2013年

9月

10日

特集:「期待」の経済学 Q&Aで解説する 異次元緩和と「期待」の基礎知識 2013年9月10日号

 ◇4月の日銀の「異次元緩和政策」導入以降、「期待」がキーワードとなっている。政府・日銀が期待に働きかけることで、実体経済にどのような影響が及ぶのか。経済学における期待の基礎知識を解説する。

矢野浩一
(駒澤大学経済学部准教授)

 Q1 異次元緩和でよく使われる「人々の期待に働きかける」とは、どういう意味か。

 A 最初に「期待が人々を動かす」事例を示したい。
 ①1997年4月に消費税率が3%から5%に引き上げられた。引き上げ前には駆け込み需要が発生し、引き上げ後は買い控えが起こった。つまり4月1日から消費税が引き上げになるため、人々はそれを織り込んで3月中に商品を少し多めに購入するという行動に出たわけだ。これは人々が「消費税率が引き上げられるという『期待』」によって行動していることを示唆している。

 ②2008年4月にガソリン税の暫定税率が一時的に廃止され、同年5月から復活した。この時、3月末にはガソリンスタンドで給油する自動車はほとんどなく、逆に4月末にはガソリンスタンドに自動車が長蛇の列を作った。これは人々が「暫定税率が一時的に廃止される(暫定税率が復活する)という『期待』」によって行動していることを示唆している。
 ③12年11月に野田佳彦前首相(民主党)が衆議院解散を宣言した直後から株価上昇と円安が始まった。これは人々が「次の内閣で実行される政策(アベノミクス)への『期待』」によって行動したことを示唆している。………