2013年

8月

20日

経営者:編集長インタビュー 市川俊英 三井ホーム社長 2013年8月13・20日合併号

◇顧客本位と合理化の両立目指す

 日本のツーバイフォー工法の草分けとして実績を重ねる三井ホーム。木質系住宅の設計、施工、販売をしている。

── アベノミクスの影響は。

市川 戸建て注文住宅の受注棟数は2012年春から14カ月連続で前年同月実績を上回っています。今春以降は2ケタ以上の伸び率です。消費意欲の好転に加え消費税率引き上げ前の駆け込み需要や住宅ローン金利の先高観が受注を後押ししています。営業現場の声では、消費税より金利の影響の方が大きいようです。


── 13年3月期は、売上高は前期比同等でしたが、営業利益は86%減でした。この理由は。

市川 新築工事の12年春までの受注が苦戦したため、13年3月期の期首の受注残が低調で、結果として売上高が減ることになりました。一方、リフォーム、賃貸管理、資材販売の事業は増収だったので、全体では前期とほぼ同じ売上高になりました。
 利益面では、主に期末の工事集中による外注費の上昇が響きました。東日本大震災の復旧・復興に伴う職人不足などの影響で、追加の工事費を支払ったことも一因です。突発的とも言える工事費の上昇を、お客様に転嫁することは難しいですから。

── 14年3月期の売上高は前期比7%増の見通し。受注が増えている割には慎重では?

市川 昨年下方修正をしたので慎重になっています。しかも消費増税が決まれば、10月以降の契約で14年4月以降に完成する住宅には8%の消費税がかかります。このため、10月以降の受注に関しては、反動減の影響が読みきれず、マーケットを慎重に見ざるを得ません。

── 相続税増税は追い風ですか。

市川 土地持ちのお客様の間では、相続税対策で賃貸住宅を発注する傾向が顕著になっています。また、親子で同居していた方が相続税でのメリットがあるため、二世帯住宅への需要は増えています。相続税とは関係ありませんが、働く女性が増えて「両親に子供の面倒を見てもらいたい」といったニーズもあります。このため、親子や嫁姑が仲良く暮らせる間取りなどを提案しています。

── 為替と業績の関係は?

市川 直接的には、円安は向かい風と言えます。柱や梁をはじめとした構造材になる木材は、量の豊富さや品質を考慮してカナダから輸入していますから。しかも米国の住宅市場が好調なため、構造材の現地価格も上昇。日本向け構造材の市況は、この1~2年で20%ほど上がりました。ただ、構造材のコストが住宅に占める割合はそれほど高くありませんし、ほかの資材価格も、木質系住宅はコンクリート系住宅に比べて上昇が緩やかです。

── 値上げしているのですか。

市川 できるだけ企業努力で吸収できるように、間接費の圧縮やコスト削減を進めています。それでも厳しい場合は、消費者の方々にご理解をいただかないといけないかもしれません。

── カナダ法人をもっと生かすことも考えていますか。

市川 カナダで買い付けた木材を日本に運んでいるほか、好調な米国の住宅市場を視野に、カナダで買い付けて加工した木材を米国のシアトルやダラスなどに住宅用として卸しています。今後も販売エリアや生産体制などの規模を拡大していくことを含め、いろいろ考えています。

 ◇木の温かみ生かし診療所建設

── 高齢化への対策は。

市川 高齢者向け施設を木造で多く受注しています。当社独自の大空間をつくる技術を用いた、大規模木造の老人ホームなどです。木には、自然素材としての温かみと優しさがあり、入居者の膝や腰への負担軽減も評価され、老人ホームや診療所などで好まれています。木造の保育園やコンビニエンスストアの実績も増えてきました。今後は、国産の木材を使った公共施設の建設にも挑戦していきたいと思っています。

── リフォーム事業は好調です。

市川 当社がこれまでに建てた住宅が全国に約20万棟もあります。リフォームに適した築年数と思われる住宅も増えているので、まずはこれらのオーナー様にアプローチしています。良い物を長く使い、内装にこだわる成熟型社会に日本が近づいていることも、リフォーム需要の伸びを後押ししています。

── 商業施設などのリフォームはどうですか。

市川 子会社の三井デザインテックがオフィスビルやホテルの内装やリフォームを手がけています。成熟型社会でホテルの洗練されたデザインへのリフォームニーズは高く、受注は好調です。

── 利益率は、新築とリフォームのどちらが高いのですか。

市川 同じくらいです。広告宣伝などの販売経費は新築の方が圧倒的に多いのですが、販売価格に対する手間はリフォームの方がかかります。販売価格は、新築は2000万~3000万円台が多いですが、リフォームは数十万円からあります。

── 新社長としての経営方針を。

市川 大手でありながら、お仕着せの家ではなく、顧客のニーズをとことんくんだ家づくりをしているのが当社の強みです。ただ、その分手間がかかります。悪く言えば、家内工業のような面がある。顧客の意をくんだ家づくりとシステム化などによる合理化。この両者のバランスをとることを、品質を落とさずにやり遂げることが、私のミッションだと考えています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=中川美帆・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 三井不動産の人事部と、その後はビルの管理(設備や清掃、警備などの統括)部門にいました。
Q 最近買ったもの
A アダム・スコットが13年のマスターズで優勝した際に着用したユニクロ製のポロシャツです。同じ型を購入しました。
Q 休日の過ごし方
A ゴルフと旅行です。夏休みなどを利用して、国内外いろいろなところに行きます。
………………………………………………………………………………………………………
 ■人物略歴
 ◇いちかわ・としひで
 熊本県出身。1977年一橋大学商学部卒業、三井不動産入社。東京ミッドタウン事業部長などを経て、2008年に常務執行役員、11年に常務取締役。13年4月に三井ホーム顧問に就任、6月より現職。58歳。