2013年

5月

14日

経営者:編集長インタビュー 吉田和正 インテル(日本法人)社長 2013年5月14日特大号

◇日本の成功事例を海外に

 

── パソコン事業では、2011年から提唱する薄型軽量のノートブックパソコン「ウルトラブック(Ultra-book)」を各社と推進しています。吉田 日本のノートブック市場で全体の11%まで伸び、一般消費者にも間違いなく受け入れられています。薄くて軽量で高性能、電池の駆動時間も長く、価格も求めやすくなっていますから、パソコンを買う時、ウルトラブックを選ぶのは自然です。 また、画面を裏返しにするとタブレット端末になりタッチ操作ができるモデル、画面を取り外しても使えるモデルなどたくさんの製品が出てきています。今後はジェスチャー(身振り)認識や音声入力機能なども搭載させ、タッチせずにゲームやインターネットができるように進化させます。

 

── インテルのどういう技術によって「薄くて軽量」が実現できているのですか。吉田 例えば、私たちが作るプロセッサー(演算処理装置)の発熱量が劇的に下がりました。以前は大きなファン(送風機)を内蔵させてパソコンを冷やす必要がありましたが、今では、非常に小さなファンだけでよく、今年出てくるものはファンがいりません。低電力消費は、この5年くらいの大きな研究テーマでした。 また、半導体の特徴である集積度を高めていくことで、半導体全体のサイズが小さくなれば、薄くて軽いパソコンが実現します。── 一方、スマートフォンやタブレット端末用のプロセッサー市場には12年に参入。出遅れ感があります。吉田 我々にはそういう気持ちは全くありません。イノベーション(技術革新)にはある程度時間がかかりますし、インテルが必ずしもすべての分野で先行できるわけではありませんから。ただ今の電話は、音声端末からコンピューティング(情報処理)する端末になりました。この分野はインテルの得意分野なので、インテルのアーキテクチャー(基本設計)が使えます。すでに電話にもタブレット端末にもインテルのプロセッサーが入っていますので、2、3年後には、スマホやタブレットでも、インテルのブランド力が相当高まっているでしょう。── インテルらしさをどう出しますか。吉田 処理能力が速い、サクサク使えるということを意識しています。動画やグラフィックスもサクサク見えるようにする。ユーザーは相当使いやすくなるはずです。── インテルのプロセッサー搭載のスマホは、新興国や欧州など現在世界20カ国で販売されています。日本での発売予定は?吉田 時期は明確ではありませんが、早期の製品展開を目指しています。使った瞬間にインテルの製品だと思われるようなものを作りたいと思っています。


 ◇日本から世界へ

 

 本体のインテルコーポレーションは、12年通期の売上高が前期比1・2%減、営業利益は同16%減、純利益は同15%減で減収減益だった。13年第1四半期も、売上高は前期比7%減、営業利益も同20%減で同様の傾向が続く。
── グローバルの売り上げに占める日本法人の比率は。吉田 平均して、グローバルの10%あたりで推移しています。── 日本のインテルはどこまでが守備範囲ですか。吉田 一番の仕事は日本市場、そして、日本企業の世界展開の支援です。インテルの技術や製品、サービスを使えば、そのままグローバル標準ですからグローバル展開できます。世界中のインテルのリソース(企業資源)を使えますので、お客様と世界のかけ橋となることができます。── 日本市場の特徴をどう評価していますか。吉田 日本のIT(情報技術)インフラは常に優れています。通信網を例に取ると、地デジ、光ファイバー通信、高速無線通信のLTEやWiMAXなど、こんなに環境が揃っている国は世界にほとんどありません。これらのITは少子高齢化、省エネ、医療費問題など日本が抱える様々な課題にフルに活用できます。また、その成功事例を海外に展開していけます。「課題先進国」を逆手に取る戦略です。今の日本の通信インフラは、比較的オープンな環境で国際標準がベースなので、同じ環境を持つ国にはスムーズに適用できます。

 

 ◇新規事業に積極投資

 

── グローバルでは、12年通期のパソコン事業の売り上げが前年同期比3%減の半面、データセンター向けは同6%増と伸びています。吉田 サーバー用のプロセッサーは、「XEON(ジーオン)」というブランドを扱っています。それだけではなく、ビッグデータの取り扱いを最適化するソフトウエアやサービスをはじめ、ビッグデータ活用に最適化したアーキテクチャーとアプリケーション(応用ソフト)を統合して提案しています。 また、ここ2年は8000億~1兆円規模の投資をしています。売上高5兆円弱の会社がこれだけ使っているわけですから、大変なチャレンジです。日本でも、自分たちの技術と自動車関連などのパートナー企業で新しい付加価値を作り、様々な製品、サービスの高性能化と低コスト化を実現すべく製品開発を進めていきます。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=谷口健・編集部)

 

 ◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか?

A アメリカでプロセッサーの「ペンティアム」の立ち上げの仕事をがむしゃらにこなしていました。

Q 最近買ったもの

A 知人である中田龍三氏の「RYUZO NAKATA」というブランドのジャケットを買いました。グレーと青をベースにした色合いで、斬新なデザインがとても気に入っています。

Q 休日の過ごし方

A 美術館や舞台に足を運ぶことが多いです。スポーツは、ゴルフとテニス。音楽は聴くことはもちろん演奏することも好きで、休みの日にはギターを弾いています。

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 ■人物略歴

 ◇よしだ・かずまさ

 1982年米コロラド西州立大学卒業。84年インテルコーポレーションに入社。インテル通信製品事業本部長などを経て、2003年から現職。04年からインテルコーポレーションのセールス&マーケティング統括本部副社長を兼任。54歳。