2013年

10月

15日

特集:シェール革命とビッグデータ 2013年10月15日特大号

 

 ◇二つの「成長エンジン」で世界GDP15兆ドル押し上げ

 

濱條元保

(編集部)

 

 8月に現地のエコノミストらとのミーティングのために米国を訪れた東海東京証券の斎藤満チーフエコノミストは、米国経済の潜在力の大きさに「正直、驚いた」という。昨年から始まったシェール革命とビッグデータの底知れぬビジネス展開が米国にもたらす経済効果──である。「いずれもすでに旧聞に属する情報と考えていたが、まさに目から鱗(うろこ)。二つの成長エンジンを活用しようという米国のポジティブで、したたかな動向を今回の訪米で目の当たりにした」と、斎藤氏は振り返る。

 

 

 ◇「シェール」の波及効果

 

 2008年9月のリーマン・ショックから丸5年。日米欧の主要国が軒並みマイナス3~5%という実質国内総生産(GDP)成長率に落ち込む中で、財政と金融政策で米国は10年に2・4%の実質GDP成長率を達成、11年以降も主要国中トップである。

 米国は、13年度(12年10月~13年9月)の財政赤字は対GDP比で約4%と、前年度から3%も低下した模様だ。政府部門が緊縮財政を続ける中で、実質GDP成長率が2%前後を維持しているということは、財政の赤字削減のマイナス効果がなければ5%成長していることになる。

 また、3度にわたる金融緩和(QE)に資産市場が反応。住宅市場の回復と同時に、ニューヨーク・ダウ平均株価は今年に入り至上最高値の更新を繰り返す場面があった。足元ではアップダウンはあるものの、1万5000ドル前後の高値圏を維持している。

 年内にもスタートが予想されるQE3の縮小が、世界の金融市場の波乱材料とされるが、それは逆に「QE3を縮小しても米国経済が、腰折れしないという確信があるからこその判断。米国経済の基調は強い」(第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミスト)と、市場関係者は受け止めている。

 中長期的に米国の成長エンジンと見られるシェール革命とビッグデータをはじめとするITのインパクトをみてみよう。

 まずは、シェール革命。北米のシェールガス・オイル生産は11年以降、前年比70%増のハイペースで増産されている。安価で大量生産が可能になったシェールガスとオイルが、エネルギーコスト低減となり米国内企業の競争力を高めている。

 さらに、「シェール生産増に伴ってパイプラインや鉄道など輸送手段、インフラ面での波及効果が大きく、経済全体へ生産・雇用増加に大きく寄与している」と、現地のエコノミストは語る。

 次にビッグデータ。 米国のベンチャービジネスに詳しいエコノミストによれば、現在インターネットと接続する機器は100億台以上あり、今年1年だけで創出されるデータ量は4ゼタバイト(ゼタは10の21乗)という途方もない量に達するという。これらのデータはすべての産業、ビジネス機能にかかわっている。

 たとえば、アマゾンの売り上げの35%は自身の推奨エンジンによって生み出されているという試算もある。また、前出の斎藤氏によれば、米IBMと米商務省経済分析局(BEA)が共同して新しいタイプの物価指数を開発し、最近では業種別GDPなど政府機関が作成するデータにとって代わりうるデータも作られているという。

 

 ◇スマホですべて可能な時代に

 

 クレジットカード情報など制限されたデータも加えれば、ほとんど際限なくデータが入手できる。これらデータは労働や資本と並ぶ重要な生産要素になるだろう。これによって、低コストでデータの利用が可能になる。情報の利用をどこまで規制するかという問題は残るものの、高級車販売から病院の患者情報など幅広いデータの利用が可能となれば、マーケティングや販売促進、商品開発などさまざまな活用法があるだろう。

 今やスマートフォンで決済を含めたオンラインショッピングなど何でもできる時代で、キャッシュレジスターやATM(現金自動受払機)も不要になる時代が到来する日はそう遠くないかもしれない。「ビッグデータのビジネスは30年までに世界GDPを15兆ドル余り押し上げるとの試算もある」(斎藤氏)ほどのインパクトを持つ。