2013年

9月

24日

経営者:編集長インタビュー 渡辺光一郎 第一生命保険社長 2013年9月24日号

 ◇国内でも成長の余地は十分ある

 

 2010年4月1日、相互会社から株式会社へと組織形態を転換し、東証1部に上場した。上場から3年たった今年、新たな中期経営計画をスタートさせた。

 

── 上場から3年がたちました。

 

渡辺 東日本大震災や欧州危機などがあり逆風の3年でした。ですが、この間に経営改革を格段に進めることができました。上場にかかった約300億円のコスト以上に効率的な経営をし、構造改革を続けることで、経営の体質強化をしてきました。

 

── 保険業界を取り巻く環境をどう見ていますか。

 

渡辺 国内保険市場は少子高齢化で縮小すると言われています。確かに死亡保障の需要だけを見るとすごく縮小したように見えます。ですが、個人年金保険などの貯蓄性商品や第3分野である医療保険や介護保険などを加えて見ると、それほど縮小していません。今でも日本は、収入保険料ベースで、世界の2割を占める巨大マーケットです。

 

 1人当たりの死亡保障額を年齢階層別に見ると、35~44歳は男女ともに低下傾向が出ていますが、他の年齢は下げ止まり、もしくは回復しています。また、20~30代の若年層は保険離れが進んでいると言われていますが、この層の既婚者は東日本大震災以降、加入率や1件当たりの加入金額ともに上がってきています。

 

 お客様のニーズや市場の変化を捉え、それに合わせた販売方法や商品開発などを行っていけば、国内でもまだ成長は可能です。

 

── 具体的に、国内市場をどのように成長させていきますか。

 

渡辺 安倍晋三政権の成長戦略でも、「健康寿命の延伸」という項目が設けられており、当社は介護や医療保険分野の市場拡大が可能だと考えています。生命保険会社は社会保障制度の補完産業なので、担う役割も大きく、社会保障制度に合わせて商品開発をしていく必要があります。具体的には、市場が拡大しているシニア層向けには介護分野、若年層には医療分野です。

 

 それに加え、銀行での窓口販売(銀行窓販)をしている傘下の第一フロンティア生命の貯蓄性商品は、今後も増加傾向が続きます。業界全体の販売商品に占める銀行窓販のウエートは一時払い終身保険が高いのですが、当社ではお客様のニーズに合わせ、変額年金や定額年金、外貨建て年金などをバランスよく販売しています。

 

 ◇M&Aに3000億円

 

── 海外事業の現状と収益性は。

 

渡辺 ベトナムとオーストラリアに100%子会社があります。また、インドの会社に26%、タイの会社に24%出資しています。それに加え、今年度はインドネシアの「パニンライフ」に出資しました。

 

 海外事業強化のため、16年3月期までの3年間でM&A(企業の合併・買収)に3000億円の投入を計画しています。インドネシアへの投資もその一環です。インドネシアは日本の2倍の人口があり、保険普及率から見ても相当な成長が見込めます。また、同時に運用を担う米国の会社にも出資をしました。これを手始めにアセットマネジメント事業も成長させていきます。

 

 13年3月期は、海外事業で100億円近い利益が出ました。アジア、オセアニア地域における100億円レベルの利益は、日本の生保業界で随一の収益力だと自負しています。

 

── 特に利益に貢献している国は?

 

渡辺 利益の9割はオーストラリアです。保障性商品の販売を得意とする会社で、コールセンターによるダイレクト販売ではトップクラスです。このオーストラリアのノウハウをタイやインドネシアでも使えないかと検討中です。

 

 16年3月期にグループ全体の収益を1000億円にする計画を掲げていますが、その3割が海外になるよう海外事業を強化していきます。

 

 ◇多様な販売チャネル

 

── 日銀による4月の金融緩和以降、運用方針には変化がありますか。

 

渡辺 生保にとっては、低金利が続くより、長期金利が少しずつ上がってくれた方が運用しやすいのですが、ここ数年長期金利は低下し、運用収益の確保が難しくなっています。6月末の資産構成は、今年3月末に比べて株式が0・4%増の8・4%になり、株式のウエートが少し高まりました。一方、国債を中心とした確定利付き資産は73・8%から71・6%になりましたが、今後も日本国債中心の運用方針は変わりません。外債についても、内外金利差や為替などをにらみつつ、機動性の高い運用をしています。

 

── 代理店やインターネットなど販売方法が多様化していますが、どこを強化していきますか。

 

渡辺 当社には約4万3000人の営業職員がいます。カバーしているお客様は1000万人に上り、今後も営業職員を中心とした販売方法は変わりません。ただ、当社の代理店は全国に2600店ありますし、銀行窓販も拡大しています。こちらから積極的にお客様にお電話で案内を差し上げるコールセンターも年間100万回お電話しています。

 

 この多様な販売チャネルをどう強みにするかが重要です。例えばコールセンターの情報を窓口や営業職員と共有するなど、総合力で勝負していきます。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=富田頌子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 営業企画部門にいて、生命保険協会のワーキンググループの仕事もしていました。他社の人と一緒に仕事をしている時間の方が長かったです。

Q 最近買ったもの

A 北海道の「いたがき」という会社のカバンを買いました。いまだにタンニンを使ってなめす伝統的な方法で作っていて、こだわりの一品だと思います。

Q 休日の過ごし方

A 植物の手入れが好きなので、いただいた胡蝶蘭の花をもう一度咲かせるために植え替えなどをしています。

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 ■人物略歴

 ◇わたなべ・こういちろう

 静岡県出身。1976年東北大学経済学部卒業、第一生命保険入社。取締役企画・調査本部長、常務取締役などを経て、2010年4月より現職。60歳。