2013年

10月

01日

経営者:編集長インタビュー 佐藤孝也 マピオン社長 2013年10月1日特大号

 ◇位置情報ゲームで新たな収益分野を開拓

 

── 携帯電話の位置情報を活用したスタンプラリーゲーム「ケータイ国盗(くにと)り合戦」が人気のようですね。

 

佐藤 現在、110万人に登録していただいています。このゲームは全国を600の「国」に分け、実際に利用者がある国へ出かけた際、位置情報を使ってその国をチェックすることで、一つ一つ国を“制覇”していくものです。このゲームを基本に、その国のご当地でしか得られないアイテムを集めて城下町を作ったり、ご当地の武将カードで他のユーザーと対戦する「チャンバラ」など、いくつかのゲームが連動して遊べるようになっています。

── ユーザーには大人が多いとか。

 

佐藤 30歳以上が7割超を占めているのが特徴です。ゲームは無料でも遊べますが、そもそも出かけること自体におカネがかかります。そのため、出張で各地を巡るビジネスマンなどに楽しんでいただいています。出張の行きと帰りのルートをわざわざ変えて、制覇する国を増やす人もいるようですよ。すでに全600国を制覇した人が473人います。私自身は250国を制覇していますが、それでも4万番目です。

 

 ◇商店街も活性化

 

── ユーザーがさまざまな場所へ出かけるという特性を生かして、他の企業などとのタイアップ企画にも取り組んでいますね。

 

佐藤 百貨店の大丸松坂屋とは2011年と12年の2回、実施しました。店舗での1000円の買い物ごとに、ゲームのアイテムがもらえるカードをレシートと交換する仕組みです。また12年は、墨田区と港区の商店街連合会ともタイアップ企画を実施しています。それぞれ東京スカイツリーと東京タワーというランドマークがあるのに、地域に経済効果を取り込めないという悩みを抱えていました。約1カ月のタイアップ期間で延べ13万人を動員し、4000万円の売り上げ増につながりました。

 他にも鉄道会社や航空会社などとタイアップ企画に取り組んでいますが、その効果がはっきりと数字として見えるため、もう一度やりたいという声をたくさんいただきます。

 ゲーム事業の収益の2割がタイアップの企画料で、残り8割はアイテムなどへの課金が占めています。

 

 マピオンは凸版印刷を中心に5社が出資して1997年に設立。日本におけるインターネットの地図情報サービスで草分け的存在だ。佐藤社長自身が凸版印刷時代に発案した、社内発のITベンチャー第1号でもある。ネット上で地図を調べられるサービスは、大手金融機関のホームページ上の店舗案内などに続々と採用された。ただ、ネット環境の変化は激しい。グーグルが05年、全ユーザー向けに無料の地図情報サービスを開始すると、マピオンのビジネスモデルも転換を迫られた。

 

──「ケータイ国盗り合戦」が生まれたきっかけは?

 

佐藤 グーグルが無料の地図情報サービスを始め、街並みの写真を公開する「ストリートビュー」などさまざまな機能を付けたことで、単なる地図情報だけでは追い付けなくなりました。しかし、同時に携帯電話が普及し、位置情報を使ったサービスもできるようになってきたので、「お出かけ」というユーザーの行動を創出できないかと考えてゲームが生まれました。

 

── 事業構成と売上高は。

 

佐藤 現在の年間売上高は約25億円で、大きく三つの柱で構成しています。「ケータイ国盗り合戦」などのゲーム事業、地図情報サービスを活用した広告事業、企業向けの店舗案内などのソリューション事業です。非上場会社なので詳しくは申し上げられませんが、パソコンで月間1200万人、スマートフォンは500万人に使っていただいている地図情報サービスが現在も収益の中核で、ゲームは事業規模としてはまだまだ3番手です。

 

 ◇自らベンチャー発案

 

── マピオンは佐藤社長自身が発案したベンチャーなんですね。

 

佐藤 そもそもは地方の小さな店舗が情報発信する手段として、ネットの地図上に広告を出してもらおうと取り組んだビジネスです。私自身はプログラマー出身で、94年に発案しました。ただ当時は、無料で地図を公開するビジネスモデルに対し、地図情報の提供会社からライセンスを受けられず、2年間ひたすら、国土地理院の地図データをもとに、地図を加工したり、検索できるようにデータベース化していました。

 

── 地図情報を使ったビジネスの将来展望は。

 

佐藤 人が移動する時、移動前にルートを調べたり、移動後に思い出を振り返ったりと、さまざまな場面で地図情報は位置情報とともに活用されます。例えば、思い出を写真と場所を連動して振り返れば、より鮮明な記憶として残ります。自分たちで地図情報を持っていることによって、まだ可能性は広がっていくと考えています。また、グーグルの地図情報サービスにも、無料で使えるために生じるビジネスの隙間、チャンスがあります。例えば地図情報を利用した企業の商品在庫管理などです。こうした隙間をしっかりビジネス化していきたいと思います。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=桐山友一・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 地図情報データベースを作った後、沖縄県以外の全都道府県を営業活動で飛び回り、マピオンのサービスを説明していました。

Q 最近買ったもの

A 妻と高校2年、中学1年の息子2人の4人で、北海道へ3泊4日で家族旅行をしました。飛行機代が予想外に高く付きました。

Q 休日の過ごし方

A 息子2人は学校の部活でテニスとサッカー、妻は琴の先生をしているので、家族の応援や送迎をしています。

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 ■人物略歴

 ◇さとう・こうや

 秋田県出身。1984年茨城大学工学部卒業後、凸版印刷へ入社。97~2002年にマピオンへ出向し、戦略企画部長。凸版印刷IT開発本部開発第一部長を経て、08年8月から現職。51歳。