2013年

10月

29日

経営者:編集長インタビュー 山口悟郎 京セラ社長 2013年10月29日特大号

 ◇北米でスマホ事業の成功狙う

 

── 主力事業の電子部品、半導体部品の動きはどうですか。

 

山口 米国やアジアの大手スマートフォンメーカーが生産調整をした影響で、上半期(4~9月)は想定より悪かったが、米国大手の新型機種発売を境に9月以降上向きになってきました。ただ今後も好調が持続するかどうかは慎重に見ています。

 

 

── 中国メーカーも低価格スマホでシェアを伸ばしています。

 

山口 中国大手とはすでに取引があります。当社は、セラミックパッケージはもちろんコネクターやコンデンサー、有機材料など他メーカーに比べて品ぞろえが多く、いかなるメーカーの要求にも応じられるのが強みです。

 

── メガネ型や時計型などウエアラブル(身に着けられる)端末への対応は。

 

山口 部品メーカーとしてやれることは、「薄く、小さく、使いやすく」しかない。メーカーから求められた時には速やかに対応できるよう開発しています。

 

── スマホ・携帯電話にも注力している。

 

山口 日本メーカーは次々にスマホ生産から撤退していますが、我々は拡大路線です。利益も出ています。とはいえ、国内市場の飽和感は否めませんので、主戦場は米国です。

 その米国での販売シェアは、サムスン、アップル、LGに次ぐ4位です。ただ上位2社と大きく離れた4位であり、アップルやサムスンに対抗するつもりはありません。ベライゾンなど4大キャリア(通信事業者)への納入実績を確実に積み重ね、京セラらしさを出していきます。

 

── 京セラらしさとは。

 

山口 落としても壊れない頑丈さと防水機能の高さがウリです。工事現場でヘルメットをかぶったまま通話できる「スマートソニックレシーバー」機能も強みです。音と振動で音声をクリアに伝える機能で、スマホを耳に当てる位置を気にする必要がありません。通常のスマホだと、ヘルメットを外さないと通話できませんが、当社の製品はヘルメットに直接当てれば通話できます。

 

── 当面は米国に集中する?

 

山口 欧州はノキアが強いので、当面は米国中心です。アジアへの進出も検討はしていますが、その前に米国でしっかりベースを築く。今期(2014年3月期)は、世界で前期比9%増の1200万台販売を目指していて、うち7割が北米向けです。

 

 石油危機後の1975年に始めた太陽電池事業は、長い赤字時代を経て7~8年前に黒字化した。再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度」の恩恵を受け、今期の産業用太陽電池販売量は前期比2・5倍を見込む。

 

 ◇多角化を推進

 

── 買い取り制度頼みに危うさはありませんか。

 

山口 当社の強みは、セル・パネルの生産から発電設備の施工、発電、アフターサービスまでを一気通貫で手掛けることです。各工程ごとにコスト削減改善の余地があり、製品への信頼性も高いと自負しています。

 買い取り制度は政府が決めることで何とも言えませんが、我々は以前から市場をよく見て計画的に工場をつくってきました。過剰設備に陥ることは決してありません。

 グローバルで見ると、欧州はよくないが、それでも世界最大のマーケットです。そこでの京セラのシェアはほんのわずかで、のびしろは十分あります。中東も活発化している。日本市場が縮小することがあっても世界中に売り先はたくさんあります。

 

── M&A(合併・買収)戦略は?

 

山口 前期はグループ全体で5件の企業買収があり、今年10月1日にはプリント配線板メーカーのトッパンNECサーキットソリューションズ(TNCSi)を買収しました。プリント配線板は、通信機器や通信インフラ向けに成長が望める分野で、なかでも当社は有機パッケージに力を入れています。一方、TNCSiは、産業サーバー向けのマザーボードに強みがある。当社との重複がなく、幅広い商品展開が可能になります。

 

── 多角化を推進していますね。

 

山口 業界でトップを走っていた企業が1回の投資失敗で転落するなど、選択と集中のリスキーさはすでに実証されています。その点、多角化していればリスクを分散できる。スマホと部品のようにシナジー効果も期待できます。ただ「言うはやすく行うは難し」で、各部門からすれば、それぞれの分野で専業メーカーと何十分の一の人員で戦う大変さがある。それでも各部門が業界ナンバーワンを目指すことによって会社全体が強くなります。

 

── 部門別経営管理を徹底する「アメーバ経営」に、山口色をどう吹き込んでいきますか。

 

山口 当社はタテの組織はものすごく強いが、横の連携に課題があります。つまり個々の強さを、外に対して総合的に売る人がいなかった。それができるのは社長だけです。当社の理屈でやっている営業方法がお客様からはどう見えているかも含めて組織を見直したい。

 

── 社長の立場で相対する稲盛和夫名誉会長とは。

 

山口 燃える闘魂の人です。ちょっとでも中途半端な気持ちで事業報告をすると、跳ね返されそうになる。その迫力たるや、すごいです。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 主に神奈川県で営業をしていて、厚木営業所長時代は、労務や採用、物品・備品の購買、事務所の移転まですべてをやりました。非常に面白かった。

Q 最近買ったもの

A ジラウディのチョコレート。アメリカ出張の時、妻から指定されたミルクキャラメルをチョコレートで包んだものを探して買いました。

Q 休日の過ごし方

A 社長になって休みがあまりなくなりましたが、読書をし、ジムへ。夜は妻と外食です。

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 ■人物略歴

 ◇やまぐち・ごろう

 1956年生まれ。78年同志社大学工学部卒業後、京都セラミック(現京セラ)入社。一貫して半導体部品の国内営業畑を歩み2003年6月執行役員。09年4月執行役員常務・半導体部品事業本部長。同6月取締役を経て13年4月から現職。57歳。