2013年

6月

11日

ワシントンDC 2013年6月11日号

◇予期せぬ三つのスキャンダル オバマ大統領に吹く逆風

堂ノ脇伸
(米国住友商事会社ワシントン事務所長)

 多くの犠牲者が出た4月のボストン・マラソンでの爆破テロ事件は、移民法改正法案の審議にも水を差した。米議会上院における銃規制強化法案の否決に続き苦しい政権運営を強いられるオバマ大統領だが、さらに5月に入ってからは、政権維持にさえ影響しかねない新たな三つのスキャンダルが噴出した。

 一つ目は、昨年9月の在リビア米領事館襲撃事件において、当初よりアルカイダ系テロ組織の関与の可能性が強いとCIA(米中央情報局)が指摘していたにもかかわらず、ホワイトハウスと国務省が結託してこれを隠蔽していたのではないかという疑惑だ。事件発生は大統領選挙期間の真っ只中。オバマ氏は、アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者の殺害を自身の功績と挙げていた。意図的にテロ組織関与の可能性を公表しなかったのではないかとの疑惑が浮上している。
 二つ目は昨年の2カ月間、米司法省がAP通信の複数のオフィスや記者らの通話記録の収集を行っていた事実。エリック・ホルダー司法長官は事実を認めたうえで、「非常に深刻な情報漏洩があり米国民が危険にさらされた。その情報源を探るために必要な措置であった」と弁明している。同通信の記事の情報源を巡って捜査が行われていたことを一部政府関係者も認めているが、AP通信は「自由な取材活動に対する重大な侵害である」とする抗議の書簡を司法省に送っている。
 そして三つ目は、米内国歳入庁(IRS)が、民主党にとって政敵にあたる保守系政治団体を対象に意図的に税審査を厳格化していたというスキャンダルだ。IRSは「ティーパーティー(茶会)」や「愛国者」という名称がつく団体に対して過去、税審査を厳格化した事実を認めているが、これが誰の指示に基づくものであったのかは明らかにされていない。

 ◇攻勢強める共和党

 議会共和党はこれらを機に政権への攻勢を強めている。次期共和党大統領候補指名獲得争いへの出馬が目されているランド・ポール上院議員は「一連の事件をみればオバマ政権が権力を濫用していることは明らかだ」と指摘。特に在リビア米領事館襲撃事件に関し、当時国務長官の職にあったヒラリー・クリントン氏に狙いを定め、「もはや同氏は大統領となる資格はない」と切り捨てている。
 ホワイトハウス側も矢継ぎ早の対応を行っている。同事件については直後の政府内のやりとりを示す資料を公開し「共和党はこの事件を政治利用しているだけだ」と強く反発。残る二つの事件についても大統領の関与を否定したうえで、かつて廃案になった「メディア保護法案」の再提出の支持を表明しながら、大統領自らが「報道の自由の擁護者」であるとの立場を強調。さらにはIRS事件では、スティーブン・ミラー長官代行を解任するなど、負のイメージの払拭に躍起になっている。
 いずれの事件も今後真実は議会での公聴会等を通じて徐々に明らかになっていくであろう。だが、ホワイトハウスにとっては予期せぬスキャンダルの噴出で対立する共和党に対し格好の攻撃材料を与えてしまった。メディアも連日これらを取り上げている。米CNNテレビによればIRSは今や「I'm Really Sorry」の略だそうだ。
 財政赤字削減を巡る与野党協議や移民法改正法案を重要課題として挙げるオバマ政権にとっては、当面はダメージコントロールに注力せねばならない。第2期政権1年目の重要な時期、逆風の中での政権運営を余儀なくされそうだ。