2013年

9月

10日

特集:「期待」の経済学 インタビュー 吉川洋、東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授 2013年9月10日号

 ◇「過去40年間のマクロ経済学は間違った路線だった」

聞き手=濱條元保
(編集部)

── 1970年代以降、人や企業といった経済主体は、将来の予想を合理的に選択して行動するというルーカスの合理的期待理論が世界のマクロ経済の標準となっている。ルーカス理論をどのように評価するか。

■ルーカス理論を評価する前に、今、日銀が人々の期待に働きかけて上げようとしている「期待インフレ(人々が将来に予想するインフレ)」について考えてみたい。これも経済主体は将来につき合理的期待を形成するというルーカス理論と関係している。
 考えてほしい。一口に期待インフレと言っても、鉄鋼会社の経営者が将来予想する期待インフレと、町の寿司店経営者や主婦たちの期待インフレとは同じだろうか。鉄鋼会社なら材料となる鉄鉱石価格や製品である鋼板の販売価格がどうなるか。寿司店なら仕入れる魚やそれに基づく販売価格、主婦なら日々の食料品価格といった具合に関心を持つ物価(期待インフレ)の対象が違う。日本全体の期待インフレなど定義することはできない。………