2013年

6月

04日

ワシントンDC 2013年6月4日号

◇オバマが再度挑戦するグアンタナモ収容所の閉鎖

 

及川正也

(毎日新聞北米総局長)

 

 キューバのグアンタナモ米海軍基地にある拘束者収容所の閉鎖問題が再浮上している。同収容所はブッシュ前政権時代、テロ疑惑を持たれた人物への「拷問」施設として国際的な批判を浴びた。オバマ大統領が2008年の大統領選で、閉鎖を最大の政権公約の一つとしながら、連邦議会の反対で頓挫した経緯がある。

 

同収容所は01年の同時多発テロ後、アフガニスタンでの対テロ戦争で拘束した国際テロ組織アルカイダ兵ら「敵の戦闘員」を収容する目的で02年1月に開設。しかし、戦時捕虜の保護を定めたジュネーブ条約を適用せず、拷問が行われるなど国内外で批判が噴出した。
 オバマ氏は09年1月の就任直後に「1年以内の閉鎖」を命じる大統領令に署名。同12月にはイリノイ州立刑務所を代替施設にする方針を表明した。ところが、議会が地元の反対やテロ再発を懸念して強く反発。さらに、民間航空機の爆破テロ未遂事件が発生し閉鎖反対論が拡大。オバマ氏もついに公約達成を断念した。
「グアンタナモはアメリカの安全を守るにあたって、必要な施設ではないことを理解すべきだ。費用は高くつくうえに効率が悪い。我が国の国際的評価を傷つけ、対テロ政策で同盟国との連携を低下させる。(反米感情をあおって)過激派を集めさせる道具になっている。閉鎖するべきだ。私はもう一度この問題に取り組む」
 2期目が始まって100日目にあたる4月30日の記者会見。オバマ氏はグアンタナモに対する「悪評」を並べ立て、閉鎖方針を強調した。


 ◇求心力回復も狙い?


 きっかけとなったのが、2月から続く拘束者の大規模なハンガーストライキだ。米メディアによると、規則の変更で厳しい検査が始まったことへの抗議とされる。「イスラム教の聖典コーランを手荒に扱った」との指摘もある。ハンストには166人の拘束者のうち100人が参加。衰弱した5人が病院で手当てを受け、21人はチューブで流動食を注入されているという。事態を重視した米海軍は4月下旬、約40人の看護師らを派遣し、対応にあたらせている。
 専門家によると、ハンストの背景には長期間の拘束に対する収容者らの「絶望感」もある。司法省は10年に拘束者のうち86人は送還に問題がないと判断したが、議会が予算措置をせず、留め置かれたままだ。4月には2件の自殺未遂事件もあったといい、オバマ政権にとっても喫緊の課題だ。
 オバマ氏は前回の教訓を踏まえ、今回は議会承認を必要としない「行政措置」を検討する考えを表明。専門官を指名し、送還作業を加速させたい考えという。米メディアによると、86人のうち、アルカイダの拠点があるイエメン出身者56人を除く拘束者の送還を実現できないか再検証するという。
 閉鎖方針の表明には、求心力低下に歯止めをかけたいオバマ政権の思惑も透けて見える。小学校での乱射殺害事件を受けオバマ氏が提起した銃規制強化法案が、世論の約9割の支持を得ながら議会の反対で廃案に追い込まれた直後だったからだ。「グアンタナモ閉鎖」の未達成も公約違反の最たるものとされ、汚名返上へと打って出たともいえる。
 しかし、形勢は不利だ。昨年9月のリビアの米領事館襲撃事件でもグアンタナモ元拘束者の関与が指摘された。今年4月にはボストンマラソンを狙った連続爆破テロも起きた。テロへの恐怖から米国は抜け切れていない。
 議会からは早くも「超党派で反対が出てくる」と牽制する発言が聞かれ、前途多難だ。