2013年

10月

29日

ワシントンDC 2013年10月29日特大号

 

 ◇茶会派の強硬姿勢は生き残りかけた戦い

 

及川正也

(毎日新聞北米総局長)

 

 17年ぶりに政府機関の一部閉鎖を経験した米国。オバマ大統領が東南アジア外遊を中止し、世界の金融市場は不安定な値動きを続けるなど国際政治・経済にも影を落とした。世界の不安をよそに権力闘争の政治ゲームを操っているのが、野党・共和党の対決路線を後押しする保守強硬派「ティーパーティー(茶会)」系議員だ。

 財政削減などで政府の役割を抑制する「小さな政府」を目指す共和党の中でも攻撃的な姿勢を貫く「コアな保守派」。賛否を巻き起こしながらも存在感を際立たせた。

「(下院共和党の)一つの派閥が閉鎖させた」(オバマ大統領)

「異様な集団。正気じゃない」(リード上院民主党院内総務)

「共和党は自分を取り戻して」(ペロシ下院民主党院内総務)

 10月1日に始まった政府機関閉鎖前後、政権・与党側はいら立ちを隠そうともせず、口を極めて茶会系議員を批判した。だが、茶会系議員は微動だにしなかった。茶会を率いるミシェル・バックマン下院議員は「生きるか死ぬかの戦いだ」と妥協の姿勢を一切見せなかった。テッド・クルーズ上院議員は1日からの新会計年度へと予算をつなぐ暫定予算案審議を遅らせようと、21時間以上も夜通しで議場で演説を続ける大パフォーマンスを演じた。

 茶会は、2010年中間選挙で共和党大躍進につながる原動力となり、一気に注目を集めた。名称は1773年のイギリスによる茶税課税に反発して起きたボストン茶会事件が由来。ばらまき財政や増税を最も嫌う。

 

 ◇共和党内からも反発の声

 

 08年のリーマン・ショック後、共和党のブッシュ前政権が実施した金融機関や自動車大手への公的資金投入による救済策や、オバマ政権の大規模景気対策、原則国民皆保険の医療保険改革を批判する候補者を続々と擁立した。現在は下院約50人、上院5人で全員が共和党。1980年代のレーガン革命、90年代のギングリッチ下院議長の保守革命、00年代のブッシュ政権による宗教右派再結集に続く共和党保守派の新たな政治潮流となった。

 今回、茶会が標的としたのは、オバマ政権の医療保険改革(オバマケア)だ。成立から3年半たっても世論調査では不支持が57%と支持の38%を大きく上回っている(CNNテレビが9月末実施)。共和党はオバマケアが保険会社や医療関連会社の競争を妨げ、提供義務を課せられる企業による人員調整などで雇用が破壊されると批判。来年1月からの本格導入を前に10月1日から個人の申請が始まるタイミングをとらえ、最後の抵抗に出たというわけだ。

 茶会系議員の批判は16・7兆ドルに達している連邦政府の債務上限引き上げ問題にも向かった。引き上げなければ「壊滅的な混乱」を引き起こすと警告するオバマ大統領に対し、ランド・ポール上院議員は「大統領は市場を脅している。(上限維持は)予算を均衡化させることになる」と反論した。

 ただ、強硬姿勢は党内対立も招いている。穏健派のジョン・マケイン上院議員らは、予算を人質にオバマケア廃止や延期に持ち込もうとした茶会の手法に反発。保守派のロン・ジョンソン上院議員も「最善の戦略ではなかった」と指摘した。

 CBSテレビの世論調査によると、茶会への支持率は21%と躍進時(10年11月)の31%から10ポイント減り、不支持率は9ポイント増えて67%と風当たりも強い。12年議会選でも10年の勢いはなかった。一連の財政問題は「茶会にとっても生き残りをかけた戦い」といえる。