2013年

11月

26日

経営者:編集長インタビュー 香藤繁常 昭和シェル石油会長・グループCEO 2013年11月26日特大号

 ◇抜本的なコスト競争力強化で国際舞台へ

 

 昭和シェル石油の太陽電池事業が事業開始以来初めて、今年1~3月期(12月決算)に黒字化を達成した。太陽電池事業を含むエネルギーソリューション事業は一時期年間300億円弱の営業赤字となり、事業継続さえ危ぶまれたときもあったが、1~9月期は、前年同期の155億円の赤字から102億円の黒字に転換。主力の石油事業以外にも計算できる収益源に育ってきた。

── 太陽電池事業が好調で目標とする「エネルギーソリューション・プロバイダー」に近づきました。

香藤 当社を取り巻く事業環境は大きく変わってきました。石油の国内需要が減少する半面、液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)、電力、再生可能エネルギーなどの需要が増加してきました。

 IPP(独立系発電)事業やPPS(電力小売り)事業を手掛けてきましたが、それに加えて、太陽電池事業も軌道に乗ってきた。太陽電池と発電事業から構成されるエネルギーソリューション事業が今後大きく業績に貢献していきます。

 

 ◇多様な発電メニュー

 

── 事業の構成比は?

香藤 石油事業がやはり強いです。通期の営業利益は、在庫評価を除く実質ベースで450億円を予想していて、そのうちの290億円が石油事業、160億円がエネルギーソリューション事業です。

 発電事業の規模は拡大しており、現在約50万キロワットの発電能力を中長期的には100万キロワットまで伸張させる計画です。太陽電池・太陽光発電事業も今後グローバルに展開していきます。

── 太陽電池事業は海外のトップメーカーが相次ぎ倒産しましたし、固定価格買い取り制度に支えられている面も大きいのでは。

香藤 中国勢などが生産規模を飛躍的に拡大させ、太陽電池は大変な値崩れが起きました。また、1000億円規模を投じた当社の国富工場(第三工場、宮崎県)の設備投資を決定したときは、為替前提が1ユーロ=95円、1ドル=120円でしたから、輸出では苦労しました。

 ただ、このような厳しい環境であったからこそ、徹底的なコスト競争力強化と太陽光パネルの性能向上を図ることができたと思います。コストは2~3年前に比べて3分の1まで削減することに成功しました。2015~16年までにさらに20%のコスト改善を進めれば、グローバルで十分勝ち抜くことができます。当社の太陽電池は、シリコン系ではなく化合物系の薄膜太陽電池であることが特徴で、設置容量当たりの実発電量が多い、という優位性があります。

── 太陽光以外の発電事業は?

香藤 重油、ガス、バイオマスなどのメニューを用意し、多様なニーズに応えます。当社の発電事業の強みはロジスティックの優位性です。首都圏に近い油槽所や製油所の後背地は民家の集積地となっており、大きな需要が見込める。送電ロスが少ない分、有利な条件で契約できます。

 今年8月には、旧京浜製油所扇町工場(神奈川県)跡地に木質バイオマスを燃料とする火力発電所の建設を決定しました。約5万キロワットの発電出力を持つ国内最大級のバイオマス発電所の投資決定にはこうした背景もあります。

 

 ◇需要に対応した装置構成

 

── 石油事業ではコスト競争力ナンバーワンを目指しています。

香藤 原油調達から製油、流通と続く業務プロセスを抜本的に見直しています。例えば、当社の潤滑油は2000種類近くありますが、その中で主要な品種はせいぜい数十種類、多く見積もっても200種類です。小ロットなものや代替品があるものを見直すことはお客様にとってもメリットになるはずです。オペレーションコストは現在1300億円ですが、15年までに20%のコスト削減を実施します。

 石油事業はかつては国内事業でしたが、現在は国際競争の時代です。日本はエネルギー高度化法への対応を進めており、規制前には480万バレルあった供給能力を100万バレル削減し、来年3月末の余剰設備は10%程度になります。しかし、韓国は輸出型のビジネスで過剰能力が50%あるわけです。削減幅だけではなく、常に国際競争にさらされていることを意識すべきです。

── シェール革命の影響は。

香藤 二つあります。まず、シェール革命で軽質原油が増産され、軽質原油の需給が緩みつつあります。競争力の高い製油所ほど2次装置を設置し、安い重質原油を利用できるように設備投資をしてきました。しかし、軽質原油の価格低下で製油所間の競争力の差は縮小し、減価償却の終わった製油所が有利な状況にあります。重質原油を安定調達・供給できるグローバルなネットワークを有する当社にとっては追い風です。

 あと一つは石油化学で、軽質ガスから石油化学品を製造するプラントが増えた影響で、原油の精製課程で生じるベンゼンなど芳香族の供給力が相対的に少なくなっています。国内ガソリン需要は減退している一方、アジアの人口増に伴い、繊維原料となる石油化学品の需要は増加していきます。こうした需要変化に対応できる装置構成にしていかなくてはいけません。そこで例えば、太陽石油(東京都千代田区)と韓国のGSカルテックスと石油化学品の合弁事業について事業化調査を進めています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=内田誠吾・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか。

A 83~88年に石油マーケットの中心地であるシンガポールに勤務しました。中国が海外進出を始めた時期に重なり、国際感覚を身に着けるよい機会でした。

Q 最近買ったもの。

A 同じ時間を共に歩んできたという意味を込めて、妻と腕時計のプレゼント交換をしました。

Q 休日の過ごし方。

A 運動が好きなのでテニスやゴルフをしています。

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 ■人物略歴

 ◇かとう・しげや

 広島県出身。1970年中央大学卒業。シェル石油(現昭和シェル石油)入社。98年変革推進本部部長。2001年取締役。常務、専務を経て06年代表取締役副会長。09年会長。13年3月よりグループCEO兼務。66歳。