2013年

6月

25日

経営者:編集長インタビュー 月岡隆 出光興産次期社長 2013年6月25日号

◇北米とベトナムのビッグプロジェクト加速

── シェールガス革命の経営へのインパクトは?
月岡 北米のシェールガスについて約3年前から調査を進めていたら、米国で大量のシェールガスが産出し始めたことでカナダから米国向けに輸出する天然ガスが減少していることが分かった。行き場を求めているカナダのガスを日本に持ってこようと、提携先を探るなかでアルタガス社との出会いがありました。同社のパイプライン網を利用すれば、カナダから天然ガスを有利に輸入できる。2017年をメドに年間200万トンのLNG(液化天然ガス)を日本向けに輸出・販売する予定です。

シェールガス革命は化学業界にもインパクトを与えている。石油化学製品の基礎原料となるエチレンは、通常はナフサ(粗製ガソリン)を原料に製造するが、シェールガスのような軽質ガスを原料にすると、ナフサ由来のプラントに比べ、圧倒的にコスト競争力が上がる。

── 三井物産と共同で米国でアルファ・オレフィン事業を始める。
月岡 ダウ・ケミカルが軽質ガスを利用した150万トンのエチレン製造装置を建設するので、そのエチレンを原料とした化学製品のプロジェクトに参画しようというものです。16年から年産33万トンでの稼働を計画しています。

── ダウ・ケミカルが出光と組むメリットは?
月岡 アルファ・オレフィンの用途は、ポリエチレンなど合成樹脂の添加剤、洗剤、高機能潤滑油、製紙用薬剤など多岐にわたり、今後も安定的な成長が見込まれます。ただし、アルファ・オレフィンを製造できるのは、世界でもシェルや当社など4社に限られており、ダウ・ケミカルは当社を必要としたわけです。

 

 当社としても、ダウ・ケミカルから安価な原料調達が期待できる。天然ガス価格が足元の価格4ドルであれば、ナフサ由来のエチレンを原料としたときと比べて3分の1のコストで製造できます。

 ガスの基本は地産地消。LNGにして日本に輸入するとなると、とても4ドルでは調達できません。産地で付加価値をつけた化学製品で競争するのがベストです。

── 北米のほかにベトナム・ニソン製油所への投資も決定しました。
月岡 ベトナムは今後成長が期待できる国ですし、ミャンマー、タイ、マレーシアなどと経済圏として一体化しています。また、ベトナム国内での石油製品の販売権も得ることができました。

 このプロジェクトのメンバーは、ペトロベトナムとKPC(クウェート国営石油会社)で、産油国が入っていることがポイントです。日本のような資源小国はエネルギーセキュリティー上、海外プロジェクトで産油国と組むことが望まれます。

 ◇国内基盤の再構築

── 中期経営計画(13~15年度)では、12年度で28%の営業利益の海外比率が50%になる計画です。
月岡 資源事業が大きく貢献します。石油ガス開発は12年度は合計で日量2万5000バレルの生産を行いましたが、15年度には日量4万4000バレルまで伸長します。石炭事業は、中国の需要減などで足元は赤字ですが、コスト削減などで黒字化の見通しです。ベトナムのニソン製油所や北米のLNG・石油化学事業は、今の経営計画には含んでいないので、16年度以降、海外比率はさらに高まるでしょう。

── 中長期的には、国内外の比率が逆転しそうですね。
月岡 そうかもしれません。ただ国内事業はまだ大きな存在感を持っています。実際、石油精製は、12年度の営業利益1107億円のうち729億円を占めます。中野社長は、販売に強いということで私にバトンを渡した。ここに、国内事業を強化してほしいというメッセージがあります。国内の収益基盤があってこそ、海外展開ができるわけですから。

 国内では石油精製品の超過供給の状態が続いていますが、単純に生産能力の削減を繰り返すだけでは、国内のエネルギーサプライチェーンはズタズタになります。今年2月にJX日鉱日石エネルギーと石油製品供給で協力関係を結び、14年に徳山製油所の石油精製機能を停止しても、西日本に問題なく供給できる体制ができました。JX日鉱日石エネルギーも室蘭製油所の石油精製機能を停止させますが、こちらは当社の北海道製油所から供給します。

 

 それぞれの会社単独で解決できる問題は限られていて、さらなる再編や、国際コスト競争力のある石油精製・石油化学コンビナートの最適配置のあり方が議論されなくてはなりません。給油所も、セルフ化の推進など、新たな施策を打つ場合、全国一律戦略でやってきましたが、地域ごとのニーズに合った販売戦略を徹底して、販売ネットワークの維持を図りたい。

── 出光の歴史をどう継承し、新しい道筋をつけますか。
月岡 創業100周年の翌年(12年)に創業者・出光佐三をモデルにした百田尚樹さんの小説『海賊とよばれた男』が出版され、社員全員が「自分に薄く、人のために尽くす」という経営理念を再確認し、会社に誇りを持てた。私も事業を通じてこの理念を表現していきたいですね。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=内田誠吾・編集部)

 ◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 大型タンカー(VLCC)の配船をしていました。ロンドン、ニューヨークのマーケットが開くのを待って、タンカーを確保した後、原油を購入し確保したタンカーにはめ込む。世界には、自分のタイミングに合わないものを調整する機能があることを知り、マーケットの本質を理解できました。
Q 最近買ったもの
A 孫の初節句の兜とゴルフウエアです。
Q 休日の過ごし方
A ゴルフ、ウオーキング、タウンウオッチングなどを楽しんでいます。
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 ■人物略歴
 ◇つきおか・たかし
  1975年慶応義塾大学法学部卒業後、出光興産入社。主に販売畑を歩き、2007年執行役員需給部長。09年取締役。常務執行役員経営企画部長などを経て12年代表取締役副社長。6月27日に社長就任予定。62歳。