2013年

5月

21日

闘論席 2013年5月21日号

片山杜秀

(評論家)

 

 第一次世界大戦開戦から来年で100年。1914年から18年まで続いた。参戦国の国民は兵士や労働者に総動員された。勝つためにはなりふりかまわず。化学工業に秀でたドイツは毒ガスを使った。細菌兵器の研究にも各国で拍車がかかった。敵国に伝染病をはやらせようというのである。ところが、いくら頑張っても決着がつかない。参戦国は音を上げ始めた。大国ロシアは革命騒ぎで脱落した。

 ドイツも限界に近づいた。18年春、残る戦力を結集し、最後の大攻勢に賭けた。パリの目前に迫った。しかし力尽きた。理由の一つは「スペイン風邪」と呼ばれた新型インフルエンザ。細菌兵器ではない。自然発生した。兵員の1割が倒れ、戦力激減。ドイツは敗れた。
 流行の条件は整っていた。何しろ国民総動員。戦場、工場、兵営、病院。人間が史上空前の過密度でひしめいた。ウイルス繁殖には格好の環境。ドイツ軍のみならず英仏米軍にもはやった。全世界への爆発的感染につながった。第一次世界大戦の戦死者は約1000万。スペイン風邪による病死者は、近年の研究では約4000万ともいう。日本での死者は約50万。………