2013年

7月

16日

経営者:編集長インタビュー 西村義明 東海ゴム工業社長 2013年7月16日号

 ◇M&Aで防振ゴムのトップシェア強固に

 

── このところ為替相場が乱高下していますが、経営への影響は。

西村 基本的に為替が円高、円安のどちらへ振れても、収益には直接、影響はないような構造になっています。原料の調達と海外子会社からの半製品購入として輸入していますが、ほぼ同額に見合う製品を輸出しているからです。

 ただ、間接的な影響としては、お客さんの自動車メーカーが円高になると相当厳しい状況になり、値引きの要請が厳しくなってきます。そちらの影響が大きいでしょうか。

 クルマの走行時やエンジンの振動を和らげるため、サスペンションなどに使われる「防振ゴム」。東海ゴム工業は、この自動車用防振ゴムで世界シェア16%(2012年度)を誇るトップメーカーだ。また、燃料用の配管などに使われる自動車用ホースでも大手の一角を占める。12年12月にイタリアの自動車用ホースメーカー、ダイテック社の買収を決定し、本格的なM&A(企業の合併・買収)に着手。今年1月にはドイツの防振ゴムメーカー、アンビス社の買収を決め、自動車用防振ゴムの世界シェアは20%にまで高まる。

── 今年3月にはブラジルの自動車用ゴム部品メーカーの買収も決断しています。積極的なM&Aに乗り出した理由は何ですか。

西村 08年のリーマン・ショック後、日系を含めて自動車メーカーが大きく落ち込みました。その際、三つの戦略を立ててやっていこうと考えました。一つ目は非日系のメーカーとも取引を拡大すること。二つ目は新興国を中心に生産拡充を図ること。三つ目は今後の自動車の主流となる環境対応車や小型車の開発をしっかりやることです。

 ただ、一つ目の戦略に沿って非日系メーカーとある程度まとまった取引をしようと思うと、すでにサプライチェーン(部品の供給網)ができあがっているため、新規に参入するのは難しい。そこで、M&Aを考えることになりましたが、当社にはこれまでそのノウハウも企業文化もありませんでした。(親会社の)住友電気工業から経験のある幹部を招聘し、専門用語から勉強し始めました。

── 昨年まで円高も続きました。

西村 感覚的にですが、いずれ円高は終わるのではないかと感じていたので、なるべく早くM&Aをしたいという気持ちがあったのは事実です。欧州のうち1社は1ユーロ=100円程度で買収することができ、ちょうどいいタイミングでした。欧州の2社とも私募ファンドがもともとある程度の株式を持っており、売却先を探していたという意味でもタイミングが合いました。

 ◇自動車以外も強化

── M&Aをどう生かしますか。

西村 欧州の2社の取引先は独フォルクスワーゲンやイタリアのフィアットという完成車メーカーで、非日系との取引が拡大します。また、両社とも我々が世界各地に展開する生産拠点や子会社との地域的な重複がなく、ちょうど良い補完関係にもあります。加えて、課題だった南米でも供給体制を整えることができました。13年3月期連結の売上高は2637億円ですが、M&Aの効果がフルに寄与する15年3月期には4000億円程度になるでしょう。

 ずっと単独でやってきたので、文化の違う会社が入ってくると、結構大変ではあります。当面はそれぞれの会社にそのまま事業をしてもらいながら、顧客との関係などを相当密に調べている段階です。今後、1年~1年半をかけて、我々の事業との整理をしていきます。M&Aはひとまずこれで一段落として、しばらくは落ち着いて防振ゴムのシェアを25%ぐらいまで高めたいですね。

── 現在の中期経営計画(11~15年度)では、最終年度に売上高4200億円を目標としています。一方、「20年代初頭にグループ連結売上高1兆円を目指す」とも掲げています。

西村 世界の自動車生産台数は現在、年間約8000万台ですが、長期的にみれば今後、どれほど伸びたとしても2倍程度でしょう。自動車部品では防振ゴムとホース以外にどう参入していくか、また自動車部品以外の事業の強化が中長期的な課題です。現在は自動車部品の売上比率が約8割ですが、15年度には7割に、20年代初頭には半分ぐらいとし、自動車以外の分野も伸ばしていきます。

── 具体的にはどの分野ですか。

西村 力を入れているのが介護の分野です。伸び縮みするゴムの特性を生かした薄いセンサー「スマートラバー」を開発しましたが、電気を通すとセンサーのどこに圧力がかかっているかが分かる技術です。これを介護ベッドに用いれば、体のどこに圧力がかかっているかが把握でき、床ずれの防止につなげられます。

 また、理化学研究所とはスマートラバーを搭載した介護支援ロボットの共同開発も進めています。「お姫様抱っこ」が初めてできたロボットで、被介護者をベッドに移す負担を軽減したいと考えています。埋め込んだセンサーによって、触覚で操作できる技術の開発を目指しています。

 日本だけでなく中国などでも少子高齢化は進んでいきます。スマートラバーの技術は今後、必要とされる場面が広がっていくと感じています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=桐山友一・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A アフリカのナイジェリアに3年間駐在した後、労働組合、経理部とまったく違う職場を経験しました。それぞれに楽しかったですね。
Q 最近買ったもの
A 靴です。毎年、6月の株主総会と新年の2回、靴を履きかえています。新年は新しい気持ちで、株主総会は足元を固めていこうという気持ちを込めています。
Q 休日の過ごし方
A ゴルフが多いですね。妻の買い物に付き合ったりもします。何もないときには散歩や読書をして過ごしています。
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 ■人物略歴
 ◇にしむら・よしあき
 京都府出身。京都大学経済学部卒業後、1972年住友電気工業入社。2003年常務、07年専務を経て、08年東海ゴム工業副社長。09年6月から現職。65歳。