2013年

7月

09日

経営者:編集長インタビュー 真鍋精志 JR西日本社長 2013年7月9日号

 ◇「地域共生企業」目指す

── 2017年度までの中期経営計画によると、運賃収入が12年度比微減の慎重な見通しです。

真鍋 鉄道事業は、人口やGDP(国内総生産)との相関関係が比較的高い事業です。単純に試算するとマイナスになる。それを新幹線や大阪環状線の活性化で伸ばす計画です。

 一方で、現状35%の非鉄道事業の割合を10年後に40%に伸ばしたい。ただこれから5年間では約1%、260億円しか増えないと見ています。今後5年は非鉄道系の土壌づくり、地ならしをして種を播(ま)くことに徹する。実を結ぶのは次の5年になります。

── どんな種を播きますか。

真鍋 非鉄道事業で増やす予定の260億円のうち250億円までが駅ビルやビジネスホテル、不動産分譲など既存事業で、新規事業は10億円です。当社管内の岡山や広島、北陸などに合ったビジネスは何かをじっくり見定めるつもりです。そして、それぞれの地域でしっかりビジネスをしている地場企業と提携したり、場合によってはM&A(合併・買収)もする。駅周辺の開発というより町中に出ていく。農業や水産業も検討していきます。

 各地の自治体や商工会議所などには「5年後、10年後の町づくりとセットで鉄道ダイヤも考えましょう。場合によっては我々も鉄道以外のことをする」と話をしています。長い目で見ると、当社の社員が鉄道だけで食べていけるはずがありません。目指す姿は、地域に腰を据えた「地域共生企業」です。

── シニア世代は旅行意欲が高いので運賃収入はもっと伸ばせるのでは。JR九州の豪華列車「ななつ星」も評判です。

真鍋 豪華列車は、当社もどんな路線がいいのか、価格帯も含めて検討しています。また、クルマとの関係でいえば、団塊の世代がこれから運転をやめていきますし、若い世代も意外と列車の旅を好みます。毎週金曜日午後10時東京発で、翌朝出雲に着く寝台列車「サンライズ出雲」は、常に9割以上の座席が埋まっています。女子会や母娘での利用が高いようです。こうした「遠くに行く」需要にしっかり応えていく。と同時に「街あそび」の需要も喚起していくつもりです。

 今年4月、JR大阪駅北側にオープンした巨大複合施設「グランフロント大阪」には連日多くの人が詰めかけています。天王寺(大阪)の「あべのハルカス」や神戸ハーバーランドの「umie(ウミエ)」も集客力がある。観光名所やスイーツの人気スポット、街あるきのモデルコースを紹介するパンフレットを各地に置いて都市型観光の需要を刺激していきます。

── 飛行機対策はどんな手を打ちますか。

真鍋 関西から九州・博多までのLCC(格安航空)対策として、ネット会員専用のスーパー早得を導入しました。14日前までにネットで購入すると3割前後安くなります。LCCの影響で1日当たり約2%、300人程度の乗客流出があるとみて、1日400枚程度の売り上げを狙ったのですが、1000枚近く売れています。価格競争を限りなくやるつもりはありませんが、収益管理をしっかりしたうえで一部の座席価格は柔軟に設定していくつもりです。

 ◇リスクアセスメント導入

 107人の死者を出した05年4月の福知山線列車事故以来、安全対策が最重要課題であり続ける。

── 社内教育をどう進めてますか。

真鍋 最大の問題は、どうしてあのような大事故が起きるリスクに気付けなかったのか、ということです。そこで危険予知という観点から、危ないと思ったことは必ず報告させ、対策を立てる「リスクアセスメント」を導入しました。当初はミスを報告すると処分されるから報告しづらいという声も強かったのですが、ヒューマンエラーは必ず起きるという考え方に切り替え、報告を促したら、年間約3万件の報告が上がるようになりました。

 ただ、課題が多いのも事実です。昨年2月の西明石駅構内で起きたトラックと特急列車の衝突事故も、リスクを察知して対策を打とうとしていた矢先の事故でした。対策が完了するまでは別のやり方でリスクの穴を埋める重要性を痛感しました。

 死亡事故ゼロは当然として、17年までにホームにおける人身事故の3割減、踏切障害事故の4割減などの目標を掲げています。ホーム転落防止用のホーム柵でいえば、列車には3ドア、2ドアが混在し、従来のホーム柵では対応できないため、ロープが上下するロープ式のホーム柵を開発しています。まもなく実際の駅で実証実験をして、転落事故が多い駅を中心に導入していきます。安全対策には今後5年で過去5年より100億円多い4700億円を投じます。

── 不振が続く大阪駅の百貨店「JR大阪三越伊勢丹」はどうしますか。

真鍋 共同出資をする三越伊勢丹ホールディングスは「(自社の)テイストを大事にしたい」などと言っていましたが、実績は実績です。15年春のリニューアルに向け、ショッピングセンター系の専門店からの引き合いも多い。どういう店づくりを目指すのか、まさに秒読み段階に入ってます。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 労務一筋でした。札幌の人事課長の後、東京の職員局に戻り、その後大阪に。余剰人員の出向先探しや新規ビジネスづくりに奔走していました。
Q 最近買ったもの
A ドイツの老舗メーカーの鉛筆ホルダーキャップと携帯用ハサミです。気になった新聞記事に印をつけたり切り抜きをするのに使っています。
Q 休日の過ごし方
A 読書や書店巡り。いろんなジャンルの本を読みます。

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 ■人物略歴
 ◇まなべ・せいじ
1976年東京大学法学部卒業、日本国有鉄道入社。87年JR西日本(西日本旅客鉄道)となり2003年執行役員財務部長。取締役総合企画本部長、代表取締役副社長などを経て12年5月から現職。59歳。