2013年

9月

03日

経営者:編集長インタビュー 日比野隆司 大和証券グループ本社社長 2013年9月3日特大号

 ◇子会社統合と窓口役の銀行で躍進

 2011年度まで2期連続で最終赤字。14年度を最終年度とする3カ年中期経営計画では、効率化による再生と利益拡大に向け、固定費を固定収益でまかなえる割合「固定費カバー率」を最終年度に50%以上とする数値目標を掲げた。
── 前倒しで達成しているようですね。
日比野 固定費カバー率は13年度の第1四半期に、年率換算でほぼ50%を達成しましたが、目標は「50%以上」なので、さらに努力します。

── 具体的な方法は?


日比野 ストック性の収益を増やします。具体的には、投資信託に絡むグループ会社の運用報酬と、販売する大和証券の代理事務手数料による収入を増やす。ここで大切なのは、同じ顧客による乗り換え購入ではなく、新規購入やそれを継続してもらうことによる残高拡大です。したがって株式や投資信託の売買手数料は入りません。一方、大和ネクスト銀行の運用収益や富裕層向けファンドの手数料は安定収益です。もう一つ、固定費を増やさない努力も必要です。ビジネス拡大で変動費は増えても、固定費は抑制していきます

 

── 固定費のうち厳しく絞り込んだのは?


日比野 一番厳しく絞ったのはシステムです。大和証券と大和証券キャピタル・マーケッツの12年の統合効果で、間接部門のスリム化もできました。また、中計スタートからこれまでに海外の人員を約600人削減しました。


── 相場環境が良くなり、社員の気持ちが緩むことはありませんか。


日比野 経営環境が悪い時期が続いたこともあり、手放しで緩むことはないと思います。1998年以降をデフレとすると、それ以降に入社した証券マン、証券ウーマンが半分以上を占め、管理職レベルになってきています。今回の相場でも、一番強気になり損ねたのが証券関係者だったのではないでしょうか。


── 大和ネクスト銀行の預金残高がネット専業銀行2位の2・2兆円です。さらに増やしますか。


日比野 預金を増やすことに力を入れたのは、銀行単体で黒字化するまで(開業した11年度の第3四半期に四半期ベースで経常黒字化)です。新規顧客への間口を広げ、預金から証券取引へと案内するために作った銀行です。すでにゲートウェイとしての機能を果たすのに十分なプレゼンスはできました。金利は高く、競争力もある。預金残高は自然体でも増えます。


── 富裕層向けは。


日比野 コンサルタントがお客様のニーズに合わせた運用を提案するSMAがあります。ほかに契約金額300万円以上の「ファンドラップ」もあります。お客様のリスク選好の度合いに応じ、専用の投資信託をパッケージで買っていただきます。こちらは富裕層向けの導入商品で、急速に伸びています。

 ◇相続対策に注力

── 相続対策への関心が高いが。


日比野 証券会社のお客様はシニア層が多く、他の金融機関以上に差し迫ったニーズがあります。お客様本人との関係だけでなく、相続されるご家族との関係も常日ごろから作っておく必要があります。そのためネクスト銀行では、預かり資産の金額に応じた金利優遇を、お客様の2親等以内の親族にも提供しています。
 世代間のマネーシフトは確実に起きます。地方に住む親から都会の子どもへの相続があった場合、都市部の支店を紹介して他社への資金流出を防いだ場合も、それを評価する仕組みが必要だと考えています。
 14年1月から、投資家の裾野を広げるための少額投資非課税制度(NISA)が始まる。証券会社や銀行など金融機関では口座争奪戦が始まっている。


── ネット証券が口座獲得に向けて販売手数料無料などを打ち出しています。


日比野 我々の基本はコンサルティング。商品を並べるだけのネット証券と同じにすることはありえない。「NISAだから手数料無料」とは思っていない。比較的ファンドマネジャーの手を煩わさないインデックス系のNISA専用ファンドは検討対象になるが、その他のものはならないでしょう。


── 新規顧客へのアプローチは。


日比野 日本、先進国、新興国の株と債券を中心に月8万円分を毎月積み立てで購入していただく。これで時間と資産を分散して投資できる。待機資金はネクスト銀行に預ければ、他の銀行より金利が高い。これを提案のコアにしようと思っています。


── 法人部門の利益水準には課題があると思うが。


日比野 そんなこともない。国内では昨年度、主幹事として日本航空の再上場と日本たばこ産業の第4次売り出しを手がけました。今年度は当社の主幹事先があまり大きな資金調達を予定していない。巡り合わせはある程度は仕方ないと思っています。マーケットは今年度、出来高はまあまあだが、そんなに楽でもない。株も債券も乱高下している。それでも国内はよくやっている方だと思います。残る課題の海外でも、アジアを中心に一定の収益を上げていきます。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=望月麻紀・編集部)

 ◇横顔

Q 30代はどんなビジネスマンでしたか。
A 業務開発室で金融派生商品を使った商品開発を1年。今の経営企画にあたる社長室で2年。そして秘書室、エクイティ部と、仕事が激しく変わり、慣れない仕事が続きましたが、幅広く経験することができました。
Q 最近買ったもの。
A 娘にスマートフォンをプレゼントしました。
Q 休日の過ごし方
A 過半はゴルフですが、家族で食事にも出かけます。
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 ■人物略歴
 ◇ひびの・たかし
 岐阜県出身。1979年東京大学法学部卒業、大和証券入社。大和証券グループ本社常務、専務、法人向け子会社副社長などを経て、2011年4月より現職。57歳。