2013年

6月

25日

ワシントンDC 2013年6月25日号

◇ガス純輸出国への第一歩か 米国がLNG輸出を承認

須内康史
(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)

 米エネルギー省は5月17日、フリーポート社が申請していた米国産天然ガスの自由貿易協定(FTA)未締結国向け輸出を承認すると発表した。テキサス州フリーポート市に建設する液化天然ガス(LNG)基地からの輸出が計画されており、日本企業がLNG調達の契約を締結している。今回の承認は米国から日本に向けたLNG輸出の道を開くこととなる。


 エネルギー省の輸出承認書は100ページを上回る詳細なものとなった。20万件に及ぶパブリックコメントを分類して、それぞれにつきエネルギー省の分析結果を述べたうえで結論を示しており、慎重な審査を行った結果であることがうかがえる。

 承認書では、これまでエネルギー省が手掛けてきた二つの報告書(エネルギー情報局報告書及び第三者機関NERA報告書)の分析結果は妥当で、本プロジェクトの輸出承認が公共の利益にかなうことを裏付けるものであると分析。フリーポートからの輸出が米国経済に利益をもたらし、公共の利益にかなうと結論付けている。

 米国内では、いまだLNG輸出に対して批判的な声も多い。反対派のワイデン上院議員は、承認発表後に声明を出し、個別案件ごとの承認審査は望ましいやり方であるとしたうえで、「LNG輸出が市場に与える影響を常に精査していくべき」とコメント。石油化学大手のダウ・ケミカルは、エネルギー省の審査方法を支持しつつも「天然ガスを国内で使用する価値は燃料として輸出する価値を上回る」との見解を示した。

 ◇国際貿易上でも便益

 一方、エネルギー省は、今回の承認が将来の他の事例に対して何らの決定を与えるものではないとし、今後も案件別の審査を継続する旨表明した。それゆえ、今後も輸出承認申請については個別に慎重な審査となるとみられるが、エネルギー省が今回の承認書の中で、国際貿易上の便益やエネルギー安全保障の観点に新たに言及した点には注目したい。

 承認書は、民間部門の輸出能力増強を推進するオバマ政権の「国家輸出戦略」との整合性、米国の国際的な自由貿易へのコミットメント、さらに米同盟国のエネルギー安全保障の観点に言及し、これらの点からもLNGの輸出承認が米国の公共の利益に資すると位置付けている。これまで二つの報告書が取り上げてきた米国内の経済的利益に加えて、LNG輸出が米国の通商・外交政策や利益に合致することを示した格好だ。

 4月には、ドニロン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、米国の天然ガス供給の増加がオバマ政権の外交政策の強化に資することに言及しており、LNG輸出が地政学的な役割を果たすとのホワイトハウスの認識を示したと受け止められている。

 また、今回の承認発表に先立ち、オバマ大統領は、中米訪問時に「米国は2020年には天然ガスの純輸出国になっているであろう」と発言。さらに、天然ガス輸出に前向きなモニツ氏がエネルギー省の長官に就任し、その翌日に今回の輸出承認が発表された。当地の報道ぶりでは、こうした動きがいずれもオバマ政権のLNG輸出支持の表れだと解釈されている。

 フリーポートLNG基地は、08年に輸入基地として建設されたが、「シェール革命」を受けて輸出基地とする計画で、輸入から輸出へと転ずる米国天然ガスの構造変化を象徴するような事業だ。前述のとおり後続のLNG輸出案件の審査は個別に慎重に進められていくとみられるものの、後年振り返った時、今回の輸出承認が米国のLNG純輸出国への転換点になっているのかもしれない。