2013年

4月

23日

ワシントンDC 2013年4月23日号

◇新エネルギー長官は「ガス派」

◇LNG輸出の追い風になるか

 

須内康史

(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)

 

 オバマ大統領は、政権2期目のエネルギー省の長官にマサチューセッツ工科大学(MIT)教授のアーネスト・モニツ氏を指名した。議会承認を経て就任する。モニツ氏は原子物理学者で、現長官のチュー氏と2代続けての科学者長官となる。

 

 ノーベル賞も受賞したチュー氏が学者畑一筋であったのに対し、モニツ氏はクリントン政権時代にホワイトハウスの科学技術局次長とエネルギー省次官を歴任。ワシントンでの政権勤務の経験も持ち合わせている。


 モニツ氏は、「低炭素社会」実現を掲げ、その有効な手段として原子力利用を推奨する学者として知られる。同時に、天然ガスを「低炭素社会への懸け橋」とし、向こう数十年間で最も重要なエネルギー源と位置付けるガス推進派でもある。


 同氏が座長を務め、2011年に発表したMITの報告書「天然ガスの未来(The Future of Natural Gas)」では、シェールガス開発・利用の推奨を明確に打ち出している。シェールガス開発の水圧破砕法に反対する一部の環境団体からは指名を批判する反応もみられるが、ワシントンではモニツ氏が持つ幅広い見識を評価し、総じて好意的だ。

 

 注目されるのは液化天然ガス(LNG)の輸出許可に与える影響だ。先述のMIT報告書は、「米国は天然ガス輸出入の障壁を設けるべきではない」と勧告している。さらに天然ガス輸出は、米国と世界経済にとって利益があると同時に、供給源の多様化と有事への対応力を高め安全保障にも寄与するとして、輸出拡大を支持している。


 ◇輸出を巡り賛否両論


 LNG輸出を巡っては、昨年12月にエネルギー省の委託を受けた第三者機関が、「輸出が米国に経済的利益をもたらす」との報告書をまとめた。同報告書の発表後、2月25日まで2次にわたるパブリックコメントが受け付けられた。そこでは、ガス開発が主要産業である各州の選出議員・業界団体などからの賛成意見と、環境団体なども含めた反対意見が入り交じっている。


 反対派のワイデン上院議員は、輸出に伴う需給逼迫を原因としたエネルギー価格の上昇が国内消費者に及ぼす影響について分析が不十分である等、「報告書には複数の欠陥がある」とのコメントを提出した。エネルギー消費量が多い鉄鋼等の業界団体は、「(現状の)国内のエネルギー価格低下が国内製造業の再生に寄与しているメリットを十分に反映していない」とコメントしている。


 一方で、賛成意見には、「LNGの輸出規制は自由貿易を推進する米国の立場及び世界貿易機関(WTO)の理念に逆行する」「経済的利益のみならず地政学的な観点からもLNG輸出は米国に利益をもたらす」等の指摘が見られる。その他、賛成派には、ワイオミング州選出のバラッソ上院議員他14人の議員が超党派法案を提出するといった動きも出ている。この法案は、日本を含む米国の主要な同盟国へのLNG輸出申請について、自由貿易協定締結国と同等に扱い、許可を与えることを目的とするものだ。


 賛否両論の意見が見られるなか、エネルギー省の代表(次官補代行)は最近行われた下院の公聴会において、今は報告書に寄せられたパブリックコメントの確認をしている段階であり、今後のスケジュールを明示できる段階にはないと発言している。輸出許可を巡る審査の動向が気になるところだが、指名を受けたモニツ氏が天然ガス輸出を支持している点は追い風と見られる。今後の進展を期待したい。