2013年

10月

15日

経営者:編集長インタビュー 村上太一 リブセンス社長 2013年10月15日特大号

 ◇大学1年で起業、史上最年少で上場果たす

 

 高校時代から起業を考えていた村上社長は、大学1年生の2005年7月に早稲田大学のビジネスプランコンテストで優勝。翌06年2月、リブセンスを設立して、求人サイトに募集広告を出す際は無料で、採用したときに初めて費用が発生する成功報酬型のアルバイト情報サイト「ジョブセンス」のサービスを開始。創業2年目には黒字化を達成した。卒業後の11年12月、史上最年少の25歳1カ月で東証マザーズに上場。事業は拡大を続けている。

 

── 成功報酬型の求人サイトも増えました。他の求人サイトとどう差別化しているのですか?

 

村上 当社の事業がうまくいき始めたのを見て他社も「掲載無料」や仕事が決まった人への「採用お祝い金」などに乗りだし、今では100社近くが同様のサービスを提供しています。ビジネスモデルは簡単に真似されてしまうので、徹底的にサービスを改善していくことで差別化しています。

 例えば、応募フォームの横に「カンタン」や「60秒」という単語を入れたり、求人検索で「カフェ」と検索しても「喫茶店」の求人が出るようにしたりという小さな改善です。これを徹底的に積み重ねています。

 

── 今、業界では何位ですか。

 

村上 成功報酬型の求人メディアという分野では、当社調べでは1位です。ただ、より広い人材業界では、当社の規模はまだまだ小さく、のびしろのあるポジションにいると思っています。

 

── 業界1位を目指す?

 

村上 むしろ影響力1位を掲げています。影響力とはアルバイトの採用人数です。結果的には売り上げ1位なのですが、サービスの本質的な価値を追求したいです。

 業界1位の目標は、社内で「月面目標」と呼んでいます。月面着陸を目指した米航空宇宙局(NASA)のアポロ計画をなぞっています。「月に行く」という目標は当時、無理だと思われていたかもしれませんが、結果的に月に到達できました。つまり、わくわくする明確な目標を立てることで進化を加速させたい。

 

 ◇高校から起業アイデア

 

── 起業のアイデアはどこから?

 

村上 ビジネスをするうえで一番シンプルなのは、自分が欲しいものを作ること。高校時代、街じゅうに「アルバイト募集」という張り紙があるのに、インターネット検索しても、僕が見た張り紙の企業は出てきませんでした。ネットで募集するのにはお金がかかったからです。その問題を解決するために、今の成功報酬型のモデルを思いつきました。

 

── アイデアは他にもあった?

 

村上 例えば、「フリー(無料)パケット」という企画。携帯電話の画面上に常に広告を出すことで、携帯電話の通信料金を無料にできないかと考えました。実際にある携帯電話会社に電話してみたのですが、全く相手にされませんでした。ただ、後年、実際にパソコン向けで同様の事業をする企業が出ました。

 他には「デジタル身分証明書」。これは今でも良いアイデアだと思っています。

 証券口座などをネット経由で開設する場合、個人情報を入力したり運転免許証等のコピーを郵送するなど面倒ですよね。身分証明ができる情報をデータベースに入れておいて、本人が許可を出せば、企業がネット上で身分照会ができる。そういう仕組みができないかと考えています。ただ、運営する機関の信頼性がとても重要になります。

 

── 会社を軌道に乗せるまで試練はありましたか。

 

村上 創業1年目は売り上げが立たず、ビジネスモデルが本当に成り立つのか不安がありました。大学の単位を取りながら仕事をしていましたから、その時期においては誰よりも働いていたと思います。寝ているときもたぶん考えていました。

 だから、ある講義で「時間がなくてレジメをつくれなかった」と言った教授には「ふざけないでください」と食ってかかったこともありました。

 ただ、他の経営者の本を読むと、相当な苦労をしていて、自分の苦労はまだまだ甘いなと強く思います。それが今、全力でがんばれる原動力になっています。

 

 ◇新事業はネット以外も

 

 現在は、アルバイトの求人情報だけでなく、正社員や派遣の求人情報、不動産情報、転職者向け口コミ情報などさまざまなサイトを手がける。13年1~6月期の売上高は、前年同期比2倍の21億円、営業利益は同64・2%増の9・3億円。アルバイト求人サイト以外の売上比率が、45%以上にまで上がっている。

 

── どんな新事業を考えていますか。

 

村上 強みは生かさないとダメなので、当面はIT(情報技術)領域になります。ただ、長期的にはITだけにとらわれず、社会で当たり前に使われるサービスを作っていきたいです。将来は海外展開も考えていて、先月はベトナムに行ってきました。

 

── 株主配当が無配。将来的には?

 

村上 まだまだ成長途上で、利益をもっと伸ばすステージにいます。一定の内部留保もしないと競争力が落ちます。事業成長や安定性を総合的に考え、配当を検討したいです。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=谷口健・編集部)

 

 ◇横顔

Q 大学生へのメッセージ

A 意識してほしいのは、自分は何が好きなのか、何をしたいのか、しっかり自分を理解すること。自分の価値観を書き出すなどして、行動につなげてほしい。

Q 最近買ったもの

A 1.4倍速再生ができるDVDプレーヤーを買いました。すでに1台持っていたので、ぜいたくをしました。

Q 休日の過ごし方

A ダイアログ・イン・ザ・ダーク(闇を体験するイベント)、地下アイドルのコンサートなど人が興味を持っていることに挑戦しています。今度は、リアル脱出ゲームに行きます。

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 ■人物略歴

 ◇むらかみ たいち

 1986年東京都生まれ。早稲田大学高等学院を経て、2005年早稲田大学政治経済学部に入学。06年2月、大学1年生でリブセンス設立。09年早稲田大学卒業。11年東証マザーズに上場。12年東証一部へ市場変更。26歳。