2013年

4月

30日

ワシントンDC 2013年4月30日・5月7日合併号

◇ケネディ元大統領長女

◇次期駐日大使報道の喧噪

 

及川正也

(毎日新聞北米総局長)

 

 アメリカの栄光と悲劇を象徴する名門「ケネディ家」の動向は、今なお関心が高い。最近もケネディ元大統領の長女で作家のキャロラインさん(55)の「次期駐日米大使」報道が過熱し、賛否が巻き起こった。今年はケネディ暗殺から50年。「ケネディ駐日大使」の最終決定は下されていないが、議論は百花繚乱の様相だ。

 

 3月末の『ワシントン・ポスト』(ウェブ版)をきっかけに米メディアが一斉に報じ、「近く発表」との見方もあって盛り上がった。外務官僚が主流の日本と違い、米国では大統領の有力支援者が主要国の大使に指名されるケースが多い。大統領選直後で支援や資金で貢献度の高かった人への論功行賞的な側面もある。2008年大統領選では、元大統領の末弟エドワード・ケネディ上院議員とともにオバマ氏の強力な支援者となった。今回の大使話もオバマ氏が推しているという。


 キャロラインさんも民主党リベラル派を代表するケネディ家の血統を引くが、1963年11月の父の暗殺、99年の弟ケネディ・ジュニアの自家用飛行機操縦中の墜落事故死、09年のエドワード氏の病死を経て、かつての輝きは失せた。父の暗殺後、母ジャクリーンさんとニューヨークに移り住み、メトロポリタン美術館在職中に出会ったデザイン会社経営のシュロスバーグ氏と結婚、3児をもうけた。表舞台に出ずひっそりとした暮らしを続けてきた。


 ◇反対派からは痛烈な皮肉


 そんな彼女を後押しするのは、「ケネディ=アメリカ」というイメージでとらえる支持者たちだ。ブルームバーグ・ニューヨーク市長の側近は、『ワシントン・ポスト』に「彼女はいつも米国を代表する“偉大な大使”だった。アジアで日本が米国にとっていかに重要な同盟国かを印象づけることになる」とコメント。一家の繁栄の基礎を築いた祖父ジョセフ氏が駐英大使だったことを引用し、「外交の血筋」を強調する論調もある。CNNテレビは「初の女性駐日大使」となり、「女性の権利では後進の日本」に大きな影響を与えることができるだろう、と指摘している。


 一方、反対派は手厳しい。下院外交委員会に所属する共和党の知日派、ローラバッカー議員は、新聞報道が4月1日だったことから「エープリルフールの冗談かと思った」と皮肉り、日米同盟の重要性に触れて「経験のない人にはできない」と切り捨てた。実際、北朝鮮の核・ミサイル問題や領土に絡む日中、日韓関係など課題が山積している。


 歴代の駐日大使は、ライシャワー氏やアマコスト氏ら日本専門家だったり、マンスフィールド、モンデール、フォーリー、ベーカー各氏ら議会の重鎮が中心。米経済戦略研究所のプレストウィッツ代表は『フォーリン・ポリシー』誌に「ライシャワー氏に始まる駐日大使の地位をおとしめるだけ」と痛烈だ。


 キャロラインさんは08年大統領選後、上院議員(ニューヨーク州)から国務長官に転身したヒラリー・クリントン氏の後任の上院議員への意欲を示したが、米紙のインタビューで、言葉が見つからないときによく使う「you know」を連発。公的な仕事にふさわしくない、などの批判が出て、断念した経緯がある。


 現職のルース大使は東日本大震災後、日米草の根交流を深める「トモダチ・イニシアチブ」を立ち上げ、一定の成果を残している。キャロラインさんはケネディ家の威光復活に一役買えるか。4月12日現在、当の本人は米メディアに「私は本当に何がどうなっているかわからないのよ」と煙に巻くだけで、本音を明かしていない。