2013年

7月

23日

経営者:編集長インタビュー 道具登志夫 デジタルアーツ社長 2013年7月23日特大号

 ◇国産セキュリティーソフトで世界を目指す

── 主力製品は、ウェブフィルタリングソフトの「i‐FILTER(アイフィルター)」です。セキュリティーソフトとの違いは。

道具 インターネットのセキュリティー分野は幅広く、数十のカテゴリーに分かれます。フィルタリングはその中の一つです。i‐FILTERは、ネットへのアクセス制御や掲示板やSNS(交流サイト)への書き込み禁止などが管理できるソフトです。

一方で、こうしたソフト導入を毛嫌いする企業や団体もあります。経営者にとっては、社員に真面目に仕事をしてもらえるツールになりますが、社員には堅苦しく感じるからです。ただ、現在のフィルタリングソフトは、仕事中にネットショッピングをさせないといった生産性の向上だけでなく、ウェブ経由でのサイバー攻撃から身を守るというセキュリティーの役割も担っています。

── 法人向けのウェブフィルタリング市場でシェア約55%を誇ります。強みは何ですか。

道具 i‐FILTERは、全国の企業・官公庁で7100団体以上、学校・教育機関では2万6000校以上に導入されています。

 フィルタリングは日本語がとても重要です。「教師」という普通の言葉で検索しても、有害サイトが表示されることもあるからです。こうした日本語固有の問題に合わせたキメ細かいサービスは、外国企業にはなかなかできません。

── タブレットやスマートフォンなど情報端末が増えているのは追い風ですか?

道具 営業職のビジネスマンではパソコンとタブレットを併用する人が増え、タブレット用のi‐FILTERが売れています。販売数はすでに、5万ライセンスに達しています。

 従来製品と仕組みは同じですが、パソコンには導入しなくても社外で主に使うタブレットには導入するという企業も増えています。市場は広がっています。

 ◇新ビジネスも着々

 7期連続の増収を続ける。2013年3月期は売上高29億円、営業利益7・3億円で両方とも過去最高を記録した。売上比率は、企業向けが50%、官公庁向けが40%、家庭向けが10%を占める。

── 収益をi‐FILTERに頼るリスクはないですか。

道具 電子メールフィルタリングソフトの「m‐FILTER(エムフィルター)」も提供しており、収益の柱になっています。これは、メールを一定時間サーバーで保留し誤送信を防止したり、重要なメールの送信を複数の責任者による承認制にすることもできます。

 また、最近は「FinalCode(ファイナルコード)」にも力を入れております。これは、メールで送信したファイルを送信後に削除したり、送信相手に共有や転送を禁止できるソフトです。

 例えば、製造業の企業が海外と日本で設計図のやり取りに使ったり、金融機関がインサイダー情報の漏えい防止策に使ったりと、今は億円単位の販売を目指しています。この製品は海外にも積極的に展開しようと思っています。

── 5月にはクラウドサービスのポルキャスト(米カリフォルニア州)と資本提携し、日本法人を設立しました。狙いは?

道具 ポルキャストは、例えば、社有パソコンを自分専用のクラウドにできるサービスです。会社のパソコンにあるファイルをタブレットからでもスマートフォンからでも引っ張り出せる便利さと、データを私的領域に保存できる安全性があります。米国では数十万人が使っています。

 米アップルの「アイクラウド」や米グーグルの「グーグル・ドライブ」などは、パスワードだけで管理しているため侵入の危険性があります。ポルキャストは、これらに代わるサービスになりえると確信しています。運営は、私が社長をつとめるポルキャスト・ジャパンが担い、i‐FILTERに次ぐ柱にしたいと思っています。

 また、今後の海外展開では、シリコンバレーに深く根を張るポルキャストの人的ネットワークを十二分に生かしていくつもりです。

 ◇26歳で起業

── 26歳で創業した頃は何を販売?

道具 インターネットの便利ツールを作るパッケージメーカーで、東京・秋葉原で売っていました。従業員10人くらいの規模でした。ある時、社員がアダルトサイトを見られないようにできるフィルタリングソフトを開発しました。私は教育関連ソフトの経験もあったので「これは学校でも売れる」ということで事業を始めました。その後、家庭や企業向けに進出しました。

── 上場はITバブル後の02年。

道具 創業後しばらくは、国産のセキュリティーソフトメーカーもなく、上場会社でもなかったので、営業先に信用してもらうのに苦労しました。だから、上場の目的は、資金集めよりつぶれない会社になるための選択でした。

 ただ、00年1月から投資家回りをして9億円を集め上場を準備していた矢先に、ITバブルが崩壊。そこから上場した02年9月までは地獄のような日々でしたが、精神面で鍛えられました。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=谷口健・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 26歳で会社を立ち上げ、30代は上場の夢と試練の連続でした。給料の支払いが遅れることもありました。「あした家賃が引き落とされるのですが」と社員に申し訳なさそうに言われ、キャッシングローンに行くこともありました。
Q 最近買ったもの
A ストレス発散で腕時計を買いました。
Q 休日の過ごし方
A ジムとエステ、ゴルフです。ゴルフは会社関連で行くこともあります。
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 ■人物略歴
 ◇どうぐ・としお
 東京都出身。営業職やプログラマーを経験し、1995年に単身でデジタルアーツを設立。2002年にナスダックジャパン(現・ジャスダック)上場。13年3月、東証一部へ指定銘柄変更。インターネット協会理事。45歳。