも、間違いなさそうだ。
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 税理士業界、公認会計士業界ではいま何が起きているのか。全2部に分けて特集する。