2013年

8月

20日

エコノミストリポート:揺らぐ医療の信頼 バルサルタン臨床データ操作 2013年8月13・20日合併号

◇産学協同が起こしたスキャンダル 市販後臨床試験チェックに不備

河内敏康/八田浩輔
(毎日新聞科学環境部)

 日本で最も売れていた降圧剤「バルサルタン」(商品名ディオバン)に血圧を下げる以外の効果もあると結論付けた臨床試験を巡って、日本の医薬研究史上、類を見ないスキャンダルが持ち上がっている。京都府立医大と東京慈恵会医大の試験で、バルサルタンに効果が出る方向で不正なデータ操作が行われていたことが判明し両大学は記者会見し、謝罪するに到った。
 さらに、販売元の製薬会社「ノバルティスファーマ」(日本法人、東京)の社員(問題発覚後の今年5月に退職)が、統計解析の担当者として試験に関与していたにもかかわらず、論文に明記されていなかったことも疑念を深めている。
「深くおわびし再発防止に努めたい。申し訳ございません」。7月11日に緊急の記者会見を開いた府立医大の吉川敏一学長は、論文に不正があったことを認め、謝罪した。東京都済生会中央病院が「同種薬剤が多数存在する中であえて処方する理由が少ない」と、この薬の使用中止を公表するなど、臨床現場に影響が広がっている。また、米科学誌『サイエンス』は会見で深々と頭を下げる吉川学長の写真入りでこの問題を大きく扱うなど、海外の関心も高い。医療産業の国際競争力強化を掲げる政府にとっても無視できない状況だ。………