2013年

10月

22日

特集:宗教と経済2013 米国人の宗教観 2013年10月22日号

 

 ◇救済が約束されるピューリタンの発想

 

保坂俊司

(中央大学総合政策学部教授)

 

 日本の近代社会形成の立役者の一人で、特に経済界への人材育成に貢献した福沢諭吉は、「アメリカの母親は、子供を金銭に敏(さと)い大人になるよう非常に熱心に教育する」と述べ、更に「アメリカ人は、会う人会う人が金儲けのことばかりに執心している」と、呆れたようにその体験を記している。

 武士出身の福沢には、金儲け、つまり経済活動は商人の領域であり、金銭に執着することは、いわば賤(いや)しい生業(なりわい)であるという考えがしみついていた。その福沢にしてみれば、儲けることばかり考える米国人の生き方には嫌悪感を抱いたであろう。現在でも、特に金融資本の拡大に熱心で、世界各地の利益を漁る米国の企業や資本家に対しては、世界各地で強い反発があるのも事実である。

 その一方で、福沢は「アメリカ人は艱難辛苦(かんなんしんく)、克苦勉励して貯めた財を時に、惜しげもなく社会に役立てるためにと寄付する」と驚きをもって記してもいる。あっさりとその財を手放す米国人の行動には、度肝を抜かれたようである。しかし、宗教嫌いの福沢は、この一見不可解な米国人の行動の背後にある宗教性について、深く思いをめぐらせることはなかった。………