2013年

8月

27日

ワシントンDC 2013年8月27日号

 ◇直接融資で業務を拡大 輸出倍増計画支える米輸銀

須内康史
(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)


 アメリカ輸出入銀行(米輸銀)のホックバーグ総裁の再任が7月17日、米議会上院で承認された。同総裁は、オバマ政権1期目の2009年5月に就任、今年3月に大統領から再任の指名を受けた。これで2期目となる。

 ホックバーグ総裁の就任以来、米輸銀は与信承諾を大幅に拡大し、史上最高額を更新し続けている。総裁再任指名についての上院の銀行委員会公聴会で、ジョンソン委員長は「ホックバーグ総裁就任後、米輸銀は与信を大きく伸ばしており、同総裁のリーダーシップは、米国が経済回復の途上にある中、極めて重要である」と功績を評価している。
 議会による承認に先立つ6月30日、米輸銀は、米輸銀ファイナンスに関する12年度の競争力評価報告書(競争力リポート)を議会に提出した。同リポートは、他の主要国の公的輸出信用機関と比較して米輸銀ファイナンスの競争力を分析し、自己評価したものだ。12年の総合評価は、過去最高を記録した業務の拡大、とりわけプロジェクトファイナンスや大型航空機ファイナンスへの高い評価を反映して、上から2番目の評価となる「A」とした。昨年度の評価から1段階上げた格好だ。
 米輸銀のような公的輸出信用機関への需要が増大している要因としては、長期ファイナンスに対する民間銀行の与信能力が制約される状況が依然続いていることが挙げられる。民間銀行はリーマン・ショック以降、貸し出し余力の低下と資金調達コストの上昇が見られ、その後もユーロ圏の政府債務危機や自己資本規制であるバーゼル3への対応などがあった。

 ◇課題は新興国との競争

 この結果、プロジェクトファイナンスといった比較的規模が大きく長期の資金を必要とする分野を中心に、公的機関へのニーズが高まっている。米輸銀の実績においても、大きな伸びを示しているのは、従来の業務の中心であった保証ではなく、直接融資だ。
 欧州の公的輸出信用機関は、民間銀行融資への保証・保険のみの業務を行う機関が多い。このため、直接融資が可能な米輸銀は、与信能力とコストの双方で欧州の機関に対して優位性を保っている。
 一方、競争力のマイナス要因としては、従来からも指摘のある米輸銀独自の制約、特にファイナンス対象の自国品限定が挙げられている。米国の輸出関連企業の業界団体からも、米輸銀の厳格な自国品限定の制約はサプライチェーン(部品などの供給網)のグローバル化に対応できていないとの指摘がなされている。この点については、自国品と第三国品が一体となった設備輸出も対象にするなど、企業活動の実態を踏まえた対応が必要であろう。
 さらに、今回のリポートで、ブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国の公的輸出信用機関によるファイナンスとの競争を挙げている点は注目される。とりわけ、ここ数年の中国の公的機関(中国輸銀、国家開発銀行など)の与信拡大は顕著であり、競争上の影響も大きい。これら4カ国に南アフリカも加えたBRICS諸国は、今年3月、独自の「BRICS銀行」創設の構想も打ち出した。この構想の行方はまだ不透明だが、主要新興国はファイナンスの分野でも影響力を増してきている。
 米輸銀は、5年間で輸出倍増を目指すオバマ政権の「国家輸出イニシアチブ」において重要な役割を担っている。民間銀行の与信動向やBRICSの台頭など競争力に影響を与える情勢変化にいかに迅速に対応できるかが、米輸銀の今後を左右するといえるのではないか。