2013年

10月

01日

特集:円安再来 2013年10月1日特大号

 

 ◇円安再来の日 米量的緩和縮小予想外の見送り

 ◇円相場の命運握るFRB政策

 

緒方欽一

(編集部)

 

 米連邦準備制度理事会(FRB)は9月17、18日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和政策(QE)の継続を表明した。市場は、FRBが資産買い入れ額の減額を図りQEの縮小開始に着手すると見ていたため、予想外の結果に投資戦略の大きな修正を迫られた。

 FRBは米景気回復を後押しするために、実質ゼロ金利政策を採用すると同時に、米国債など月額850億ドルの資産を市場から買い入れて資金を供給するQEを行っている。縮小開始先送りの理由は大きく三つに分けられる。

 一つ目はQE縮小観測によって生じた金利上昇のマイナスの影響だ。FOMCでは景気の緩やかな回復を評価しつつも、金利上昇が続くと住宅ローン金利の上昇などを通じて、住宅部門を中心とした経済と雇用の回復が遅れる懸念があると指摘した。

 二つ目は失業率。8月時点で7・3%と着実に低下してきたが、労働参加率も低下しており見かけの数字ほど良い低下とは言えない。そのため、縮小開始を決断できる確証は足りないと判断した。

 三つ目は財政問題だ。10月にかけて連邦政府債務の法定上限の引き上げという問題が迫ってくる。2011年夏には同問題を巡って議会が紛糾、財政赤字削減に関する政治リスクが浮き彫りとなったことで米国債は格下げされた。FRBはQE縮小を始めるにしても、議会交渉の行方を見極めたうえでも遅くはないと判断したようだ。

 市場は直前まで、9月FOMCでFRBが資産買い入れ額の縮小に踏み切ると見ていた。バーナンキFRB議長が5月にQE年内縮小開始の可能性に言及して以来、米長期金利は上昇し、現在0・25%の政策金利が15年時点で1%台になることを織り込み始めていた。しかし、今回の見送りを受け、QE縮小開始は10月末のFOMC以降に後ズレした。FOMCが示した将来の金利見通しで、事実上のゼロ金利が15年中盤まで続くとの見方が強まり、市場の思惑は外れた格好だ。

 

 ◇円安条件が逆にそろった

 

 FOMCの決定を受け、為替市場でドルは全面安となった。ドル・円相場は海外市場で一時97円台に急伸した。翌19日に公表された日本の8月の貿易統計速報が14カ月連続の貿易収支赤字と、第2次オイルショック時の1979年7月から80年8月の最長に並び、大きな円売り材料になってもおかしくなかったが、国内要因発の円売り圧力は限定的だった。米量的緩和下では、ドル、つまりは米金融政策が円相場の命運を握っていることを改めて印象づけた。

 一方、米国内では金利先高感が払拭(ふっしょく)された米長期金利(米10年国債利回り)は急低下し、8月13日以来となる2・68%をつけた。QEであふれ出た資金の流入継続が期待できるとみて、18日の米株価は大きく上昇、ダウ工業株平均、S&P500ともに過去最高値を更新した。19日の日本の株式市場も円高にもかかわらず、上昇した。

 目先のドル・円相場の展開は、いったんドル安に振れやすくなった。ただ、米国がQE縮小に向かい、中期的にドル高・円安に動くとの方向感を市場関係者は依然共有している。むしろ、市場の思惑で進んだ米金利上昇が収まり、経済と雇用の回復へのマイナス要因が今回のFOMC決定で払拭されていけば、「円安の条件が逆にそろうことになる」(深谷幸司FPG証券代表取締役)との指摘もある。

 年内のFOMCは10月末と12月中旬の2回ある。市場では「12月の縮小開始」を見込んでおり、円安進行はそこから再スタートとなりそうだ。