2013年

4月

30日

学者に聞け!視点争点 2013年4月30日・5月7日合併号

◇「期待」に働きかけた日銀の大転換

◇過去の金融政策と明らかに決別

 

浅田統一郎

(中央大学経済学部教授)

 

 日銀は4月4日、新たな金融緩和策として「量的・質的金融緩和」の導入を発表した。年率2%のインフレ目標の達成期間を、従来のような「できるだけ早期に」というあいまいな表現ではなく、「2年程度の期間を念頭に置く」と明示するなど、これまでの日銀の金融政策とは明らかに決別している。日本でもようやく「人々の期待(予想)に働きかける」金融政策への転換が図られたのであり、15年間続いたデフレからの脱却の道筋を内外に示したことを高く評価したい。


 金融政策はかつて「神秘のベールに包まれていたほうがよい」という考え方が支配的だった。中央銀行の政策を人々にあらかじめ読まれてしまうと、その政策効果が減殺されてしまうという懸念からである。しかし、これはあくまで裁量的な政策を採用した場合の帰結でしかなく、このような考え方は2000年代に入って急速に陳腐化した。それでも、日銀はデフレが続いていた過去15年間、速水優氏、福井俊彦氏、白川方明氏と3代続いた生え抜き総裁の下で、かたくなに旧態依然とした金融政策のスタンスを守り続けていたのである。
 こうした考え方に代わって現在、各国の中央銀行で主流となっているのが、金融政策の具体的な指針を数値目標として掲げ、その達成方法と期限、効果を明確かつ分かりやすい言葉で人々に語ることによって「人々の期待に働きかける」政策である。その背景には、人々がその時点で得られる情報に基づき、将来を合理的に予想して行動するという「合理的期待」の理論的発展が大きく作用している。米連邦準備制度理事会(FRB)の副議長(1994年6月~96年1月)を務めたマクロ経済学者のアラン・ブラインダーは、この認識の大転換を中央銀行の「静かなる革命」と形容した。………