2013年

4月

23日

学者に聞け!視点争点 2013年4月23日号

◇アベノミクスと高橋財政

◇高橋財政の負の経験を受け継ぐな

 

井手英策

(慶応義塾大学経済学部教授)

 

 最近、アベノミクスと高橋財政を比較する議論をよく見かける。確かに両者には、公共事業による需要創出、大胆な金融緩和、円安による輸出振興と類似点が多い。


 だが私は、この議論に否定的だ。そもそもアベノミクスが戦前と同様の素朴なケインズ政策なら、なぜ反ケインズ主義の「レーガノミクス」と同じ語呂の名称を与えて、これに注目するのだろうか。また、処方箋は効果だけでなく、副作用も見なければならないが、高橋財政の失敗に目を向けようとする論者はほとんどいない。そこで今回は、高橋財政の限界に光を当てつつ、「アベノミクス」で予想される問題を逆照射してみたい。

 ◇失敗の経験に学ぶべき

 高橋財政とは、高橋是清蔵相の行った独創的な経済政策の総称である。高橋は就任早々、金本位制度を停止し、発券制度の改革を行って、事実上の管理通貨制度へと通貨制度を移行させた。これを軸に日銀引き受けによる財源調達を開始し、軍事費と公共事業費を柱とする大胆な景気刺激策、さらには為替統制による円安誘導、輸出振興に乗り出していった。………