2013年

11月

26日

ワシントンDC 2013年11月26日特大号

 ◇ケネディ新駐日大使が掲げた日本における「優先事項」

 

篠崎眞睦

(三井物産ワシントン事務所長)

 

 次期駐日米国大使に指名されていたキャロライン・ケネディ氏が10月16日、米議会上院で人事承認され、11月中に着任の見通しとなっている。ケネディ氏の存在は、女性の活躍などで課題を抱える日本社会にも刺激を与えそうだ。

 ケネディ氏はジョン・F・ケネディ元大統領の長女。デザイン会社の経営者であるシュロスバーグ氏との間に1男2女の3人の子供を持ちながら、公立学校の支援や慈善事業に長く携わってきた。

 ケネディ氏のキャリアからすると政治・外交経験については素人と言ってよい。ただ、指名承認公聴会における質疑応答では、事前学習の効果が表れたようで、民主、共和両党議員から出た日本と中国・韓国との領土問題、環太平洋パートナーシップ協定、在日米軍基地問題などに関する質問について、米政権の公式見解を述べるなど簡潔に答えた。

 質問した議員はケネディ氏の答えに畳み掛けることなく、ジョン・マケイン上院議員は最後に「東京にあなたを訪ねるのを楽しみにしている」と発言するなど、公聴会の雰囲気は終始和やかだった。外交問題評議会日本担当上級研究員のシーラ・A・スミス氏は、「今日、駐日米国大使がベテラン外交官ややり手の政治家であることは不可欠ではなく、オバマ大統領がケネディ氏を大使に指名した事実は日米間の成熟した関係性を反映している」と言う。

 

 ◇女性の活躍と教育交流

 

 指名承認公聴会の場でケネディ氏は「個人的な優先事項」として2点を指摘した。一つは、日本が女性にとってさらに活躍しやすい社会になるために積極的な役割を果たしたいということである。

 ブルッキングス研究所日本部長のミレヤ・ソリス氏は、「アベノミクスが女性の能力を活用し、経済成長につなげていくうえでロールモデル(模倣できる人材)の存在がいる。その点、ケネディ氏は、女性が各分野で指導者として活躍できるチャンスを示す意味でも、ポジティブな影響をもたらすだろう」と述べる。

 同研究所が9月25日に開催したセミナーによれば、日本の労働者に占める女性の割合は40%である一方、管理職に占める女性の割合は11・1%、取締役に占める女性の割合は1・4%でしかない。日本に比べると米国は女性が活躍するうえで制約の少ない社会と言える。その米国社会で生きてきたケネディ氏が個人的な優先事項として一つ目に女性の活躍を挙げたことは意義深い。

 もう一つの優先事項としては、若い世代のために従事してきた経歴を生かし教育と学生交流に力を入れたいと語った。教育研究機関のイーストウエストセンターの調査によると、米国における日本人留学生の数は2000年に約4・6万人だったが、11年には約2万人と57%減少している。一方で、韓国人留学生は同期間に4・6万人から7・2万人に、中国人留学生に至っては6万人から19・4万人と激増している。

 当地ワシントンDCのシンクタンクでは中国研究が花盛り。中国関連のセミナーは常に人気で、立ち見が出ることもよくある。韓国もセミナーを利用して自国をアピールするなど、戦略的に関係強化に努めているように見える。公聴会で質問したエドワード・マーキー上院議員は、前大使のジョン・ルース氏が日本人留学生の減少に言及していたことに触れ、日米相互の信頼関係を深化していくうえで重要だと言った。

 新大使にはさまざまな役割が求められるが、交換留学生の増加などを通じた長期的な日米関係の強化や、日本社会へのいい影響をあわせて期待したい。