2013年

11月

19日

経営者:編集長インタビュー 荻野和郎 日本光電工業会長 2013年11月19日号

 ◇脳波計やAEDの国内トップメーカー

 

 2014年3月期の業績予想は、最終利益が前期比3・8%増の95億円。予想通りならば4期連続の過去最高益更新となる。

── 好調の理由は。

荻野 一つには医療市場が好調ということです。診療報酬は削減が続いてきましたが、2010年度に10年ぶりのプラス改定が実現して、12年度も引き上げられました。これによって、医療施設が新規の投資に積極的になったことによる効果です。また、経営の効率化、省力化のため、IT化を進める医療機関も増えています。最近では、医療機器産業の活性化が政府の成長戦略に盛り込まれ、国を挙げた産業の充実、発展に取り組む環境が整い始めています。

── 医療機関のIT化とは。

荻野 コンピューターを使って検査室の中でデータ処理ができるようにする、病院全体にネットワークの枠を広げて、検査結果などをやりとりできるようにする、などです。さらに、通信を使って、自宅で心電図を計測して、病院に送るといった遠隔医療も可能です。これまで十数年間この分野は赤字でしたが、将来は医療のIT化が進むはずだと投資を続けてきました。従来は心電計など医療機器を単体で売るという商売でしたが、想定した通りIT化が進み、ネットワークと端末をセットで販売するビジネスモデルが出てきました。これまで苦労してきましたが、今では、大学病院などの拠点病院のシステムを当社一社でトータルに提案できるようになりました。

── 医療施設のニーズに合った製品を開発するための工夫は。

荻野 二百数十件の医療機関と共同研究を進めています。研究を通じて医療者のニーズを集め試作と改良を繰り返します。もう一つ重要な情報がクレーム。「クレームは宝の山と思いなさい」と言い続けています。

 

 ◇次は磁気刺激治療機器

 

── 国内トップシェアの製品は。

荻野 脳波計や心臓の働きを回復させる除細動器のほか、心電図や体温をモニタリングする生体情報モニターといった主力カテゴリーのほとんどがトップです。体から信号を取り出すための使い捨ての電極の自社開発もしており、トップシェアです。他社の消耗品を組み合わせてトラブルが発生した場合、原因がつかめないということを避けるため、消耗品もなるべく自社開発しています。

 医療機関に納入する場合も、機器ごとに医療機関側が別々に購入するのは非効率なので、当社が自社製品と他社製品とを最適パッケージ化して販売するようにしています。国内販売の自社製品、他社製品の販売比率は6対4です。

── トップシェアは検査機器が多いようですが、治療機器の強化は。

荻野 検査機器が主体の時期もありましたが、治療機器を手掛けなければ、医療分野で仕事をしているとは言えないと考えています。除細動器に加え、輸入品がメインだった人工呼吸器も、独自技術での開発を目指しています。尿失禁の治療のための磁気刺激治療器は今年、承認申請が認められました。磁気治療のよいところは、体にメスを入れないため、患者さんの体の負担が少ない非侵襲性。磁気刺激はパーキンソン病にも使えるのではないかと研究を進めています。

── 海外展開は。

荻野 医療機器は多品種少量で、国内市場だけでは生産量が限られます。海外勢と競争することで生産量を確保し、技術開発の研鑽(けんさん)も積み、海外勢と対抗できるだけの力を持たないと成長できません。基本的にはグローバルベースで考えることにしていますが、一方で、国内市場では絶対に負けない。海外の良い企業が進出してきても負けない。この足元の経営の安定をベースに、我々のやれる範囲で着実に海外展開しようとしています。

── 国ごとに製品ラインアップは異なりますか。

荻野 新興国でも拠点病院ではハイエンド(高機能)の商品が使われるので、商品ラインアップは国別の対応が必要なわけではありません。日本ではハイエンド系を作り、上海の工場では機能を絞った比較的安い製品を作り、どちらにしても日本の品質を世界に送り出しています。ただ、表示には現地の言語が使えるようにすることが求められています。

 

 ◇M&Aで技術強化

 

 1年前、米国の救命救急医療機器メーカー、デフィブテック社を買収した。AED(自動体外式除細動器)生産台数は国内トップから、世界大手に躍り出た。

 

── M&A(合併・買収)戦略は。

荻野 医療機器に必要な技術は幅が広く、全てを自社開発することはできません。これまでも技術強化を目的に、要素技術を持っている企業を買収してきました。米国のベンチャー企業にも投資をしていますが、やはり大事なのは技術。当社の技術と組み合わせることで長期的成果があるかどうかを見極める必要があります。

── 国の医療機器産業の成長支援に対する要望は。

荻野 着実で迅速な実行を望みます。また、医療機器関連の法律や制度を発展途上国に輸出してもらえれば、市場が広がります。それと法人税の引き下げ。技術開発の投資を増やして海外勢と対等な競争ができる環境を望みます。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=望月麻紀・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 日本電信電話公社(現NTT)で画像やテキストの送信技術の開発に没頭し、毎日午前様。脇目も振らずに電話の次を模索するのは楽しいものでした。

Q 最近買ったもの

A コンパクトカメラ。よりよい写真が撮れるようにと新製品を年1~2台買ってしまう。主にお客さんや社員を記念に写します。担当の営業員が写真を手渡しするという名目でお客さんと接点が増すことを狙っています。

Q 休日の過ごし方

A 庭や家の掃除。時々訪ねてくる孫の相手と、ごくたまにゴルフです。

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 ■人物略歴

 ◇おぎの・かずお

 島根県出身。1966年早稲田大学大学院理工学研究科修了後、日本電信電話公社(現NTT)入社。85年に退職し、同年日本光電に入社。心電図事業部長、専務を経て、89年6月社長就任。2008年6月より現職。72歳。