2013年

7月

23日

ワシントンDC 2013年7月23日特大号

 ◇「議会迂回」で実現図るオバマ大統領の温暖化対策

須内康史
(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)

 オバマ大統領は6月25日、ワシントンDCのジョージタウン大学で演説し、気候変動対策の新たな行動計画を発表した。この日は気温が30度を超え、盛夏を思わせる真夏日。大統領は途中から上着を脱ぎ、時折ハンカチで汗をぬぐいながら、次の世代を担う聴衆に向かって「将来の世代のために、今、行動しなければならない」と訴えかけた。

 気候変動への取り組みは、大統領が第1期の就任当初から掲げ、2期目の就任演説や一般教書演説でも言及した最重要課題の一つ。大統領は就任1年目の2009年に、米国の温室効果ガスの排出量を20年までに05年比で17%削減すると公約している。今回の行動計画ではその目標を再確認した。

 行動計画は具体的に、(1)米国内における排出削減、(2)気候変動による災害への備え、(3)国際的な取り組みの主導──の三つを柱とする。国内の排出削減では、米環境保護局による発電所向けの新たなCO2排出基準の策定、20年までの再生可能エネルギーの倍増、新しい技術や効率化事業等に対するエネルギー省による債務保証プログラム(保証枠80億ドル)の活用等が盛り込まれた。

 災害への備えでは地域コミュニティーによる対策の支援と連携強化が中心となる。国際的な取り組みでは、インドやブラジル、中国等の主要新興国と2国間での協力を進めていることを強調し、2国間および多国間の協調を進め、国際的な取り組みにおいて主導的役割を果たすことをうたっている。

 ◇雇用に関連づける共和党

 米国の温室効果ガス排出量は世界の約18%を占め、中国に次ぐ世界第2の排出国だが、シェールガス革命による天然ガス発電の増加や再生可能エネルギーの利用増等により、11年までに05年比で約7%減少している。今年5月に公開された米エネルギー省エネルギー情報局の予測シナリオ(今回の行動計画の効果は含まない)では、20年の温室効果ガス排出量は05年比9・1%減との試算となっており、17%減の公約を達成するためには行動計画に基づくさらなる排出削減が必要だ。

 今回の発表は、あらためてオバマ大統領の気候変動対策への強いコミットメントを示したものとワシントンでは受け止められている。一方で、共和党が下院の多数を占める現下のねじれ議会を反映して、その具体策は議会の立法措置を経ることなく行政府の権限のみで行うものに終始しており、現地マスコミも「大統領は議会を迂回」と評している。

 今回の行動計画に対して、議会共和党議員からは、反発の声が相次いでいる。もともと共和党は産業への政府規制の強化に反対であるのに加え、今回は「議会迂回」による「共和党外し」の対決色が色濃く出ているためだ。

 ベイナー下院議長は「なぜ大統領は発電所を閉鎖に追い込み、エネルギーコストを増大させ、米国民の雇用を失わせてしまうのか」と批判し、マコネル上院院内総務は「雇用に対する宣戦布告にほかならない」と反発している。共和党議員の中からは、対抗措置としての環境保護局の予算削減といった声も水面下で出ているようだ。

 また、環境保護局による規制については、過去にも関連企業・団体からの提訴が多数なされている。今回の行動計画に基づき同局が新たなCO2排出規制を策定した場合も、「環境保護局にその権限はない」として関連企業・業界団体からの提訴が相次ぐとの見方もある。今後、オバマ大統領の思い描く通りに行動計画が進捗するという保証はなく、行方が注目される。