2013年

11月

05日

経営者:編集長インタビュー 木山茂年 東京デリカ会長 2013年11月5日号

 ◇かばんの「小売り」から「製造小売り」目指す

 かばん・袋物の国内流通最大手。ショッピングセンターや駅ビルを中心に、「SAC‘S BAR」「LAPAX」など複数のブランドを展開。店舗数は545店舗(2013年3月末時点)に上る。

── 13年3月期は純利益が前期比25・3%増で過去最高益を更新しました。好業績の理由は。
木山 ローコスト経営、店単位の仕入れ、時代に合わせて出店の立地を変えていくという工夫を重ねてきた結果です。1974年の創業以来、増収を続けています。
 経営の基本は、チェーンストア理論。安く調達した商品を低価格で売るというローコスト経営が最大の特徴です。ただし、仕入れの部分は各店に任せています。かばんは趣味嗜好品ですから、その地域のお客様をよく知る人間が仕入れをする方がよく売れる。その点は一般的なチェーンストア理論とは異なります。
── ローコストの要は。
木山 一つは、各店舗のスタッフ数です。スタッフは40坪の店舗で平均1~2人。客単価が8500円なので、平日は1日20人にお買い上げいただければ約17万円の売り上げになります。土曜日はその2倍半、日曜日は3~4倍なので、それで利益を出せる。営業時間が11時間として1時間に2人接客すればいいから、はたから見ると当社のスタッフは暇に見えるようです(笑)。その代わりに、客単価を上げていく努力をしなさいと言っています。

 ◇主流は郊外大型店

── 出店立地の主流は。
木山 今は郊外の大型ショッピングセンターが全盛です。以前は駅ビルでの店舗展開が主でした。旧国鉄が流通事業に参入してきて、駅ビルを作りだしたのに合わせて出店したのが始まり。最初に入ったのは松戸駅の駅ビルだったのですが、改札からどんどんお客様が流れてくる。金脈を掘り当てたぞと思いました。
 その後、郊外型のショッピングセンターができたのに合わせて当社も出店の主流を変えました。
── 立地によって商品展開も変わりますか。
木山 変えないと利益が出せません。駅ビルの店舗は15坪程度ですが、ショッピングセンターは最低でも1店舗40坪以上。駅ビルの主力商品であるハンドバッグを並べただけでは空間が埋まらず、坪効率も悪くなり利益が出ません。そこで、ショッピングセンターの店舗には、男性向けやトラベル関連商品を加えました。結果的に、円高による海外旅行需要の拡大を捉えることができました。
── 最近は、インターネットで買い物をする人も増えています。
木山 ネット販売にも取り組んでいますが、売り上げは6億円程度。社全体の売り上げが約450億円だから1%ちょっとです。ネットはリアルの店舗に比べて参入障壁が低く、競合が激しい。急速に伸ばすことは難しいと思っています。

 ◇ネットは商品で勝負

── ネットならではの戦略は。
木山 商品作りです。リアルの店舗では、立地、接客、店の雰囲気で戦いますが、ネットは商品の勝負になります。ぱっとクリックしてもらえるような商品をそろえないと買っていただけません。当社はリアルの店舗ではナショナルブランドの取り扱いが中心で、プライベートブランド(PB)は全体の8%程度。一方、ネット上ではナショナルブランドを取り扱うショップが多くて競合が厳しいので、50%くらいがPBです。
── PBは利益率も高いですね。
木山 当然、粗利率は高いです。しかし、中間に入っているメーカーや問屋を外すようなことはしません。
 長年やってきたので、当社は他の小売業者に比べてものづくりの人々との距離が近い。かばんをもっと軽く、もっと丈夫にして、機能性を高めるにはどうすればいいのかを相談しながら商品を作ることができます。これはネット専業の企業にはできない、当社の強みです。吉田カバンやプーマなど、有名ナショナルブランドとコラボしたPBの開発にも取り組んでいます。
── PBを強化していくのですか。
木山 当社の次のステージは商品力の強化です。今後は各分野の専門メーカーを傘下に収め、ものづくりをさらに私たちの会社の中に入れ込んでいきます。昨年はスーツケースの会社を買収しました。小売業でありながら、製造小売業を目指したい。粗利を取るためだけではありません。一定の原価率は確保しつつ、しっかりとした商品を作っていきたいのです。業界人としての誇りを失ったら、小売業者として生き残れません。リアルの店舗にも、ものづくりを取り入れていきます。例えば、東京スカイツリーの商業施設の中に入っている店舗は、ミシンを置き、かばんの修理を受けられるようにしています。
── お客の求める商品はこれからどう変わっていくでしょう。
木山 低価格で高品質を求める傾向が続くと思いますが、高価な商品を求める場面もこれまで同様にあるでしょう。日本人は、100円ショップで買い物をする人が百貨店にも行きます。だから、「客層」を意識するより、どんな店であるかを考えるべきです。当社の店は、ボーナスが入った時やギフトを探す時、ハレの日にちょっといいものを買いたいなという時に来てもらう場所。だからギフトの売り上げは、店の信用力のバロメータでもあります。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=花谷美枝・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか。
A 資金繰りに追われていました。給料を払う金がない、家賃を払う金がないという夢をいまだに見ます。あの時代にだけは二度と戻りたくないですね。
Q 最近買ったもの。
A 吉田カバンの財布です。大変重宝しています。商売柄、いろいろなメーカーのものを試します。
Q 休日の過ごし方。
A ほとんどゴルフをしています。若いころはシングルだったのですが、今はハンデ13くらいです。
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 ■人物略歴
 ◇きやま・しげとし
 東京都生まれ。一橋大学卒業後、1964年三井造船に入社、69年に東京デリカの前身となる丸二商会に入社。74年8月に東京デリカ設立、代表取締役に就任。2012年6月から現職。71歳。