2013年

9月

10日

特集:「期待」の経済学 実証実験が示す合理的期待への疑問 2013年9月10日号

 ◇複数の予想が併存し、織りなすのが現実の経済

川越敏司
(公立はこだて未来大学教授)

 近年のマクロ経済分析では、期待(予想)が果たす役割が重要視されている。ここで期待とは、インフレ率などの経済変数が将来どのような値になるかに関する予想を意味している。

 企業は将来の売れ行き(需要)を予想した上で投資(生産量)を決定し、消費者も将来の所得や物価水準などを念頭に消費や貯蓄を行う。このようにして経済変数の将来の値に関する期待は、マクロ経済の変動にも影響を与える。
 こうした期待の形成に関して、現在主流のマクロ経済モデルでは「合理的期待」という考え方を採用している。それは、個人や企業は可能な限りの情報を集めて将来の予測を行い、かつその予測と整合的な意思決定を行う結果、経済変数の将来の値について完全に予見できるようになるという考え方である。つまり、予測は(多少の誤差を除けば)的中するということである。………