2013年

4月

16日

ワシントンDC 2013年4月16日特大号

◇米連邦最高裁で初審理

◇「同性婚認めず」は違憲か

 

今村卓

(丸紅米国会社ワシントン事務所長) 


 米連邦最高裁が3月26日、同性結婚を認めない法律の合憲性について初となる審理を始めた。米国内では同性婚を巡って激しい論争が続いているだけに、最高裁の口頭弁論が行われた同日と翌27日には裁判所周辺で数千人がデモを行い、主要メディアは連日、弁論の内容をトップで大きく取り上げた。

 

 

 最高裁が取り上げたのは、結婚は男女間に限ると定めたカリフォルニア州法(プロポジション8)と、配偶者控除や相続税の優遇措置などの権利を同性婚のカップルには与えないとする連邦法の婚姻擁護法。カリフォルニア州法は2008年の同州住民投票の結果に基づいて成立、婚姻擁護法はクリントン政権下で1996年に成立した。


 2件の判決は6月に言い渡される見通し。2日間の弁論の内容からみて、婚姻擁護法は婚姻について定めるのは各州の権限であるとして違憲判断が下される可能性が高いと思われる。一方のカリフォルニア州法は同じく違憲判断との見方もある。ただ、判決を左右する可能性の高いケネディ判事が「成立から5年程度で判断するには材料不足」と懸念を示したこともあり、慎重な判決にとどまる可能性が高そうである。


 もっとも現在の世論は支持派が多数を占めている。CBSテレビの26日発表の世論調査によれば、同性婚合法化への支持は53%に達し、反対の39%を大幅に上回った。年齢が若いほど支持が多いという特徴があり、65歳以上の高齢者の支持はわずか3分の1強だが、18〜29歳では73%と圧倒的である。ビジネス界をみても、大手278社が婚姻擁護法により事業の効率が阻害されているとして同法改正を求める訴えに署名するなど、過去にない動きがある。


 合法化支持は身近な同性愛者への共感が大きな要因となり増えている。一方の反対派は結婚と出産を結びつける伝統的な考えだが、出産の約4割が婚姻外という現状では説得力を欠き、低迷気味である。現在、合法化されているのはニューヨークなど9つの州と首都ワシントン。世論の支持拡大のモメンタムは強く、新たに合法化に踏み切る州が増えそうだ。


 ◇苦悩の共和党


 世論の支持拡大を前にして、苦悩を深めているのが共和党である。


 昨年の大統領選で敗れ、その後の支持率が伸び悩む共和党の党勢回復には、若年層の取り込みが欠かせない。このような現状では、同党も合法化に理解を示すのは不可避の選択である。実際、合法化支持に転向する共和党の現職議員は徐々に増えている。逆に声高に反対する同党幹部は見当たらない。


 しかし、民主党支持者の61%、無党派層の53%が同性婚合法化を支持しているのに対して、共和党支持者では25%にとどまる。同党内で一定の影響力を保つ社会保守派とその有力者は合法化に強硬に反対していることから、このままでは深刻な党内対立が生じる恐れも否定できない。共和党内には、党内の不毛な論争を回避するには、いっそのこと最高裁が2件とも違憲判断を下してくれる方がよいという声さえあるほどだ。


 一方、社会において同性婚を巡る議論が熟していない段階で最高裁が司法判断を下せば、かえって激しい対立を煽りかねないと懸念する声もある。73年の中絶容認の最高裁判決が先例で、妊娠中絶が国論を二分する最大の社会問題の一つとなってしまった遠因との指摘もある。


 確かに同性婚合法化に反対する人々も、先の世論調査では約4割近くおり決して少なくはない。最高裁はどのような判断を示すか。6月の判決が大いに注目される。