2013年

7月

02日

経営者:編集長インタビュー 宮島大祐 ケネディクス社長 2013年7月2日特大号

◇再び運用資産拡大に乗り出す

 1995年設立、日本の不動産証券化市場の黎明期から不動産ファンドビジネスを展開してきた。現在、グループ全体で3銘柄のJ─REIT(不動産投資信託)と私募不動産ファンドを運用している。リーマン・ショック後の財務体質改善の時期を経て、攻めの姿勢に転じている。

── 3月に社長に就任しました。今後の成長戦略をどう描きますか。

宮島 中期経営計画では、現在約1兆1000億円規模の預かり資産残高を3年以内に1兆4000億円にする目標を掲げました。再開した自己勘定投資の収益寄与にも期待しています。運用力強化のため、関連会社を集約して運用のプラットフォームを統合し、経営資源を有効活用する組織改正も進めていきます。

── リーマン・ショック後の落ち込みからどのように立て直しを図ってきましたか。

宮島 当社はアセットマネジメント会社なので、追求すべきは投資家の利益の最大化であり、自ら不動産を取得・転売することは主の業務ではありません。しかし、リーマン・ショック以前は、不動産ファンド市場の規模が小さかったため、ファンド組成のために当社が一時的に不動産を取得する必要がありました。そしていつしかキャピタルゲイン(値上がり益)のために不要な資産まで持つようになってしまっていた。そこは大きく反省しています。

 現在は、預かり資産残高の拡大により、ファンドが不動産を直接買えるようになるとともに、ファンドからの報酬で従業員に給料を払えるようになってきました。また、投資上の判断やリスク管理を行う専門部署を新設して自己勘定投資の全責任を持たせるなど、資産運用業務の足場固めを進めています。

── 債務の状況は。

宮島 完全に落ち着きました。自己資本比率は40%前後、デット・エクイティ・レシオ(有利子負債の自己資本に対する比率)は1・2程度ですから、これ以上無理して財務を強化する必要はないと考えています。

── 長期金利の上昇リスクをどう見ていますか。

宮島 金利低下局面の最終フェーズが終わりかけていて、今後、金利は上がっていくと予想しています。金利の上昇は借り入れコストの増大につながるので短期的にはネガティブです。一方で、不動産はインフレに強い資産なので、インフレに即した金利上昇である限り、中長期的にはポジティブだと認識しています。

 我々のポートフォリオは5%くらいのNOI(純収益)があって、借り入れコストは1%くらいですから、うろたえる段階ではありません。長期固定での資金調達を増やすなど、短期的な金利変動で大きな影響を受けないように対策はしています。

 ◇中型ビルの市場を開拓

── オフィス、商業、住宅と幅広く投資していますが、強みは。

宮島 特定の企業に属さない独立系であることです。幅広く取引先の案件を比較したうえでベストな資産を選択して投資できます。特にオフィスは中型に特化していることが特徴です。大型ビルを対象とする大手デベロッパー系のREITやファンドとは違ったセグメントで運用しています。中型ビルの市場は、もともとは個人や中小企業が主な所有者層でしたが、小資本の方々ではリスクが高く維持が難しくなっていたところに我々のような企業が入っていきました。効率性を高めたり、規模のメリットを生かせることも我々の強みだと思っています。

── 物流施設やヘルスケア施設にも投資対象を広げていますね。

宮島 物流施設は、施設を利用する配送・運送企業の需要の部分と、それを基に開発の規模や金額が決まる不動産マーケットのメカニズムがきれいにつながった例だと思います。これは日本の不動産では初めてのことです。今後、古い倉庫の建て替えなどでも、REITの絶大な資金調達力が生かされると思います。

 ヘルスケア施設は、個人の地主の有効活用や、運営会社が建物の所有から運用までを行うという形態が一般的ですが、それだけでは今後伸びていく需要に追いつきません。この分野でも、建物を所有するのはREIT、運営はヘルスケアの専門会社というように、所有と運営を切り分けることで、資本の安定性を増すことができます。

── 東証REIT指数は一時1700ポイントに達しましたが、現在は1300ポイントを割り込んでいます。

宮島 現在、市場はひと休みしていますが、参院選後に第2幕が始まると見ています。ここから先に投資家が求めるのは、本当の景気回復。キャッシュフローの成長にテーマが移ってくるでしょう。お金の出し手の性質も、コア(賃貸収益を重視する投資家)、長期、ソブリンウェルス(政府系ファンド)に移りつつあります。

── 運用成績の拡大・向上がこれまで以上に求められるようになる。

宮島 経済成長、金利の上昇に勝てるだけの運用成績を出していけるファンドはさらに成長できる市場になっていくと思います。そのような時期を前に、組織対応、ファンドの運用に対する考え方の整理、自己勘定投資の管理、などの体制を整えたことで、胸を張って行けと言えるようになりました。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=花谷美枝・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 35歳まで三菱信託銀行のロサンゼルス支店で不動産ファイナンスの回収を担当しました。36歳でケネディクスに入社してからは、伸び盛りの新興企業で働くのが楽しくて、連日深夜まで仕事してました。
Q 最近買ったもの
A 通勤用の鞄です。この会社に転職した時に買ったものをずっと使っていたのですが、「ボロボロで恥ずかしい」と妻に言われて新調しました。
Q 休日の過ごし方
A 犬と散歩、ゴルフ、ピラティス。家族と食事をすることも多いです。
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 ■人物略歴
 ◇みやじま・たいすけ
 1985年慶応義塾大学卒業、三菱信託銀行入社。資本市場部を経て、ロサンゼルス支店で不動産融資事業に携わる。98年、ケネディクス入社。2012年3月取締役就任、13年3月より現職。51歳。