2013年

9月

10日

ブランド新戦略:欧州高級ブランドが職人技を公開 2013年9月10日号

 ◇価値の「見える化」で市場開拓

藤原尚美(在英ジャーナリスト)

編集部

 馬車のマークで有名なエルメス(本店・パリ)。5月下旬、ロンドン市のチェルシー地区にある美術館サーチ・ギャラリーに、同社の職人約10人が集まった。「フェスティバル・デ・メティエ(技巧の祭典)」と銘打った、エルメスならではのユニークな展示会で、職人の手仕事を無料で公開する。革職人がバッグを縫う姿や、スカーフ職人によるシルクスカーフのプリントが目の前で見られるとあって、連日大にぎわいで1週間で約4万人が押し掛けたという。
 いま、欧州の高級ブランドが相次いで、ブランドを支える職人技の一般公開を始め、人気を集めている。ブランドによる新手の市場争奪作戦と言えそうだ。

 200カ国以上のファッションニュース、関連ビジネス情報をオンライン上で配信する「ビジネス・オブ・ファッション」は、エルメスのイベントを「大量生産の商品が世界中にあふれているが、丹精込めた手仕事にこそ本物の価値がある。このような展示ができることが、エルメスの強み」と指摘。そのうえで、「職人芸を見せるだけで、商品紹介を声高にうたった宣伝や販売の試みは全くなかった。オープンで和やかな雰囲気だった」と評価。宣伝文句のない宣伝の、アピール効果を認める。
 2011年にスタートした「フェスティバル・デ・メティエ」では、世界の主要都市の美術館やギャラリーをエルメスの職人が訪問し、1週間滞在して技の「巡業」をするもの。毎回平均で3万人の来訪者があるといい、昨年11月には大阪の阪急うめだホールで開催。今年はロンドンのほか、中国の北京や瀋陽、ドイツのデュッセルドルフなどでも開いた。………