2013年

6月

18日

特集:中国・韓国の悲鳴 2013年6月18日特大号

◇不動産高騰、円安の“空襲” 日本の金融緩和に不満噴出

 

桐山友一
(編集部)

「中国が不動産価格を抑制できないのは、円安のせいだ」──思わぬ批判が日本に向けられている。

上昇ピッチを上げている中国の不動産価格と、対ドルで進行する円安。この二つの現象は昨秋以降、トレンドがほぼ一致する(図1)。

 中国国家統計局が5月18日に発表した4月の70都市の新築住宅販売価格は、68都市で前年同月比で上昇し、広州市(広東省)や北京市など上昇率が2ケタを超えた都市もある。ニッセイ基礎研究所がこのデータを基に70都市平均の価格を推計した指数(2006年12月=100)は、昨年10月ごろから顕著な上昇トレンドを描いている。今年4月の70都市平均の指数は、134・75と過去最高値を更新した。

 一方、ドル・円相場は昨年9月、1ドル=77円台の円高水準を記録した後、安倍晋三政権の発足に伴って急速に円安が進行。日銀の超金融緩和も受け、今年5月には一時1ドル=103円台を付けた。

 これがなぜ中国の不動産上昇の原因になるのか。それはだぶついたマネーが中国へ流れ込んでいる可能性があるからだ。中国は人民元の管理変動相場制を採用し、ドルを中心に1日当たりの変動幅を制限している。ただでさえ対ドルで低い水準に維持されている人民元相場。だぶつく円を売って人民元に投資しておけば、将来に人民元が切り上がることでさらに高い収益を期待できる。

 不動産価格の上昇とは裏腹に、中国景気は足踏みを続けている。中国の今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、前年同期比7・7%増と前期(12年10~12月期)の7・9%から鈍化。12年1~3月期の8・1%を最後に、4四半期連続で8%を下回る状況が続いている。中国の製造業の景況感を示す製造業購買担当者指数(PMI)も、5月は50・8と景気拡大・縮小の分岐点の50を上回ったものの、力強さを欠いている。

 景気動向とかけ離れた不動産価格を懸念する中国政府は、今年3月に不動産価格抑制策「国五条」を発表した。個人が住宅を売却する際、譲渡益に対して20%を課税する方針などを打ち出し、上昇を続ける不動産価格に神経をとがらせている。にもかかわらず、上昇が止まらない。

 こうした状況にいらだちを募らせたためか、5月にインドで開かれたアジア開発銀行(ADB)の年次総会では、中国政府高官がアベノミクスについて「金融政策が構造改革に取って代わるべきではない」と不快感を示す発言も伝わった。中国経済に詳しい元経産官僚でコンサルタントの津上俊哉氏は「中国政府は過剰な資本の流入に相当頭を悩ませている」と指摘する。

 不動産バブルの膨張を許せば、崩壊時に中国経済が被るダメージは多大なものになる。また、ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎・上席主任研究員は「不動産価格の上昇は低所得者層の不満を高め、くすぶる格差問題に火を付けかねない」と指摘する。もはや2ケタ成長は望めなくなったはずの中国で、ひとり上昇を続ける不動産価格が危うさを増幅している。

 ◇「砂上の楼閣」

「『砂上の楼閣』のようだ」──。パリで5月に開催された経済協力開発機構(OECD)の閣僚会議。出席した韓国の玄〓錫(ヒョンオソク)経済副首相兼企画財政相はこう述べ、日本の金融緩和を批判した。日本の実体経済の改善につながらないばかりか、韓国を含む周辺国の為替相場を不安定にしかねないという懸念だ。対円で急激に進んだウォン高に対し、韓国メディアでは「円安空襲」というキーワードが頻繁に躍る。

 ウォン安をテコに輸出を拡大し、経済成長を続けてきた韓国。10年以降はGDPに占める輸出の割合が5割を超えるほど、依存度を大きく高めている。特に円に対するウォン安は、自動車や鉄鋼など日本企業と直接競合する分野で競争力の向上につながっていた。しかし、昨年6月に一時1円=15ウォン台のウォン安水準を付けていた対円相場は、今年5月に1円=10ウォン台にまでウォン高が進行。韓国が輸出競争力を失うのではないかという懸念が高まっている。現代経済研究院は、1ドル=100円になれば韓国の総輸出は3・4%減少、1ドル=110円の場合には11・4%減少すると試算した。

 一方で、輸出に偏重した経済構造は、大きな転換を迫られている。米マッキンゼーが今年4月発表したリポートでは、住宅ローンや教育費負担の重さが家計の疲弊をもたらし、1990年に人口の75・4%を占めていた中所得層が10年には67・5%へ減少したと指摘。その結果として「OECD加盟国で自殺率が最も高い」などと弊害を挙げ、輸出主導で遂げた奇跡的な成長はもはや機能しなくなっていると分析した。

 高い成長を続けた中国、韓国経済がそろって行き詰まりをみせている。両国が直面する課題を追った。