2013年

5月

21日

ワシントンDC 2013年5月21日号

◇緊迫感を欠く財政協議

◇先送りの末に腰砕けか

 

今村卓

(丸紅米国会社ワシントン事務所長)

 

 オバマ政権・民主党と共和党の財政赤字削減を巡る議論は、緊迫感を欠いたまま、平行線が続きそうだ。協議は先送りの末、腰砕けになる可能性もある。

 

 米議会の財政協議は、3月下旬に上下両院がそれぞれ予算の大枠を示す予算決議案を可決。現在は両院の統一案をまとめる両院協議会の開催を巡って、上院を制する民主党と下院を制する共和党の間で駆け引きが続いている。
 共和党提案の下院案は、社会保障関連費を中心とした大幅な歳出削減によって、10年間で財政赤字の解消を目指す。対する民主党提案の上院案は、富裕層増税と国防費など歳出削減を組み合わせて財政赤字を1兆8500億ドル削減する内容。当然のように民主党は下院案の社会保障関連費の大幅削減に、共和党は上院案の富裕層増税に強く反発している。
 民主党は両院協議会の開催を呼び掛けている。しかし、共和党はそれを拒み続けている。いったん協議会に参加してしまうと、富裕層増税を支持する世論から批判を受ける恐れがある。かといって、富裕層増税を回避できなければ、党支持者の失望と反発を招くことは必至。どちらを選んでもダメージは大きい。
 両院協議会が開催されない以上、財政協議の次のヤマ場となるのが連邦政府の債務上限引き上げのタイミングだ。今年2月に議会は、連邦政府の債務残高が法で定めた上限額の16兆4000億ドルに達した後も、5月18日までは国債の元利払い等に必要な資金の借り入れを政府に認めるとともに、その借り入れ分だけ法定上限を引き上げるという法律を成立させた。これはいわば応急処置で、8月中には上限引き上げが必要になるとの見方が一般的だった。
 だが、最近になって、政府の新規借り入れは想定以上に少なく、上限引き上げが必要になる時期は10月にずれ込むとの見方が強まっている。借り入れ減の要因の一つは、財政赤字の予想以上の減少だ。安定した景気回復が続いたことで税収が想定以上に増えた半面、歳出は3月からの予想外の強制削減発動によって減っている。
 加えて、住宅金融公社から政府が受け取る配当金が膨らんでいる。住宅市場の回復でファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の収益が大幅に改善した。この2社は今年から最低資本金以外の資本剰余金をすべて政府に配当金として支払うことになったため、政府は多額の配当金を受け取ることになった。

 ◇奇妙な安心感

 債務上限の引き上げが10月にずれ込めば、議会の財政協議自体が停滞に向かうと考えられる。9月には議会の最大の関心事が2014年秋の中間選挙に移ってしまうからだ。それを待たずして、財政協議に向けた関心低下の兆候は表れている。
 歳出の強制削減に伴う航空関連の連邦職員や管制官らの一時解雇が4月下旬から始まると、全米の主要空港では発着便の遅延や欠航など大きな混乱が生じた。それを受けた上院議会では、空港管制塔の円滑な運営に必要な予算を確保する関連法案が全会一致で可決された。遅延発生からわずか4日後のことである。
 航空関連の混乱の影響は確かに大きい。とはいえ、歳出強制削減を発動させた論理との矛盾は大きい。背景には、財政赤字削減が進んでいるという安心感もあるとみるべきだ。そもそも増税や社会保障削減など痛みを伴う財政再建策は有権者に不人気で、政党側はインセンティブが低下しやすい。民主・共和両党による包括的財政合意の実現は相当難しいと言わざるを得ないだろう。