2013年

10月

08日

経営者:編集長インタビュー 鳥井信宏 サントリー食品インターナショナル社長 2013年10月8日号

 ◇清涼飲料国内首位目指す

 

 サントリーホールディングスの傘下で主に清涼飲料事業を手がけ、サントリーHDの連結売上高と営業利益の半分近くを占める。7月、東京証券取引所に上場した。

── 上場後の記者会見で、国内市場でコカ・コーラグループを抜いて清涼飲料で首位になる目標を掲げました。どう実現しますか。

鳥井 奇策はありません。考えられるのは自動販売機台数の圧倒的な差を縮めること。自販機はコカ・コーラが80万~90万台、当社は50万台弱なので、30万~40万台くらいの差があります。方法は2通りあり、自販機を同程度まで増やすか、自販機以外の販売で圧倒的に勝つか。でも結局は、お客様に喜んでいただける商品を発売し、欲しい時に手が届く場所に置くことに尽きます。人気商品が増えれば、当社の自販機を置いてもらえる機会が増えるでしょうから。

 ◇事業一貫体制を強化

 

── 商品づくりで大事なことは何でしょう。

鳥井 消費者が何を欲しているのかを理解し、それを商品として作り上げる力、現場まで届ける営業力、消費者の心理をくすぐる宣伝など、全部がそろわないと受け入れてもらえません。飲料はのどが渇いたから買うものであって、成分やカロリーを調べてから買うようなものではありません。昨日宣伝を見たばかりの新商品が店頭にあれば買う人もいるでしょう。それがおいしかったらリピートしてもらえます。だから事業一貫体制を強化し、そのスピードをもう少し上げるのが課題です。

── 商品カテゴリー別の戦略は。

鳥井 本数が多いのは、コーヒー、お茶、ミネラルウオーターです。お茶も水もペットボトルでは飲んだことがない人がまだ多いんです。だから少子高齢化といっても、清涼飲料市場にはまだチャンスがあると思っています。一度ミネラルウオーターを飲む習慣ができれば水道水に替える人は少ないでしょうし、ペットボトルのお茶を普段飲んでいる人が、急に茶葉から入れて飲むようになるケースも多くはないでしょうから。

── 缶コーヒーは女性はあまり買いません。

鳥井 女性向けも真剣に考えないといけないと思っています。当社の「ボス」は、働く男をイメージしていて、女性向けには見えにくいでしょう。

 コーヒーはレギュラーやインスタントもあり、チャンスもあるけど、ピンチになる可能性もあります。それも考え、魔法瓶製造のサーモスと共同開発した「ドロップ」という商品を11月に発売します。これは専用の魔法瓶ボトルで濃縮タイプの液体を水やお湯で薄めて飲む商品で、コーヒーや紅茶を会社や家庭で自分で入れて飲む人を意識しています。

── 商品のブランド戦略をどう考えますか。

鳥井 新ブランドとして出すものと、既存の強いブランドから出すものがあり、決まりはないですね。水分補給飲料「グリーン ダ・カ・ラ」や「オランジーナ」は、新ブランドです。一方で7月にグリーンダ・カ・ラから麦茶、「天然水」ブランドから「天然水スパークリング」を発売し、堅調です。「ボス」からは8月に「グランアロマ」も出しました。

── 海外市場の取り組みは。

鳥井 利益の半分は海外です。欧州のボリュームが大きいですが、最近は東南アジア市場を強化しています。12年にインドネシアで「みらい」という緑茶飲料を、ベトナムでは「ティープラス」というウーロン茶を販売しました。現地では甘いお茶を飲む習慣があるので加糖した商品です。パッケージも現地の感覚に合わせたデザインで、現地事情に応じ商品開発しています。

 9月9日、英製薬会社グラクソ・スミスクライン(GSK)の清涼飲料事業を2106億円で買収すると発表。機能性飲料「ルコゼード」と果汁飲料「ライビーナ」の2ブランドを傘下に収める。上場で得た資金2700億円の大半を早速M&A(合併・買収)に充てた。09年にはオランジーナ・シュウェップスを約3000億円で買収しており、大型買収が続いている。

── 今後のM&A戦略は。

鳥井 今回の買収は、長年支持されている高付加価値ブランドであり、我々の成長戦略とも合致し、高い相乗効果を出せると思います。20年に売上高を2兆円に引き上げる目標に向け、今後も市場の成長性や可能性を幅広く検討し、いい案件があれば狙っていきます。地域はこだわりませんが、狙いは飲料ですね。

── サントリーの強み、弱みは何だと思いますか。

鳥井 よく「やってみなはれ」が強みと言われますが、成功するまで何度でもやり続ければいいという誤解もあります。この精神は説明しにくいですが、正しくはチャレンジ精神を常に持つ、自分の責任でリスクをとる、ということだと思います。

 弱みはグローバル化ですかね。社員一人一人、せめて財務とかヘッドクオーター(本社機能)ではグローバル化してなきゃいけない。例えば財務の人間は、海外の数字がおかしかったら直接相手先に電話して確認するぐらいじゃないと。人事面では、取締役に女性と外国人を受け入れる体制をいずれ実現させたいですね。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=秋本裕子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 銀行マンからサントリーへと移り、新しい業界を学んだ10年でした。大阪や名古屋で営業を担当しました。

Q 最近買ったもの

A 夏休みにハワイでゴルフシューズを買いました。身長が186センチ、足のサイズが29~30センチと体が大きいので、日本の既製品では小さすぎるんです。だからシャツや靴は海外でまとめ買いすることが多いです。

Q 休日の過ごし方

A 子供と遊びます。9歳、4歳、1歳の男の子3人なので大変です(笑)。

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 ■人物略歴

 ◇とりい・のぶひろ

 大阪府出身。1989年慶応義塾大学経済学部卒、旧日本興業銀行入行、97年サントリー入社。ビール事業部プレミアム戦略部長、サントリーホールディングス国際戦略本部長などを経て、11年から現職。47歳。