2013年

10月

22日

経営者:編集長インタビュー 白砂晃 フォトクリエイト社長 2013年10月22日号

 ◇思い出を形にする新ビジネス

 

 幼稚園、小学校の運動会から東京マラソンまで、アマチュアのスポーツ大会にプロカメラマンを手配して写真を撮影。参加者が専用サイトでパスワードやID、ゼッケン番号などを入力すると、自身の写真を閲覧・購入できる新しいビジネスモデルを確立した。

── 起業までの経緯は。

白砂 1999年、NTTに新卒で入社すると、1人1台パソコンが支給されました。研修で光回線を使った高速通信で何ができるようになるのかを学んだり、全国に配属された同期とチャット(ネット上でのリアルタイムの短文のやりとり)をしたり。インターネットが開く新しい世界に触れ、「ネットの市場に既得権益はない。勝負すれば勝てる」と考えるようになりました。

── サイバーエージェントに転職したのは?

白砂 小中高から浪人中まで腐れ縁の友人に誘われました。「これからはネットだ」と考えていたのと、社長の藤田晋さんに会ってみたい気持ちもあって面接を受けました。1次面接でいきなり藤田さんから「来てくれ」と言われ、決めました。

── 独立したのは?

白砂 子会社の携帯電話向け広告で売り上げ1億円を達成したのですが、800万円投資した別の事業が不調で給与がダウン。そんな時に、米国で始まっていた、プロが撮影した写真のネット販売サービスを知りました。今でも学校行事の写真購入といえば、保護者が学校の廊下に張り出された見本を見て、封筒に写真の番号を書き、代金を入れて申し込む方法がほとんど。こんなアナログな方法がさらに50年続くことはないだろうと考え、やってみようと思いました。

── 最初の仕事は?

白砂 創業2年目に撮影した社交ダンスの競技会「立川ダンスフェスティバル」です。社交ダンスは経済的にも時間的にも余裕がある方たちの集まりだろうと考え、主催者に電話をかけました。「(仕組みは)よく分からないけれど、写真撮影ならお願いします」とOKをもらい、慌てて友人のカメラマン2人を送り込みました。次は皇居を10周するマラソン大会。すでにプロカメラマンの登録制度を始めていたので、約150人の中からマラソンを撮影できそうな人に依頼しました。

── 順調な滑り出しですね。

白砂 マラソン大会の撮影で、一人のカメラマンと出会ったことが幸運でした。マラソンの撮影経験が豊富で、ほかのカメラマンも紹介してもらいました。このころから光回線が普及し始めてネット環境が改善されたのもタイミングがよかった。

── システム開発が大変では。

白砂 自動認識でゼッケン番号別に写真を振り分けるシステムは、研究したのですが、技術的にできませんでした。ゼッケンがゆがんだり、手が重なっていたりすると、識別できません。結局は人海戦術が早い。撮影データを中国とベトナムの提携先に送り、目視で分類しています。

 

 ◇『ナンバー』を超えろ

 

── 写真代はいくらですか。

白砂 イベントによります。学校写真はL判1枚120円。東京マラソンは70人のカメラマンを配置して、東京タワーや雷門などをバックに撮影し、希少性が高いため2L判2100円(掲載2カ月後3150円)です。ダウンロードで販売する場合もあります。

 ただ、安くすれば売れるわけではなく、売り上げを増やすには、価値を感じてもらえる良い写真を撮影することが大切です。写真に定評がある『ナンバー』(文芸春秋のスポーツ誌)を超える写真を撮影しようよ、と話しています。実際にナンバーで撮影してきたカメラマンも当社で撮影していますが、その方がよく言うのは「大リーガーのイチロー選手は被写体として力があるので撮りやすい。幼稚園児や小学生を撮る方が難しいが、そこを可能にするのがプロ」。その通りだと思います。

── 競合関係は?

白砂 地方には地元で撮影、販売している方がいますが、あとは幼稚園や学校で撮影している競合他社が1社。学校写真については3年前、地元のカメラマンに当社のシステムを使ってもらい、その利用料をいただく形に切り替えました。学校への営業は難しく、昔から撮影されている方と組む方が効率がいい。システムの提供だけでなく、「子供を3人まとめて撮影するよりも、1人ずつ写っている方がよく売れる」といったマニュアルも提供しています。売り上げが3倍になって税理士から驚かれた写真館さんもあります。

 登録カメラマンは現在約1300人、2012年の撮影イベントは4万5637件。今年7月、東京証券取引所マザーズ市場に上場した。

── 海外展開は。

白砂 米国の企業とも個別イベントごとに業務提携を結んでいます。ホノルルマラソンでは、両社で撮影して写真を交換し、日本人には我々が、米国人には米国企業が売ってマーケットを分けています。中国もマラソンブームですが、尖閣問題で合弁会社設立は見送りました。先に台湾に進出したので、いずれ中国本土で、と考えています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=望月麻紀・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 最近買ったもの

A 24時間走る「ハセツネ(長谷川恒男カップ)」に出場するので、ザ・ノース・フェイスのゴアテックス(雨天用ウインドブレーカー)や軽量のライトなどを買いました。

Q 休日の過ごし方

A 10月はハセツネ、中国市場の視察を兼ねて北京国際マラソン、大阪マラソンと3週連続で出場。12月も上海国際マラソン、ホノルルマラソン、台北マラソンの後、ミャンマー視察で毎週末、海外で過ごします。

Q アウトドア派ですか

A 中高時代はラグビー部で、マラソンは起業後。きちんと運動すると、心と体のバランスが取れます。

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 ■人物略歴

 ◇しらまさ・あきら

 1999年早稲田大学政治経済学部卒業後、NTT入社。2000年サイバーエージェントに転職。02年フォトクリエイト創業、13年7月東証マザーズに上場。広島県出身。39歳。