2013年

11月

05日

特集:相続とお金のトラブル 老後 介護施設 2013年11月5日号

 ◇入居金の償却、転倒の過失責任 グレーゾーンが利用者を惑わす

 

外岡潤

(法律事務所おかげさま代表弁護士)

 

 日本が超高齢社会に突入したといわれて久しいが、不思議なことに「介護の世界」の実情は、一般社会においてまだほとんど認知されていない。筆者は介護・福祉の現場で起きるトラブル解決に特化した弁護士だが、同業の弁護士からも「介護の領域でトラブルなどあるのか」と真顔で聞かれることがいまだに多い。

 転倒やベッドからの転落、食事中の食べ物の誤嚥、薬の誤飲、褥瘡(じょくそう)(床ずれ)の悪化、利用者同士の喧嘩……。およそ人間の共生する場で起こり得る全てのトラブルが見られる。ここに高齢者特有の認知症等からくるコミュニケーション不全、職員の慢性的な不足と質の低下が、事の深刻化に拍車をかけている。まずこうした実態を知り、最大限の情報収集と施設の吟味に時間をかけることが重要だ。何事も出だしが肝要である。

 

 ◇法改正で改善も気は抜けず

 

 有料老人ホームの入居金の話題が、昨今マスコミの脚光を浴びたことをご記憶だろうか。ホームの入居時には通常、数百万円から数千万円の高額の一時金(「入居一時金」)を支払う。だが、早期に退去した場合の返還額が非常に少なかったり、なかには一切返還しない施設も見られ、問題となっていた。問題の一因には、入居一時金から施設側が回収する取り分(「償却」と呼ばれる)の合理性・妥当性が検証されていないことがあった。………