2013年

8月

20日

特集:世界経済「出口」の後 第1部 「震源地」中国・米国全解明 2013年8月13・20日合併号

 ◇米国が世界経済を牽引 外需に支えられ日本も浮上

望月麻紀
(編集部)

 ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は7月31日、一時1万5634・32ドルをつけ、日中取引時間ベースの過去最高値を記録した。米国の4~6月期国内総生産(GDP)成長率が市場予想を上回ったと伝えられた直後だった。実体経済の強さを示す指標が出ると、量的緩和縮小観測が高まり、ダウ平均が下がったこれまでとは違う流れだ。資金の流れを丹念に追うと、米国経済の先行きへの期待の高まりが見える。
 ハイイールド社債、いわゆるジャンクボンド。投機的格付けの高利回り社債で、主に米国企業の社債で構成される。米ドル建てハイイールド社債上場投資信託(ETF)の契約口数は、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が5月末に量的緩和縮小の可能性について言及した際に一時減ったものの、すでに5月中旬レベルにまで回復した。一方、バーナンキ発言で冷え込んだ新興国市場ETFの投資口数は、量的緩和第3弾(QE3)前の水準に落ち込んだままで、回復の勢いは見えない。

 

 三菱UFJ信託銀行資金為替部、塚田常雅グループマネージャーは「量的緩和縮小に向けて投資先が選別されている」と分析する。新興国のETFと米国のハイイールド社債は従来、同じ格付けならば新興国を選ぶ投資家が多数派だった。しかし、現在は逆転現象が起きている。意味するところは米国企業への期待の高さだ。
 新興国、そして中国は量的緩和縮小後の投資減少が見込まれ、これまでのような高成長は期待できない。「出口」の後は当面、先進国が世界経済を牽引することになる。
 国際通貨基金(IMF)が7月に発表した世界経済見通しによると、先進7カ国中、13年の経済成長率1位は日本で2・0%だ。ただ、14年は世界経済の低迷を受けて1・2%に減速。一方で、米国は13年が1・7%で2位、14年は2・7%で1位と力強い。
 7月30、31日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)は、労働市場の改善や、個人消費と設備投資の拡大、住宅市場の堅調ぶりを評価した。インフレ率低下と住宅ローン金利の上昇という懸念材料の浮上を指摘し、「米経済は年前半に緩やかに拡大した」と下方修正したものの量的緩和縮小の流れを阻むものではなかった。

 ◇緩和の甘い蜜

 では、出口後にはどんな光景が広がるのか。
 新興国からのマネー逆流は、5月のバーナンキ発言を契機とした資金移動で一巡した可能性がある。出口後の逆流が一定規模に収まり、量的緩和縮小のショックを世界経済がいなすことができれば、米国は世界経済の牽引役を果たすことが期待できるだろう。米国の内需が強まれば、日本の輸出増につながり、日本経済の成長を底上げする。
 ただ、基軸通貨の量的緩和という未知の領域だけに、リスクシナリオもある。世界経済は不安定さを増し、アベノミクスの期待先行で進んできた日本経済は頼みの輸出産業の業績が陰り、成長期待はしぼみかねない。三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部の小林真一郎主任研究員はリスクシナリオをこう描く。
 ともあれ、米国が「出口」に向かおうとするタイミングで、逆に金融緩和を進めてデフレ脱却を目指す日本。10月末に日銀が、物価目標の達成に向けて、畳み掛けるように追加緩和に踏み切るとの観測が市場関係者の間に広がる。景気の腰折れを恐れ、14年4月の消費増税の延期論が政府・与党内でくすぶる。予定通り実行した場合も、13年度補正予算の編成で財政政策を大盤振る舞いする構えだ。なりふり構わぬ政策の総動員は、日本の景気を当面底支えする。
「出口」が見えた今、市場関係者の間では早くも「QE4」が話題にのぼる。量的緩和縮小の途上で景気後退し、FRBが再緩和へ追い込まれるとの見立てだ。量的緩和の蜜の甘さをうかがわわせる。世界経済は「出口」の後に試される。