2013年

7月

30日

経営者:編集長インタビュー 金森賢治 ホーチキ社長 2013年7月30日号

 ◇メーカー力を高めヒット商品作る

 日本初の防災設備メーカーとして1918年に創業。誤作動の少ない高品質の火災センサーで信頼を築いてきた。
── 防災設備メーカーの経営環境は。
金森 防災システムは、当社を含む専業3社にパナソニックを加えた4社がシェアを争っています。
 少子高齢化の影響で首都圏以外の新築市場は冷え込んでおり、防災システムの需要も伸び悩んでいます。一方で東京では、一極集中で価格競争が進行しています。その中でいかに大型プロジェクトに参加できるかが重要です。
 例外的に増えているのがネット販売を支える物流倉庫です。倉庫は着工から完成までの期間が短いため、倉庫に納入するシステムは、資金回収が早い商品になっています。

 

── 他社との技術開発競争は。
金森 各メーカーとも防災機器の規格である日本消防検定協会の検定制度の枠内で開発して販売をしなければなりません。そのため検定をクリアしようとすると、ある程度商品が似通ってきますが、その中で差別化を図っています。検定がなければもっと目新しい商品が出てくるかもしれませんが、新規参入や海外製品も増え、価格競争は激しくなるでしょう。防災システムは暮らしの安心・安全を守るためのものなので、品質が守られ、粗悪品が出ないという点では検定は必要だと思います。
── メンテナンス分野に力を入れています。
金森 火災報知機は電子部品なので時間がたつと劣化します。数年たってメンテナンスしようというタイミングもあれば、15~20年後にリニューアルしようという時期も来ます。新築したお客様に商品を売って終わりでなく、その後のメンテナンスとリニューアルまで請け負って、長くお付き合いをさせていただく「顧客循環サイクル」というビジネスモデルを考えています。お客様と常にコミュニケーションし、15~20年というスパンの中で、建物のライフサイクルと予算に合わせて維持・管理していくというスタンスです。
── 営業体制は?
金森 従来は新築向けの防災システムを本社が販売し、その後のメンテナンスは子会社が行う仕組みでした。しかし、メンテナンスを子会社に任せ切りにすると、お客様の意見が本社まで届かないこともあります。特にクレームの中には大きな問題や要求が潜んでいます。営業マン個人の判断と組織の上層部の判断は違います。そこで、2011年にメンテナンスを行う子会社3社を吸収合併し、クレームが素早く本社中枢に伝わる仕組みを作りました。これは新製品の開発に生かされます。

 ◇メーカーであり施工会社

── 営業先はゼネコンですか。
金森 メーカーでありながら施工会社の顔も持つ当社の仕事は、自社製品の取り付けを行う施工と、代理店を通したシステム販売の二つに分けられます。施工と販売の売上比率は2対1です。
 施工は、ゼネコンと電気工事業者などサブコンと呼ばれる企業から受注します。一方の販売は、全国に約90社ある代理店が当社のシステムを買い、サブコンの下で施工に当たるという形です。当社はメーカーとして代理店をバックアップします。
── 昨年、ALSOKが筆頭株主になりましたね。
金森 防災と防犯は、目指しているものが「安全・安心」という同じ方向で、市場も隣接しています。ALSOKはメーカーではありませんが、警備をしていれば火災報知機が欲しいというお客様もいます。そこに当社の商品を買ってもらうチャンスがあります。カードリーダーによる出入管理システムなどセキュリティー機器をOEM(他社ブランドの製品を受託製造)供給するなど、02年から業務提携し、特に技術部分で連携を強めてきました。営業面でも当社はゼネコンやサブコンのルートを得意とし、ALSOKは施主に強いため、互いに情報を共有することで受注を増やすことも可能です。
── 海外展開を強化しています。
金森 昨年、英国のケンテックというメーカーを買収しました。火災報知システムは、熱や煙を感知して火災検出信号を発するセンサーと、その信号を受信し火災情報を表示するコントロールパネルの二つで構成されます。欧州ではこれまでセンサーを売っていましたが、パネルで高い技術とシェアを持つケンテックの子会社化で、システムとしてブランド展開できます。センサー単品よりシステムの方が売り上げも大きく、顧客満足度も上がります。現在、ロンドンのセント・パンクラス駅(国際鉄道ユーロスターの始発駅)の火災感知器はホーチキ製です。
 また、急成長する東南アジアを開拓すべく前社長時代にタイなどに事務所を設けました。前任者がまいた種に私が水をやり、欧米と同程度まで拡大させたいです。海外比率は現在の10%から20%にしたいですね。現地生産にするか輸出にするかはここ数年で結論を出します。
── どんな会社を目指しますか。
金森 「人々に安全を」という経営理念からかけ離れた分野は狙いません。その中で、まずは会社の足腰になる「メーカー力」を強化します。少子高齢化で職人も減っている中、いつまでも施工の部分に頼るのは限界があります。ヒット商品を作れるメーカー力のある企業を目指します。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=大堀達也・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか?
A ちょうど日本経済がバブルの時で、仕事もしましたが、昼はゴルフ、夜は飲み会とよく遊びました。まだ係長でしたが、当時は交際費なども全部自分で決めるなど権限がありました。今の若い人には怒られそうですが。
Q 最近買ったもの
A 散歩にも使えるゴルフシューズです。スコアには関係ありませんが、足元を鍛えるにはいいですね。
Q 休日の過ごし方
A 毎週必ずゴルフに行きます。なるべく家にいないことが家庭円満の秘訣。日に焼けて元気に見えるのもいいです。
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 ■人物略歴
 ◇かなもり・けんじ
 神奈川県出身。幾徳工業高専(現神奈川工科大)卒業後、1972年東京報知機(現ホーチキ)入社。2009年常務、10年専務を経て13年6月から現職。61歳。