2013年

4月

23日

経営者:編集長インタビュー 篠辺修 全日本空輸社長 2013年4月23日号

◇持ち株会社化で経営判断早める

 

 全日本空輸(ANA)は4月、持ち株会社(HD)制に移行し、傘下にANAのほか、LCC(ローコストキャリア)のエアアジア・ジャパンとピーチ・アビエーション(連結対象外)、アジア・リゾート路線を担うエアージャパンなどの事業会社がぶら下がる新体制をスタートした。整備士出身の篠辺氏は、HD発足に伴い中核事業会社の全日空社長に就任した。


── HD化の狙いは。
篠辺 まず、経営の判断を早め、事業会社の自立性を高める狙いがあります。グループ内の小規模会社は自立して物事を決めにくかったり、連結対象なので収益性が見えにくい側面がありました。収益性をはっきりさせれば、競争力があるかないかがより鮮明になり、有望な会社への投資もしやすくなります。
 その他はLCCです。ANAとLCCはビジネスモデルが違うのに、グループにLCCがあると事業計画に口出ししがちです。LCCの独立性を担保することが狙いです。
── ANAと、エアアジアやピーチとのすみ分けはどうしますか。
篠辺 ANAはエコノミーやビジネスなど四つのクラス別サービスとマイレージがあり、飛行機の遅延や運休の際には内容に応じて対応できるフルサービスキャリアです。LCCとはまったく違います。ANAはフルサービスキャリアで1番を、ピーチやエアアジアはLCCで1番を目指すことで、両者ともに成長のチャンスがあります。
── 国内の路線戦略上、不採算路線はどうしますか。
篠辺 基本はハブ空港、つまり国内では羽田、伊丹、名古屋、福岡、札幌、千歳、仙台などを中心にネットワークを作る考え方です。仙台─東京は新幹線との競合上飛ばしていませんが、仙台から名古屋、伊丹、福岡、札幌などへは相当な便数があり、今後も小型機でつなぐことで利便性を確保します。当社は、ネットワークが便利だと評価されています。採算性だけでなく、ネットワークの効果も合わせて総合的に見る必要があります。
── 海外戦略は。
篠辺 「スターアライアンス」(航空連合)に加盟していますから、米国ではユナイテッド航空、欧州ではルフトハンザドイツ航空のハブ空港を活用します。海外のハブ空港では、乗客は降りる人より乗り継ぐ人が多いんです。例えば東京─米シカゴ線では多くの乗客がさらに他都市に飛びます。欧州でもルフトハンザのハブである独フランクフルト空港やミュンヘン空港を使い、そこから乗客を他都市に誘導できるようネットワークを組み立てるのが基本です。
 東南アジアや中国など、成長力があるところと結ぶことも戦略です。東南アジアから米国に行く人には、ANAで成田や羽田を経由し、米国内ではユナイテッド航空を使ってもらうというように、ネットワークで接続することで選んでいただくのが国際線の考え方です。
── ボーイング(B)787のバッテリー問題で、運航計画に影響を受けました。
篠辺 787は1月の事象まで1年3カ月間飛びましたが、B777と遜色のない評判をお客様から頂いていました。今後、ボーイング社による対策で問題がないことが当局に証明されれば再び飛べますが、従来と同様に点検していけば大きな問題は出ないと思います。実績を積み、安全性も理解してもらえるよう努めます。

 ◇787毎朝点検で安心担保

── 乗客には不安が残るのではないですか。
篠辺 これらはあくまで案ですが、毎朝点検するポイントを増やすのも一つの策です。また、同じ路線で787と別の機種を並存させ、お客様に選んでもらえるようにすることも考えられます。
── 収益への影響は。
篠辺 ボーイングにはすでに補償について話し合いになると伝えてあります。実際に飛べる状態になった時点で精査して、交渉していくことになります。
── ライバルの日本航空(JAL)が経営再建し、再上場しました。
篠辺 当社はJALの会社更正法適用に当たり、警鐘を鳴らしていました。JALの再建計画では営業利益目標は757億円でしたが、実際は破綻後2年で2000億円まで拡大しました。政府による優遇措置が大きいと思います。当社は努力して成長し、生き残ってきたわけで、これが公平公正な競争環境と言えるのでしょうか。
── 改革したいことは。
篠辺 成功の秘訣は「最初に始めること」。例えば航空自由化を受けて2000年、「超割」という5割引き運賃をいち早く出し、顧客取り込みに成功しました。また、ピーチは11年に関西でスタートしましたが、関西には他にLCCがないことも後押しし好調でした。後発は市場の評価の高いものを選んで投資すればリスクは小さいですが、先駆者と比べると市場が限られてしまうので、先に知恵を絞る風土を作ります。
 また、サービスの改善にも手をつけます。例えば毎年、台風で飛行機が遅れ、同じようなクレームをいただいている実態があります。来年はお客様への迷惑度を今年に比べてどのように減らすかを議論し、改善につなげることが大事。できるだけ数字で「見える化」したいと思っています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=秋本裕子・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 技術部のスタッフが長く、B767の受領検査員としてフライトテストに立ち会ったこともあります。大変貴重な体験でした。
Q 最近買ったもの
A ネクタイです。当社カラーの青系を中心に買いそろえました。
Q 休日の過ごし方
A 天気が良ければ夏冬はジョギング、春秋はウオーキング。残りは音楽を聴きながら読書をしたり買い物をして過ごします。
………………………………………………………………………………………………………
 ■人物略歴
 ◇しのべ・おさむ
 東京都出身。早稲田大学理工学部卒業後、1976年全日空入社。2003年整備本部技術部長、07年ボーイング787導入プロジェクト長、08年整備本部長、12年副社長執行役員などを経て、13年4月から現職。60歳。