2013年

9月

24日

ワシントンDC 2013年9月24日号

 ◇シェール革命で国産原油増産 浮上する輸出政策見直し議論

 

須内康史

(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)

 

 「シェール革命」がきっかけとなった米国内での天然ガス増産は、液化天然ガス(LNG)による輸出の道を開いた。原油についても、シェール革命によるシェールオイル(非在来型原油)の生産増加とそれに伴う輸入依存率の低下を背景に、ワシントンで今、輸出政策を巡る議論が静かに高まりつつある。

 

 米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)の統計によれば、2008年に日量約500万バレルだった米国内の原油生産量は、12年に約650万バレルと、約1・3倍に増加した。さらに直近13年8月末のEIA発表を見ると、同生産量は日量約760万バレルと、1989年10月以来最高の水準となっている。今後についても、EIAは13年版エネルギー見通しで、米国内原油生産量は16年まで増加を続ける(「標準ケース」の場合)との見通しを示している。

 

 国内生産量の増加に伴い、米国の原油等液体燃料の輸入依存率は05年の60%から11年には45%に低下している。EIAの13年版エネルギー見通しの中には、35年に米国が原油の純輸出国に転じるシナリオも提示された。また、業界アナリストの中には、国内製油所の多くが重質油処理の設備となっている一方で、米国産シェールオイルが軽質油であることを考慮すると、このままのペースでシェールオイルの増産が進めば、軽質油の国内生産量は国内の精製能力を上回るとの分析もある。

 

 ◇輸出解禁求める石油業界

 

 米国では、75年のエネルギー政策・保護法が、大統領に国内で産出される原油の輸出を制限するよう規定している。そのためカナダやメキシコ向けなど限定的な場合を除き、原油輸出は禁止されているのが現状だ。同法は70年代のオイルショックの経験に基づいて導入されたものだが、最近の国内原油生産ブームを背景に、石油業界からは輸出政策の見直しを求める声が上がり始めている。

 

 主要な業界団体である米国石油協会(API)の幹部は、輸出禁止が長期的には国内の石油開発投資の意欲を減退させ、ひいては国内の供給能力低下につながりかねないとして、見直しを問いかけている。また、ロイヤル・ダッチ・シェルの米国会社幹部も、米国内の製油所の多くが重質油処理の設備であることから、米国で生産される原油(軽質油)の一部をより容易に精製できる国に輸出すべきとの見解を示している。

 

 加えて、最近数カ月の間に、有力シンクタンクの所属研究員が相次いでこの問題に関する分析や見解を示してきている。それらは総じて現行の輸出政策の見直しを支持する内容だ。見直しの理由として指摘しているのは、輸出禁止が国内の石油生産・投資活動の効率性を損なうという懸念や、輸出を含む生産活動は政策的に規制するのでなく市場に委ねるべきであるといった意見である。

 

 原油輸出政策の見直しは、現時点ではまだ議会等で表立って議論されるには至っていない。しかしながら、昨今、業界やシンクタンク、マスコミ等で取りざたされ、水面下では議会関係者への働きかけも出始めていると見る向きもあり、今後、議論が高まっていく可能性がある。

 

 原油輸出は、LNG輸出の際の議論と同様、国内供給の確保や国内産業・消費者への影響など極めてデリケートな問題をはらみ、その行方は単純ではない。仮に米国産原油の輸出が解禁されるのであれば、経済面のみならず中東産油国との関係など地政学的にも影響が及ぶ可能性があり、インパクトは大きい。今後、米国内の原油生産・輸入の実態動向とあわせ、原油輸出政策を巡る議論の行方にも大いに注目したい。