2013年

4月

30日

特集:投資大全 2013年4月30日・5月7日合併号

◇第1部 どっちが得? 株vs為替

◇変動幅狙うなら今は株 更なる円安見込めばFX

 

緒方欽一/花谷美枝

(編集部)

 

 「億り人(おくりびと)」──。保有資産が1億円を超える個人投資家を指すインターネット上の用語だ。野田佳彦前首相が衆院解散を表明した昨年11月14日を起点とすると、日経平均株価は8664円から一時1万3568円をつけるまで約4900円上昇。ドル・円相場も1ドル=79円台から100円をうかがうところまできた。この円安・株高の流れに乗って「億り人」を目指す人々が続出している。

 

 まずは株。元証券会社勤務で現在は専業投資家、投資歴20年超の“億り人の先達”に儲けの極意を聞いてみた。
「ブラックマンデー(1987年10月)、9・11(2001年9月)、リーマン・ショック(08年9月)……。『ショック』とつくような株価暴落は9月から11月に起こる。自分は11月末に買って4月から5月にかけて売る」。それだけで今回のアベノミクス相場にも上手く乗れたというのだ。
 銘柄については、株価が低迷している低位株や、株価が足元で2倍ほど上昇して勢いがついている株を選ぶのが基本と話す。その投資スタイルは意外なほどシンプルだった。
 こうした中期的なスタンスに基づく投資とは別に、日々の激しい値動きを収益機会として捉える投資手法も人気だ。例えば個人投資家の間で、株価の大きな変動が注目されている不動産ファンド運営会社のケネディクスの場合、4月2日は4万3550円から5万4500円と20%以上も動いた。その他の日も平均10%近くの変動率となっている。
 こうした株を一日に何度も売買するデイトレードと呼ばれる手法が個人投資家の間で活発。特に、今年1月から信用取引の保証金に関する規制が緩和され、手持ちの現金以上の大きな取引が頻繁にできるようになったのが大きい。
 一方、為替への投資はどうか。元手の何倍までの取引ができるかというレバレッジ倍率は外国為替証拠金取引(FX)の場合、最大25倍である。株の3・3倍と比べるとはるかに高い。逆方向に動けば大きな損失を被るが、資金的に許容できる適度なレバレッジをかけ、円安の流れに乗って儲けたという話はよく耳にする。
 4月以降のドル・円相場の日中変動率は0・9~4・0%となっている。FX市場で、「ミセス・ワタナベ」と呼ばれる日本の個人投資家は、この変動率を狙い、レバレッジをかけて一日以内の超短期取引を何回も繰り返すスタイルだ。
 もちろん、為替への投資はFXだけではなく、外貨預金や外債(外国政府などが発行する債券)などもある。これらは長期に保有して為替差益や比較的高い利子を狙うもの。円安がさらに進むなら利益を期待できる。

 ◇分かれる見方

 さて、どちらの市場に投資するか。「今の相場トレンドに乗って投資するなら、間違いなく為替」と断言するのは、ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真代表取締役。菊池氏は主に投資顧問会社で日本株運用を担当してきた経験を持つ。
 菊池氏の見立ては「期待先行で株高が進んできたので、これからは売られる銘柄が多くなり、日経平均は1万2500円程度まで調整する」。
 その後は、7月末の参院選を視野に政府の景気テコ入れと日銀の追加緩和で値を戻すが、やがて円安の弊害である輸入物価の上昇と、企業業績への恩恵が期待ほどではないことが明らかになり、株価は下落を始める可能性が高いと見ている。
 一方、為替相場は、「一時的に円高に戻っても時間が味方してくれる」と話す。米国景気の回復が確認され、米国の金融緩和の終わりが意識され始める10月以降、100円超の円安へ進んでいくとの見通しだ。
 逆に、為替相場を見通すのは難しいという意見もある。「むしろ企業の業績をしっかり分析し、将来性のある銘柄に投資した方がよい。株価が2倍、3倍に上がることは珍しくなく、数年で10倍になった銘柄はいくつもある。それに対して、円が2倍、3倍と安くなることはまずない」(証券業界のベテラン記者)。
 長期の株式運用スタンスを貫いてきた独立系ファンド「さわかみ投信」の澤上篤人会長も同様の意見だ。自身のブログで、日本が期待するような一方的な円安が進むとは限らないとしたうえで、「為替がどうなろうと、個々の企業の経営は続く。やるべきことをやっていた企業は、円安で収益力を大いに高めているはず」と指摘。「相場追いかけ型の投資家」との違いを見せると自信をのぞかせる。
 2大投資先と言える株と為替。自分なりの相場感を確立したうえで投資に望むのが賢明だ。